商標権の侵害とは、他人の登録商標を許可なく使用することを指します。
これを理解するには、商標権の権利の内容が土地の所有権の内容と似ている点が参考になります。
例えば、公共の駐車場に車を停めるのは問題ありませんが、他人の土地に無断で駐車するとトラブルになります。
同様に、商標権のあるマークや名称を無断で使用すると、その権利者から差し止め請求や損害賠償請求を受ける可能性があります。
例えば、「東京」とか「大阪」みたいに単なる土地の表示とか、「うまい」「やすい」等の商品の一般的な説明語句は一個人が独占することはできません。
誰もが使う必要のある言葉を商標権の形で一個人とか一企業に独占させたなら、社会的な混乱が生じるからです。
一方で、これまで商標を使ってきたけれども、誰からも文句を言われたこともないし、訴えられたこともない、という実績は、商標権侵害とは特に関係がありません。
たまたま権利者が、こちらの侵害行為に気がついていないだけかもしれないからです。
「今まで問題なかった」という経験は、商標権侵害において安全を保証しません。
今までは問題なかったかもしれませんが、インターネット技術の発達により、侵害者を見つけるのが以前よりも容易になっています。そのため、「見つからなければ大丈夫」という考えはリスクを伴います。
侵害が発覚すると、問題の解決には多大な労力、費用、時間が必要になります。
損害賠償請求や差止請求だけでなく、商標権の侵害行為は刑事罰の適用もあり、例えば、侵害者は最高懲役10年、法人の場合には罰金3億円の最高額が法定されています。
このような状況を避けるためには、商標を使用する際には慎重に検討し、必要ならば専門家の助言を求めることが重要です。
商標権の侵害は意図しない場合でも発生する可能性があるため、普段からそのリスクを意識し、適切な対策を講じることが大切です。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
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