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食器の商標に、なべ・やかんは入っていますか?指定漏れと取り直し費用

1. 食器の商標を取るとき、なべ・やかんも指定していますか

食器のブランドを商標登録するとき、「なべ・やかん」を願書に入れていますか。同じ第21類なら、食器と一緒に指定しても特許庁の出願料・登録料は増えません。ところが、出願後に指定の漏れが分かっても、その願書の範囲を広げて追加することはできません。

不足分を新たな1件・1区分で取り直し、10年分の登録料を一括で納める場合、特許庁料金は44,900円です。依頼先の手数料などは別にかかります。最初の願書に同じ料金で入れられたはずの範囲を、後から費用をかけて取り直すことになります。

以前、このブログでは、調理用具の商標権に「なべ・やかん」が含まれていない例を取り上げました。では、食器の商標権ではどうでしょうか。当事務所が2010年から2024年までの登録を調べると、食器は含むのに、なべ・やかんを含まない登録が見つかりました。

商標実務を知らずに自分で願書を書くと、商品名の言葉の違いで範囲を取りこぼすことがあります。専門家に依頼する意味は、その見落としを防ぐことにもあるはずです。「食器で登録できました」という報告を受けたとき、隣の商品をどう扱ったのかも確認してください。

2. 売り場は別でも、商標の料金は区分単位で決まる

ホームセンターの食器売り場と、鍋ややかんの売り場を思い浮かべてください。店では別のコーナーにあり、一緒に買えば、それぞれの代金を払います。その感覚で「食器だけお願いします」と伝えるのは自然でしょう。しかし、商標の出願料は、買い物の品数のようには増えません。

特許庁の料金は、基本的に区分数で計算します。同じ第21類で、食器に「なべ類」や「やかん」を併記しても、区分数が同じなら出願料・登録料は同額です。「食器の商標を取りたい」という依頼を聞いて、食器の欄だけ埋めて終われば、料金を増やさずに検討できる範囲が残ります。

食器を指定しただけでは、第21類の全商品に権利は及びません。類似商品・役務審査基準では、食器類と、なべ類・やかんは別の商品として扱われます。区分は分類と料金計算の単位であり、権利範囲は指定商品の欄で決まります。

願書では、日常語の「キッチン用品」で済ませず、実際の商品がどの指定に対応するかを確認します。電気式の調理器具や電気ケトルは第11類に分類され、ここで扱う非電気式の鍋・やかんとは区分が違います。同じ「鍋」でも、電気式かどうかで検討する区分が分かれます。

分類の表示は特許庁の類似商品・役務審査基準で確認できます。食器を指定しただけでは、なべ・やかんは権利に入っていません。登録証の表紙ではなく、指定商品の欄を読んで確かめてください。

3. 2010〜2024年の集計で、2020年以降に何が変わったか

図1は、2010年から2024年までの各年度について、食器を含む一方、なべ・やかんを含まない商標権を当事務所の条件で集計したものです。登録の指定商品を比較した集計です。

無料で追加できる鍋とかやかんの権利が、食器の商標権に入っていない商標権数の各年度毎の推移を表したグラフ

図1. 食器を含み、なべ・やかんを含まない商標権の件数

2019年は550件、2020年は710件、2021年は876件、2022年は1039件、2023年は697件、2024年は763件でした。2020年を境に2019年を上回る水準となり、2022年には1039件に達しています。2023年に一度減りましたが、2020年以降はいずれの年も2019年の水準を上回っています。

先行商標との関係や依頼者の判断で商品を外した登録も、この中にはあるでしょう。それでも、追加の特許庁料金をかけずに入れられた商品が、毎年数百件から千件の規模で外れています。この規模は、個別の事情だけでは説明がつきません。

一度見落としに気づけば、次の願書のひな型や確認手順を改める。専門家に期待されるのは、そのような見直しです。2020年以降も2019年より高い水準が続くことから、当事務所は、依頼者の言葉をそのまま願書に写すだけの出願が2020年以降に広がったと見ています。

この図の1件は、一つの事業者のブランドです。件数の増減を眺めるだけでなく、自分の登録の指定欄を読んでください。食器を扱う会社が鍋にも同じ名前を付けようとしたとき、その登録がどこまで使えるのかは、登録証の表紙からは分かりません。

4. 2020年以降、範囲を狭くして審査を通す実務が広がったと見る理由

当事務所では、2020年以降の変化の背景に、権利範囲を狭く絞って審査を通す実務が業界に広がったことがあると見ています。依頼者には、早く登録できることや、拒絶理由への対応をせずに済むことが利点として伝わります。手続きを扱う側にも、調査や調整の時間を減らせる事情があります。

