登録商標と著作物はいつまで守られるのですか?

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1.TPP11と著作権の存続期間の延長

衆議院は、5月18日、「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(TPP11協定)を承認し、TPP11関連法を可決しました。

また、参議院も、6月29日、TPP11協定を承認し、TPP11関連法を可決しました。TPP11は、6ヶ国以上の加盟国が国内手続を終えれば、60日以内に発効します。

メキシコに加え日本が国内手続を終えたことになり、他の4ヶ国が国内手続を終えれば、発効の目処が立つことになります。

TPP11協定は、新たなルールを構築し、経済活動の自由化を図るものです。

TPP11協定は、関税の引下げの他に、投資や金融サービスなど幅広い分野を対象とし、知的財産も対象としています。

知的財産との関係では、TPP11関連法により、特許法、著作権法などが改正されたところ、改正により、著作権等侵害罪の一部が非親告罪に改められた他、以下のとおり、著作権の存続期間が50年から70年に延びることになります。

(保護期間の原則)
第50条 著作権の存続期間は、著作物の創作の時に始まる。
2 著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。次条第1項において同じ。)70年を経過するまでの間、存続する。
(著作権法50条)

著作権法は、著作者等の権利を守ることにより、創作活動への動機を与えつつ、一定の期間が過ぎて、著作者等が利益を得た後は、著作物を自由に利用できるものとし、文化の発展を図ろうとしています。

著作権の存続期間を延びると、著作者等が利益を得る期間が長くなるものの、著作者の死後等50〜70年を過ぎても、経済的価値を持つ著作物は限られると考えられ、かえって、著作物の自由な利用を害し、文化の発展を損なうおそれがあると考えられています。

2.著作権と商標権

(1)商標権の存続期間

商標権の存続期間は、10年です。著作権の存続期間と比べて、短いと思うかもしれませんが、商標権は著作権と異なり更新登録の申請により存続期間の更新が可能です。

著作権法は、上述のとおり、文化の発展を図るため、一定の期間が過ぎれば、著作物を自由に利用できるものとしています。

他方、商標法は、商標使用者の業務上の信用や需要者の利益を守るため、商標を守るものです。

商標使用者の事業が必ずしも10年の期間で終わるものではない以上、業務上の信用維持等の必要性があるならば、商標権の存続期間を半永久的に認めてもよいものです。

商標権者は、更新登録の申請と登録料の納付を行い、商標権の存続期間の更新を重ねることにより、半永久的に商標法の保護を受けることが可能となります。

例えば、以下の登録商標の商標権は、現在、味の素株式会社に帰属しているものですが、創業者の鈴木三郎助が明治41年(1908年)に商標登録を受けたものです。

以来、存続期間の更新を重ねた結果、約110年もの長期間に渡り、商標権が存続してきたものです。

味の素の登録商標公報
(商標登録第34220号の商標公報より引用)

(2)著作物の商標登録

上述のとおり、著作権は一定期間のみ存続し、商標権は更新により半永久的に存続する権利です。

著作権は創作的な表現を守るものであるのに対し、商標権は商品役務の目じるしを守るものであり、著作権と商標権は、法律上、その保護の対象を異にします。

他方、創作的な表現、つまり、著作物でも商標登録を受けることにより、商標権の保護を受けることが可能です。

企業のシンボルマークに著作物性が認められる場合、著作権により守られますが、商標登録を受けていれば、商標権でも守られることになります。

企業など団体名義の著作物は、著作者の死後ではなく、著作物の公表後、50年間守られてきたところ、長期間使用している企業のシンボルマークについては、著作権の存続期間は満了しているものの、商標権の存続期間は継続しているということもあり得るでしょう。

著作権の存続期間が満了するような場合であっても、商標権の保護を受けることができる点は、商標登録のメリットといえます。

また、企業のシンボルマークといった商標として使用するものであれば、著作権の存続期間とは別に商標権により守られることも、商標登録制度の趣旨に沿うものでしょう。

商標権により守られるとしても、商標として使用する限りでのことであり、著作物の利用そのものが制限されるわけではありません。

ただ、商標としての使用か否かの判断は、困難を伴う面があります。

著作権の存続期間満了した後は、著作物の利用は自由であり、例えば、著作物を印刷したTシャツを製造することに支障はありません。

ところが、著作物が商標登録されている場合、Tシャツに印刷された著作物が商標として認識されるおそれがゼロではないため、本来自由であるはずの著作物の利用を躊躇してしまう事態に陥ることになります。

このような効果を狙ってか、著作権の存続期間が満了した著作物が大量に商標登録を受けている例も散見されます。

3.おわりに

TPP11協定が発効すれば、著作権は70年間存続することになります。

著作権の存続期間の延長が、著作物の自由な利用の障害となることが否めないことに照らせば、著作物の利用を促す制度設計を行う必要があります。

著作物の自由な利用が害されると、文化の発展を損なうことになりかねず、著作者等の利益に配慮しつつも、適切なバランスを図ることが大切です。

ファーイースト国際特許事務所
弁護士・弁理士 都築 健太郎
03-6667-0247

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