1.メタタグとは?検索エンジン最適化(SEO)との関係
ウェブサイトは事業者が商品やサービスを需要者に伝える重要な手段ですが、まず需要者にサイトを見つけてもらう必要があります。
多くの需要者はGoogleなどの検索エンジンを使ってウェブサイトを探します。
事業者としては、自社サイトが検索結果の上位に表示されることが望ましいため、検索エンジンの特性を分析し、上位表示されるようサイトを設計します。この取り組みが「検索エンジン最適化(SEO)」です。
1-1. SEOにおけるメタタグの役割
かつてSEOでは、メタタグの記載工夫が広く行われていました。メタタグとはHTMLコードの一種で、ウェブサイトの情報を記述するものですが、サイト閲覧時には表示されません。
商標法と関連が深いメタタグには主に2種類あります。
- ディスクリプションメタタグ:サイトの概要を説明
- キーワードメタタグ:サイトの関連キーワードを列挙
1-2. 具体例:INPITウェブサイトのメタタグ
独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)のウェブサイトでは、以下のようなメタタグが使用されています。
1-3. ディスクリプションメタタグ:
[meta name=”description” content=”人と情報で知財を支えるINPIT–「工業所有権情報・研修館」では、特許庁と連携しつつ、特許情報提供、知財情報活用促進、産業財産権相談、知財人材育成などの業務を実施しています。”]
(INPITのウェブサイト(http://www.inpit.go.jp/)のHTMLのコードより引用)
1-4. キーワードメタタグ:
[meta name=”keywords” content=”インピット,特許,実用新案,意匠,商標,産業財産権,工業所有権,知的所有権,特許相談,IPDL,特許電子図書館,電子出願,インターネット出願,知財情報,活用促進,知財人材,調達”]
(INPITのウェブサイト(http://www.inpit.go.jp/)のHTMLのコードより引用)
1-5. 現在のメタタグの重要性
かつて事業者はメタタグを工夫して自社サイトの検索順位向上を図りましたが、メタタグの記載内容とウェブサイトの品質には本来関連性がありません。
現在、GoogleやBingなどの検索エンジンは、良質なコンテンツを提供するサイトを上位表示させる方針を採用しており、メタタグの記載をあまり重視しない傾向にあります。
そのため、商標戦略においては、メタタグだけでなく、サイト全体の質と関連性を高める総合的なアプローチが必要です。
1-6. メタタグと商標法の関係
検索エンジンがメタタグを重視しない傾向にあるとはいえ、ウェブサイト制作では今でもメタタグに概要やキーワードを記載する慣行が広く行われています。
商標法の観点では、ウェブサイトは「商品若しくは役務に関する広告」や「商品若しくは役務に関する広告を内容とする情報」に該当します。そのため、ウェブサイトで商標を使用すると、他人の商標権と抵触するおそれがあります。HTMLのメタタグにおいても同様の注意が必要です。
2.メタタグと商標的使用の判断
メタタグはHTMLコードの一部で、通常ウェブサイト上には表示されません。商標は本来、自他商品・役務を識別し、その出所を表示するために使われるもので、需要者が認識できることが前提となります。
一見すると、メタタグは表示されないため需要者に認識されず、商標としての使用に当たらないように思えます。しかし、メタタグの種類によって状況が異なります。
2-1. ディスクリプションメタタグの場合
ディスクリプションメタタグはウェブサイト上には表示されなくても、検索エンジンの検索結果にサイトの説明として表示されます。例えば、Googleで「INPIT」と検索すると、ディスクリプションメタタグの内容が表示されます。
このため、ディスクリプションメタタグの記載は検索結果を通じて需要者に認識可能となります。他人の登録商標と同一または類似の商標をここに記載した場合、商標としての使用と認められ、商標権侵害となる可能性があります。
2-2. 判例:ディスクリプションメタタグの商標的使用
大阪地裁の判決では、ディスクリプションメタタグへの記載が商標としての使用に当たると認められました。
被告会社は、被告サイトのhtmlファイルにメタタグとして「クルマの110番」と記載し、検索サイトにおいて被告サイトの説明として表示された。これは役務に関する広告を内容とする情報に標章を付して、電磁的方法により提供したものと認められる。
(大阪地判平成17年12月8日)
近年の東京地裁・大阪地裁の裁判例(平成27年1月29日、平成29年1月19日)も同様の判断を示しています。
2-3. キーワードメタタグの場合
一方、キーワードメタタグはウェブサイト上に表示されず、検索結果にも表示されません。通常、需要者が認識することができないため、大阪地裁は以下のように判示しました:
キーワードメタタグにおける原告商標の使用は、表示される検索結果の広告内容自体において、原告商標が知覚により認識される態様で使用されているものではない。よって、商標法2条3項8号所定の使用行為に当たらない。(大阪地判平成29年1月19日)
2-4. 実務上の注意点
ウェブサイト運営者は特にディスクリプションメタタグの記載に注意し、他社の登録商標を安易に使用しないよう心がけるべきです。検索結果に表示される情報も商標権侵害の対象となり得ることを念頭に置いておきましょう。
2-5. SEOとメタタグの現状
検索エンジンは現在、メタタグの記載をあまり重視しない傾向にあります。そのため、SEO(検索エンジン最適化)を目的としてメタタグの記載を工夫することの効果は限定的といえるでしょう。
2-6. ディスクリプションメタタグの重要性
しかし、ディスクリプションメタタグは検索結果に表示されるため、需要者の目に留まりやすい要素です。SEOへの直接的な効果は薄れていても、以下の点で依然として重要な役割を果たしています。
- ウェブサイトの概要を需要者に簡潔に伝える
- クリック率(CTR)に影響を与える可能性がある
- ユーザーの期待値を適切に設定できる
3.まとめ
ディスクリプションメタタグは今後も広く使われると考えられます。記載する際には、以下の点に注意しましょう:
- 1. 他社の商標権を尊重する:他社の登録商標を無断で使用すると、商標権侵害となる可能性があります
- 2. 自社の商品・サービスを正確に表現する:誤解を招く表現は避け、実際の内容と一致させる
- 3. 簡潔で魅力的な文章を心がける:需要者の興味を引く内容にする
3-1. 商標戦略としてのメタタグ活用
自社の商標戦略を考える際には、メタタグだけでなく、ウェブサイト全体の一貫性ある商標使用が重要です。適切に自社の商標を保護しながら、効果的なオンラインプレゼンスを構築しましょう。
商標とウェブマーケティングは密接に関連しています。SEOの手法は変化しても、法的な観点から商標を適切に扱うことの重要性は変わりません。常に最新の動向と判例に注意を払いながら、ビジネスを展開していきましょう。
ファーイースト国際特許事務所弁護士・弁理士 都築 健太郎
03-6667-0247