索 引
1. 色だけで商標登録するには、何が必要か
商品名を隠しても、包装の色を見ればどの会社の商品か分かる。そんな配色を守る方法が「色彩のみからなる商標」です。色付きの文字やロゴの登録とは別に、色そのものや色の組合せを登録の対象にします。
ただし、好きな色を選んで出願すれば、その色を自社だけのものにできる制度ではありません。商品の装飾にも使われる色について、使い続けた結果、その色だけで商品の出所が分かるようになったことが審査の中心になります。
色の商標を考える際は、登録件数の少なさより、自社の色がどこまでお客さまに知られているかを確かめてください。ここでは、音や位置などを含む5種類の商標と登録事例を紹介し、色の商標に必要な資料を説明します。
2. 動き・ホログラム・色彩・音・位置の5種類
新しいタイプの商標として保護されるのは、動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標、位置商標の5種類です。文字や図形、立体の商標に加え、目や耳で商品・サービスの出所を伝える要素が対象になっています。
動き商標とホログラム商標
動き商標は、文字や図形などが時間とともに変化する商標です。テレビCMや画面上で動くロゴを思い浮かべると分かりやすいでしょう。出願では、変化の様子を連続した図などで示し、どのように動くのかを説明します。
ホログラム商標は、見る角度によって文字や図形などが変わる商標です。クレジットカードのホログラムのように、角度を変えると見え方が変わるものを想像してください。光る素材を使ったというだけでなく、その表示がお客さまに出所を伝えるかが問われます。
色彩のみからなる商標
単色や複数の色の組合せを、文字や図形の輪郭に結び付けずに登録する商標です。包装紙や看板のように、形が変わっても同じ配色として使われるものが例です。商品などの特定の位置に付ける色を対象にする出願もあります。
色付きのロゴを登録する場合は、文字や図形を含めた商標が審査されます。一方、色彩のみからなる商標では、文字や図形から離れた色だけで出所を示せるかを確かめます。守りたい対象がロゴ全体なのか、色そのものなのかを決めてから出願を考えてください。
音商標と位置商標
音商標は、CMのサウンドロゴや起動音など、耳で認識する商標です。短い音声やメロディーを聞いて、どの会社の商品か分かる場面に使われます。音の内容によって識別力を審査するため、通知音なら何でも登録できるという扱いではありません。
位置商標は、商品などのどこに標章を付けるかを特定した商標です。例えば、靴のかかとに付くマークや、衣服の決まった場所に付くタグが考えられます。標章とその位置を組み合わせて、登録を受ける対象を特定します。
3. 特許庁統計では2015〜2025年の登録累計は823件
特許庁の特許行政年次報告書の統計を合計すると、2015年から2025年までに登録された新しいタイプの商標は823件です。内訳は、音商標389件、動き商標220件、位置商標186件、ホログラム商標16件、色彩のみからなる商標12件です。国際商標登録出願は含めていません。
この累計は、2026年版の統計資料に載る2016〜2025年分と、2024年版101頁の2015年分を合わせた値です。各年に登録された件数の合計であり、現在存続している商標権の数を示すものではありません。
色彩の登録は、5種類の中でも少数です。その数字を見て「競争相手が少ない今が好機」と考える前に、使用による識別力をどの資料で示せるかを検討してください。珍しい色を選ぶことと、その色で自社が認識されることは別の問題です。
4. 音・色・位置の登録事例
小林製薬の音商標
小林製薬株式会社の音商標には、登録第5804301号があります。消臭芳香剤(身体用を除く)などを対象とする登録例です。CMなどで繰り返し聞く音も、商品や会社を見分ける手掛かりになります。音商標を調べる際には、登録番号に対応する音声と、対象となる商品・サービスを併せて確認してください。
セブン-イレブンの色彩商標
株式会社セブン-イレブン・ジャパンの登録第5933289号は、色彩のみからなる商標の例です。おなじみの配色を、小売等のサービスに関して登録しています。飲食料品を販売する店舗の看板などで繰り返し見てきた色が、店舗を見分ける手掛かりになっています。
色の商標を考える際には、どの商品・サービスとの関係で、その配色が知られているかが大切です。ある店舗の色として知られた配色について、あらゆる商品分野で同じ範囲の権利が生じるという説明は誤りです。
エドウインの位置商標
