モンシュシュ商標権侵害で損害賠償請求額が約5100万円に!

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2013年、大阪高裁の二審で、洋菓子ブランド「モンシュシュ」の商標権侵害に関する争いが決着しました。商標権者であるゴンチャロフ製菓側の主張が認められ、損害賠償請求額は約5100万円と認定されました。

争点はどこに?

一審の大阪地裁では、訴訟の提起時期が遅すぎることや、モンシュシュが店舗名として広く浸透している点、さらには堂島ロール側がモンシュシュの知名度向上に一役買ったという主張などがなされました。これに対し、堂島ロールは「自社の信用を不正に利用された」とし、商標権の行使自体が権利濫用であると反論。しかし、大阪地裁はこれらの主張を退け、結果として上級審となる大阪高裁でも同様の判断が維持されました。

争点1

【争点内容】
「被告各標章は、本件商標の指定商品又はこれに類似するものに使用されているか」

【概要】

  • 控訴人(原審での商標権者)は、被告が使用している各標章は、店舗名や営業表示として用いられており、商品の包装などに直接使用されていないため、指定商品(洋菓子など)やこれに類似する商品の上での使用とは認められないと主張。
  • 被控訴人(原告側)は、実際の店舗看板や広告などの使用実態、また具体的な取引実情(小売・役務としての販売実態)から、被告各標章が実質的に本件商標の指定商品やそれに類似するものとして使用され、出所識別機能を有していると主張している。
  • 裁判所は、具体的な表示内容・配置、実際の取引状況などを総合的に考慮し、被告各標章の使用態様が商品・役務の出所を識別する上で一定の機能を果たしているとして、指定商品またはそれに類似するものへの使用と認めた。

争点2

【争点内容】

「被告各標章は、本件商標に類似するか」

【概要】

  • 控訴人は、被告標章(特に標章2~4等を含むもの)と本件商標は、外観、称呼、観念において明確な相違があり、類似しないと主張する。
  • 被控訴人は、各標章の構成要素(例えば、文字の配置、使用される書体、記号の有無等)や、具体的な市場における取引実態・消費者の認識を挙げ、全体として出所識別機能が共通している点から、本件商標と被告各標章は類似すると主張する。
  • 裁判所は、各標章の外観や称呼が実際に需要者に同一またはほぼ同一の印象を与えること、また文字やデザインの一部の差異があるに留まることから、全体として類似性が認められると判断した。

争点3

【争点内容】
「被告標章4は商標として使用されているか」

【概要】

  • 控訴人は、被告標章4は他の表示(例:ウェブサイトのドメイン名表示や他の文字列と一体での使用)と併用されており、単独で商標としての機能を有していないとして、差止請求等の対象から除外すべきと主張した。
  • 被控訴人は、被告標章4そのものが消費者に対して出所識別機能を発揮する点や、広告・看板などでの使用実態から、商標として十分に機能していると主張している。
  • 裁判所は、たとえ他の文言と併用されている場合でも、被告標章4の主要な部分が消費者に対して出所を印象づける効果を有していることから、商標として使用されていると判断した。

争点4

【争点内容】
「被告標章2ないし4は、商標権の効力が及ばない、控訴人の著名な略称を普通に用いられる方法で表示したものか(商標法26条1項1号)」

【概要】

  • 控訴人は、被告標章2~4について、控訴人の著名な略称である「モンシュシュ」が普通に用いられる表示方法であると認められれば、保護対象外となると主張している。
  • しかし、裁判所は、控訴人が主張するような著名性が十分に認められるという事実が立証されなかったこと、また一般に使用される略称としての表示方法であるとは言い難いと判断し、控訴人の抗弁は認められないとした。

