1, はじめに
他社の商標の登録を止めたいと思うことはありますか?もしそうなら、これから説明するいくつかの方法を利用することができます。
一つは、他社の商標登録出願が審査に合格するまでに特許庁に対して行う情報提供があります。この情報提供制度を利用して、特許庁の商標審査官に、登録すべきでない理由を証拠と共に提出することができます。情報提供による権利化阻止に失敗したなら、次は異議申立、それでもだめなら無効審判があります。順にみていきましょう。
2. 商標の情報提供制度
まず最初に、特許庁へ情報提供を行うことが考えられます。たとえば、他人が申請した商標が登録基準を満たしていないと感じた場合に、その根拠となる資料を特許庁に提出することができます。しかし、これは審査官が参考にするだけで、必ずしも登録を止めることは保証されません。
次に説明する商標異議申立や無効審判の場合と違って、審査官には情報提供の内容を吟味する義務がないのです。利用するのもしないのも審査官の自由です。
ただ、有力な打撃材料があるなら、特許庁の審査官に情報提供を行うのがよいです。一度商標権が発生してしまうと取り消すのが一般に困難になるからです。
3. 商標の異議申立制度
もし商標が登録されてしまったら、次のステップは異議申立を行うことです。これは特許庁に対して行われる正式なプロセスで、登録の正否を争うものです。ただし、この申立には期限があり、商標公報の発行日から2ヶ月以内に行う必要があります。
異議申立は、商標登録までの手続きが妥当であったかを調べるものなので、特許庁の審査の上級審である審判官が担当します。審判官が登録を取り消すと認めた場合には、商標権者に対して取消理由通知が行われます。ここで商標権者に反論の機会が与えられます。
取消理由通知を商標権者がクリアできれば商標権の取消を免れますが、そうでなければ商標登録が取り消され、商標権は最初から発生しなかった状態に戻ります。
異議申立内容が不十分で、取消すまでに至らない場合には審理は終了し、維持決定という、商標権維持の判断がなされます。
4. 商標の無効審判制度
異議申立でも解決しなかった場合、最後の手段として無効審判を請求する方法があります。但し、このプロセスにはいくつかの制約があります。まず、申立人は商標登録の有効性に直接関係する当事者である必要があります。そして、この請求には期限があり、特定の理由であれば、5年経過すると無効審判の申立は行えなくなります。
一定期間を過ぎると、無効審判の請求ができなくなる期間のことを除斥期間と呼びます。この除斥期間に注意が必要です。
審理は、審査の上級審である審判形式で行われます。異議申立の場合、異議を認めない維持決定の場合は不服を訴えることができません。
これに対し、無効審判の場合は、審判の結論に不服がある場合には知財高裁に訴えることができる。さらに最高裁まで訴えることもできます。
商標をめぐる判断は、特許庁内部でも覆ることがあります。また上級審に進むたびに、オセロのように結論が白黒反転することもあります。途中で諦めると負けが確定する厳しい世界でもあります。
いずれの方法も簡単ではありませんが、正当な理由がある場合には必要なプロセスとなります。注意深く進め、必要な場合には弁理士・弁護士の専門家の助言を求めることをお勧めします。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247