自分の作品をしっかり守るために、正しい法的手段を選ぼう!
あなたが作った作品は、意匠法、商標法、著作権法を使って守ることができます。
例えば、あなたが「針金でできた馬の置物」を作ったとします。この作品を守りたいとき、どの法律が一番効果的でしょうか?
それは、あなたが「この馬」のどの部分を守りたいかによって変わってきます。
このように簡単に言うことで、読者にとって具体的に考えやすくなります。次に、それぞれの法の違いを詳しく見てみましょう。
2.意匠法で守るデザインの力とは?
注意点として、意匠を守るデザインの法律として意匠法があります。商標法や著作権法の中に、デザイン商標やデザイン著作を守る法律があるわけではないです。
「意匠」という言葉はデザインを意味し、立体物の外観を保護するための代表的な方法です。
「意匠」とは、物そのものの「見た目」を指し、そのデザインを意匠権として登録することで守る仕組みです。ですから、「この馬のデザインを守りたい!」と思う場合、最適な選択肢は「意匠登録」です。
例えば「この馬の置物を量産して販売したい!」と考えているなら、まずはその置物の意匠を登録することをお勧めします。
しかし、意匠登録にはいくつかの重要な注意点があります。
(1)意匠権の範囲には限界がある
意匠権の保護は、登録されたデザインと「似ている」ものまでに及びます。デザインが似ているかどうかは、その「物」と「見た目」で判断されます。
たとえあなたが「置物」としての意匠権を取得できたとしても、他の人がこの馬に似た形の「お菓子」を販売することを防げない可能性があります。意匠権は置物のデザインとして発生しているから、です。
(2)公開前に要注意!
意匠登録の制度は「新しいデザインを公開してくれたお礼に、そのデザインを一定期間独占する権利をあげましょう」という考え方です。
ですので、出願前にそのデザインを展示会に出したり販売してしまうと、原則として意匠登録はできなくなります。また、既にあるデザインを元に簡単に思いつくようなものも、登録は難しいです。
素晴らしい作品ができたら早く見せたい気持ちは分かりますが、意匠登録を考えているならまず出願して、その後ゆっくり披露しましょう。
(3)意匠権には期限がある
意匠権は出願から25年で効力が切れてしまいます。ずっと独占できるわけではないので、この点も頭に入れておきましょう。
意匠法を利用してデザインを守ることは可能ですが、効力や制約について理解しておくことが重要です。
3.商標法でブランドを守る!
「この馬を売るのではなく、自社のキャラクターとして使いたい!」そんな場合、意匠登録では不十分なことがあります。そこで活躍するのが「商標」です。
商標とは、自社の商品やサービスを他社と区別するための「目印」です。商標権を登録することで、その目印を独占的に使う権利が得られます。
つまり「自分の商品やサービスの象徴として、この馬を守りたい」と考えるなら、商標登録が最適な方法です。この馬の写真(平面)や立体的な形状を商標として登録することも可能です。
しかし、商標にも注意点があります。
(1)商標権の範囲には限界がある
商標権は、登録された商標と「似ている」範囲にまで効力が及びますが、その判断は「商標」とその商標が使われる「商品・サービス」のセットで行われます。
例えば、「置物」の商標として馬を登録できた場合でも、他の人が似た馬を使って「お菓子」を販売することを止められるとは限りません。お菓子の権利が必要なら、置物に加えてお菓子を権利範囲の指定商品として最初に願書で指定しておく必要があります。
(2)商標はあくまで「目印」
商標権は、その商標が「商品やサービスの目印」として使われている場合にのみ効力を発揮します。
たとえば、あなたが「置物」の商標として馬を登録したとしても、他の人が異なる名前やマークを使って、似たような馬の置物を販売することを防げない場合があります。
商標は、あなたのブランドや商品・サービスを他社と区別する強力なツールですが、その範囲や限界を理解しておくことが大切です。
4.著作権で作品を守る方法
この馬が芸術品かどうかは置いておいて、芸術作品を守るために「著作権」を考える方も多いでしょう。
著作権は、作品を作った時点で自動的に発生する権利です。「著作物」とは、必ずしもプロの画家や作家の作品だけを指すものではなく、趣味で作った作品も対象となり得ます。
上記の馬も「著作物」として認められ、著作権で守ることが可能です。
しかし、著作権には以下の注意点があります。
(1)証明が難しい
著作権は自動的に発生するため、登録の必要はありませんが、他者との間で権利を争うことになった際、「自分が著作権者だ!」と証明するのが難しいという欠点があります。作品の創作日や自分が著作権者であることを示す証拠が重要になります。
(2)登録制度は限定的
著作権にも一応、登録制度がありますが、登録できる内容は限られており、すべての著作物を簡単に登録できるわけではありません。特にビジネスとして作品を活用する場合、著作権だけに頼るのは少しリスクが伴います。
事業で利用する作品の場合は、意匠や商標の登録も合わせて検討することをお勧めします。
著作権は自動的に発生する便利な権利ですが、証明の難しさや登録制度の制約もあります。特にビジネス利用を考えている場合は、他の法的手段と組み合わせて作品を守るのが賢明です。
5.まとめ
「意匠権」「商標権」「著作権」などの「知的財産権」は、残念ながらすべてを完璧に守る「万能な魔法のツール」ではありません。しかし、適切な方法を選べば、あなたの大切な作品やビジネスをしっかり守る強力な武器となります。
まずは「何を守りたいのか?」を明確にし、それに応じた知的財産権を活用することが大切です。それぞれの権利を正しく使い分けて、大切な知的財産をしっかりと守りましょう。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247