指定商品を広げれば、調べる先行商標も広がり、審査で検討される範囲も変わります。範囲を絞ると調査や調整が容易になる場面はあります。しかし、それを理由に隣の商品を外すなら、外した結果と、ほかの対応方法を依頼者へ説明することが先です。

登録に至らず費用を回収できない事態を避けたい業者には、通りやすい範囲だけを出願する動機が生まれます。経験の浅い担当者を含む体制で大量処理する場合にも、狭い指定のひな型は扱いやすいでしょう。「短期間で一度の審査で登録できた」という成果の裏で、何を取らなかったかが見えなくなります。

例えば、「食器ですね。では食器で出願します」と応じるだけなら、将来の商品展開を聞き取る時間も、なべ・やかんの調査をする時間もかかりません。「食器なら、なべ・やかんも同じ区分で検討できます。なぜ外すのかも確認しましょう」と話す担当者とは、作業の内容が違います。

依頼者にとっては、早く登録できても、使いたい商品が外れていれば手放しで喜べません。調査の結果として外すのか、作業を簡単にするため外すのかを知らされなければ、判断できないからです。了承の一言を取る前に、外した商品と取り直しの費用を説明するのが専門家の仕事です。

当事務所が問題にしているのは、グラフと実務経験から見える手続きの組み方です。個別の案件では、願書案、調査報告、依頼者への説明記録を見れば、誰がどの範囲を検討したのかが分かります。

5. 出願後に取り直すと、44,900円と手数料が別にかかる

同じ区分で「無料で追加できる」とは、出願前の願書で一緒に指定する際、特許庁の出願料・登録料が増えないという意味です。代理人の手数料は依頼先の料金体系によります。依頼前に、見積りに隣の商品の調査が含まれるかを確認してください。

不足分を新たな1件・1区分で出願する場合、出願料は3,400円+8,600円で12,000円。設定登録料を10年分一括で納めるなら32,900円。合計44,900円に依頼先の手数料などが加わります。料金は特許庁の料金一覧で確認できます。分割納付や複数区分では計算が変わります。

これは新しい区分を追加する費用ではありません。食器も非電気式のなべ・やかんも同じ第21類ですが、前の出願にない商品は別件で出願するしかなく、同じ第21類にもう一度料金を払うことになります。区分番号が変わらないのに費用がかかる点を見落とさないでください。

出願後に、当初の指定を超えて権利範囲を広げる補正は認められません。商品を削る補正や、表示を明確にする補正はできますが、足りない商品を後から書き足すことはできません。

最初の出願と追加の出願では、出願日も違います。取り直しに気づくまでの間に第三者が同じ名前でなべ・やかんを出願していれば、その第三者が先願になります。費用を払って取り直しても、登録できるのは先願がない場合だけです。再出願の見積りだけを見て、最初から指定しておく場合と同じと考えないでください。

6. 追加の依頼で手数料が増える仕組みを、依頼者も知っておく

依頼された単語をそのまま願書へ入れるだけなら、1件にかかる時間を減らせます。将来の事業計画を聞き、同じ区分で確保できる範囲を調べ、先行商標があれば対応を説明する仕事には時間がかかります。手数料が同程度なら、短時間で件数を増やす方が、業者の売上には都合がよい場合があります。

さらに数年後、「鍋ややかんにもブランドを広げたい」と相談が来れば、追加の出願としてもう一度手数料を請求する機会になります。依頼者が最初から同じ特許庁料金で指定できたことを知らなければ、なぜ二度目の費用が生じたのかを問い直すことも難しいでしょう。

ここで指摘しているのは、初回の作業を狭く区切り、追加の手続きを別料金にする仕組みでは、依頼者の費用が増えるという点です。説明をせずに隣の商品を外したのであれば、その責任は担当者にあります。

登録証が届いたら終わりにせず、依頼時に伝えた商品と、実際の指定商品を照らし合わせてください。なべ・やかんを外したなら、その理由と説明記録を確認します。最初に何を検討したかが分かれば、取り直しの必要性や、依頼先への対応も具体的に話せます。

7. 他人の先の出願と、商標権を売るときの評価にも関わる

日本の商標制度は登録主義・先願主義を基本とします。同じ商品について同じ名前の出願が競合すれば、先に出願した側が登録を受けます。

自社が食器だけを指定した後、他社が同じ名前をなべ・やかんについて出願・登録したとします。自社がその名前で鍋を売れば、他社の商標権の侵害を問われる立場になります。先にブランドを作ったというだけでは、登録された他社の権利には対抗できません。

商標権は土地の権利のように、移転や売買の対象になります。人気作品名などに結び付いた権利では数千万円、数億円という金額が動いた例を、このブログでも取り上げてきました。商標権の価値は、事業と権利内容で決まります。