株式会社エドウインの登録第5807881号は、ジーンズのポケットに付くタグを扱う位置商標です。長ズボンなどについて、標章を付ける場所まで特定しています。商品全体を見たときの配置も、ブランドを見分ける要素になる例です。
これらの事例からは、音や色、配置のうち何を守りたいのかを具体的に考えられます。自社の商品でも、名前、ロゴ、配色などを分けて確認すると、出願の対象が明確になります。
5. 色彩商標で問われる「使用による識別力」
特許庁は、色彩のみからなる商標について、原則として識別力がないものとして審査します。色は商品の装飾や特徴の表示にも使われるためです。登録を目指すには、商標法第3条第2項の「使用による識別力」を示すことが中心になります。
確認するのは、色を使ってきた結果、その商品・サービスのお客さまが、色だけで特定の会社のものだと分かるようになっているかです。社内で「当社の色」と呼んでいることや、広告に色を載せていることから一歩進んで、買い手がどう認識しているかを示します。
ロゴと一緒に使ってきた色でも、ロゴを含む写真をすべて除外する必要はありません。特許庁の商標審査便覧54.06は、色の部分が独立して出所を示していると認められるかを、提出された証拠から判断する扱いを示しています。写真の中で色がどう目立つか、広告でその配色をどう伝えてきたかまで確認してください。
単色も制度上の対象に含まれます。単色か複数色かにかかわらず、出願する色と実際に使ってきた色を合わせ、その色が出所を示すことを立証するという課題があります。
6. 出願を考える前に残しておきたい資料
配色を継続して使ってきた商品の写真、包装、カタログ、広告を、使用した時期が分かる形で保存してください。使用開始時期や期間、販売地域、販売数量、売上、広告の掲載実績、認知度調査なども、色が知られていることを示す資料になります。
例えば、昔の包装と現在の包装を並べたときに配色が変わっていれば、どの時期のどの色について出願するのかを確認します。色名だけでなく、色見本帳の番号やRGB値、複数色の配置・割合など、色を特定する資料も用意してください。印刷物の色が違って見える場合も、仕様と使用の実態を照らし合わせてください。
商品名やロゴの保護がまだなら、その出願も先に検討してください。色だけで広く認識されるまでには、同じ配色を使い続けて、買い手の認識が育つ過程を見ていくことになります。商品名・ロゴを守る出願と、色の使用を続けながら証拠を集める準備を分けると、取り組む順番が見えてきます。
出願を話題作りだけで決めると、識別力の立証にかかる負担を見落とします。まず自社の使い方と資料を点検し、審査に対応できる根拠を持って出願を検討するのが順序です。詳しい登録要件は色彩のみからなる商標の解説、具体的な商品例はMONO消しゴムの色彩商標でも説明しています。
7. 色の商標についてよくある質問
Q1. 色付きのロゴを登録すれば、色だけも保護できますか?
色付きロゴの登録では、文字や図形を含む商標が権利の対象になります。色そのものを独立して守る出願とは、対象とする商標が異なります。どちらを出願するかは、実際の使い方と守りたい対象に合わせて検討します。
Q2. 1色だけでも出願できますか?
単色も色彩のみからなる商標の対象です。登録には、その色が使われた結果、商品・サービスの出所を示すようになったことを立証する課題があります。
Q3. 色彩商標の登録件数はどれくらいですか?
特許庁の特許行政年次報告書の統計を合計すると、2015〜2025年の登録累計は12件です。国際商標登録出願を除いた年別登録件数の合計で、現在存続している権利の件数とは区別しています。
Q4. ロゴと一緒に使った写真も証拠になりますか?
証拠として検討の対象になります。そのうえで、文字や図形から独立した色の部分だけで出所が認識されているかが判断されます。写真に色が写っているという説明にとどまらず、色を継続して使った実績や認知を示す資料をそろえます。
Q5. まだ販売を始めたばかりなら、何から取り組みますか?
商品名・ロゴの保護を検討し、配色を使った商品、包装、広告の記録を残してください。色の出願は、その色をお客さまがどれだけ認識しているかと、提出できる資料を確認して判断します。
8. 自社の色を守るための相談
色彩商標を検討する際は、使っている商品・サービス、配色が分かる写真、使用の期間を確認しておくと、相談の出発点になります。出願の対象を色にするのか、商品名やロゴも含めて考えるのか、現状に合わせて検討してください。
ご相談はお問い合わせフォームからお寄せください。費用は商標登録の費用ページをご覧ください。
ファーイースト国際特許事務所
弁理士 秋和 勝志
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