争点5

【争点内容】
「仮に(4)が認められるとして、控訴人は、被告標章2ないし4を、不正競争の目的で用いたか(商標法26条2項)」

【概要】

  • 争点4で被告標章2~4が控訴人の略称として普通に用いられる表示方法であったとしても、控訴人側がその標章を不正競争の目的で使用したか否かが争点となる。
  • 控訴人は、被告側の使用が不正競争に当たらないと主張する一方、被控訴人は、実際の使用態様や市場での認識から、控訴人の営業活動や商品との関連性を利用しているとし、不正競争目的の使用であると主張している。
  • 裁判所は、具体的な使用実態や周囲の広告表現等を踏まえて、不正競争の目的で使用されていると認定する判断を下している。

争点5’

【争点内容】
「被告標章8及び9につき登録商標使用の抗弁が認められるか」

【概要】

  • 被告側は、標章8および9の使用は、被告が既に有している登録商標(被告登録商標1及び3)の範囲内での使用であるとして、登録商標使用の抗弁を主張している。
  • 被控訴人は、これらの登録商標に無効事由がある点や、標章8及び9の具体的な表示方法や使用態様が、本件商標と区別できない点から、登録商標使用の抗弁を認めることはできないと主張している。
  • 裁判所は、被告登録商標の無効審決などの事情も考慮し、被告標章8及び9の使用は本件商標権の侵害に該当すると判断した。

争点6

【争点内容】
「被控訴人の損害の発生の有無」

【概要】

  • 被控訴人は、被告各標章の使用により、実際に損害が発生していると主張している。
  • 控訴人側は、損害の実態や因果関係について異議を唱えているが、裁判所は、実際の売上高や市場での認識、さらに被控訴人の広告戦略等から、損害が発生していると認定した。

争点7

【争点内容】
「被控訴人の請求は権利濫用か」

【概要】

  • 控訴人は、被控訴人の請求が、権利の濫用にあたると主張している。
  • 被控訴人は、自己の正当な権利行使であり、なおかつ実際に損害が発生していることから、権利濫用とは言えないと主張する。
  • 裁判所は、双方の主張と実態を検討した結果、被控訴人の請求は権利の正当な行使であり、権利濫用と認めるには至らないと判断した。

争点7’

【争点内容】
「消滅時効の抗弁が認められるか」

【概要】

  • 控訴人は、被控訴人が請求する損害賠償の一部について、消滅時効が成立していると主張している。
  • 被控訴人は、控訴人が侵害行為を知った時点などを踏まえ、時効の援用は認められないと主張している。
  • 裁判所は、損害賠償の一部について、消滅時効が成立していると判断した。

争点8

【争点内容】
「被控訴人の損害額」

【概要】

  • 被控訴人は、控訴人の侵害行為に基づく損害額として、一定の使用料相当額(具体的な金額算定方法を提示)を主張している。
  • 控訴人は、売上高等のデータや使用料率の設定について異議を唱え、過大な請求であると主張する。
  • 裁判所は、当該売上実績や市場の状況、さらには類似事例のライセンス料率などを考慮し、被控訴人の主張する使用料相当額を認定した。

争点9

【争点内容】
「被告各標章の使用禁止等を求める必要性の有無」

【概要】

  • 被控訴人は、侵害が継続している点や将来的な再使用の可能性を理由に、使用禁止等の措置の必要性を主張している。
  • 控訴人は、既に屋号の変更等により、今後被告各標章の使用を再開する見込みはないと主張し、使用禁止措置の必要性はないと主張している。
  • 裁判所は、控訴人の請求のうち,被告各標章の使用禁止及び抹消並びに被告各標章を付したものの廃棄を求める請求は,理由がないと判断した。

賠償額の増額理由

一審では約3500万円の損害賠償が認められていましたが、高裁では請求の算定期間が延長されたことから、賠償額が約5100万円にまで増額されました。

先使用権と商標登録の重要性

商標登録出願前に相当の知名度を持つ商標を使用していれば、「先使用権」という既得権が認められる場合もあります。

今回の事例が示す通り、商標権の効力を排除してまで使用を続けるのは容易ではありません。有名な商標であればこそ、最初からしっかりと商標登録を行い、自社のブランドを守ることが極めて重要です。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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