買い手がブランドを取得するとき、鍋ややかんの範囲がなければ、追加取得の費用と、取得できない危険を織り込んで値段を付けます。指定商品の欠落は、そのまま資産の評価を下げます。

担当者の故意・過失で依頼内容を取りこぼし、損害が生じれば、損害賠償の問題になります。専門家が願書作成前、作成後、提出前に見直し、提出後も内容を確認するのは、こうした事態を避けるためです。

8. 不使用取消が心配だから、なべ・やかんを外すのでしょうか

「使っていない商品を指定すると、不使用取消審判が心配だ」と言われることがあります。しかし、それは同じ特許庁料金で確保できるなべ・やかんを外す理由になりません。不使用取消審判は、指定商品・役務ごとに請求されます。

請求の対象に実際に使っている商品が含まれるなら、請求に含まれる商品について法律の要件を満たす使用を証明し、権利を守ります。請求登録前3年以内の国内使用、誰が使ったか、どの商標をどの商品に使ったかを示すため、商品写真、取引書類、カタログなどを残します。

使っている商品を狙った請求には、証拠で防戦します。攻撃されたのですから、守るのは当然です。指定商品を狭くしても、使っている商品を狙った請求は同じように来ます。使っている商品が請求に含まれているのに、「鍋を売っていないから」と考えて放置しないでください。

請求が未使用のなべ・やかんだけに向けられたなら、放置すればよいだけです。失うのは請求された部分だけで、食器の登録はそのまま残ります。使っていない商品を失っても、事業に実害はありません。反論しなければ代理人費用もかからず、追加の費用もありません。

制度と使用証明は特許庁の商標登録取消審判の案内に説明されています。使っている商品を含む請求には防戦し、未使用の部分だけなら放置する。この区別を伝えずに「取消審判が心配だから」と最初から範囲を捨てさせる説明は、権利を狭くして審査を通す側の都合です。

9. 出願前に、弁理士本人と願書の指定欄を読む

出願前には、担当する弁理士本人と話してください。「食器を扱います」だけでなく、鍋、やかん、調理用具など、これから扱いたい商品を具体的に伝えます。5年後、10年後の展開も含め、同じ区分で一緒に確保できる範囲はどこかと尋ねてください。

「食器だけでいいですよね」「はい、それだけで」というやり取りで終わらせず、外す商品についても理由を聞きます。先行商標が見つかったのか、使用予定の説明が足りなかったのか、単にひな型に入っていなかったのか。それぞれ、取るべき対応が違います。

願書の代理人欄に記載される専門家の氏名と、誰が調査・最終確認をするかも確認してください。事務スタッフが入力するとしても、指定内容を検討し、依頼者に説明する責任は担当の専門家にあります。依頼者の事業を理解した専門家が、指定内容に責任を持って説明できるかが問題です。

先行商標があるなら、意見を述べて争うのか、指定を絞るのか、出願を分けるのかを、費用と理由を示して検討します。「狭くすれば早く通る」だけを答えにしないでください。隣の商品を外した効果まで聞いて、初めて依頼者が選べる状態になります。

すでに登録した方は、登録原簿などで指定商品を確認し、不足分を新たに出願する前に先行商標を調べます。当事務所へのご相談は相談フォーム、費用の説明は商標登録の費用ページをご覧ください。願書案や登録番号があれば、何を取り、何が外れているかを具体的に確認できます。

10. よくある質問

Q1. 第21類で登録すれば、鍋ややかんも守れますか?

守れません。指定商品の欄になべ類ややかんの表示がなければ、鍋ややかんには権利が及びません。電気式の商品は第11類で、非電気式のものと区分が分かれます。

Q2. 食器になべ・やかんを加えると料金は増えますか?

出願前に同じ第21類で併記するなら、特許庁の出願料・登録料は増えません。代理人の調査料や手数料は依頼条件によります。出願後に指定を広げる追加とは区別してください。

Q3. 登録後に取り直すには、いくらかかりますか?

新たな1件・1区分の出願と10年分一括納付なら、特許庁料金の合計は44,900円です。手数料などは別途かかり、別の出願として改めて審査を受けます。その間に先願が入っていれば登録できません。

Q4. 不使用取消を避けるため、鍋を外すべきですか?

外す理由になりません。不使用取消審判は商品ごとに請求されます。使っている商品への請求は使用証明で守り、未使用の鍋だけへの請求は放置すればその部分が消えるだけで、実害も追加費用もありません。

Q5. 指定漏れがあれば、担当した専門家のミスですか?

依頼した内容、先行商標の調査、外した理由、依頼者への説明を確認すれば分かります。同じ料金で入れられた商品を説明せずに外し、「登録できたので完了」となる前に、こちらの意図を十分に伝え、機械的に一律処理しないように確認する必要があります。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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