春といえば、やっぱり「さくら」。それぞれに思い浮かぶイメージがあると思いますが、実は「さくら」という名前自体が商標登録されているケースがいくつもあるんです。
今回は、お花見の歴史から、さくらに関わる商標登録の実例までをわかりやすくご紹介します。
1. お花見のはじまり
さくらといえばお花見。満開の花の下でお弁当やお酒を楽しむ…そんなイメージが強いですよね。
しかし、お花見の起源をさかのぼると、1,000〜2,000年前の農民たちによる「豊作祈願」に行き着くといわれています。当時のお花見は、今日のようなレジャー感覚ではなく、神様に祈りをささげる儀式的な意味合いが強かったようです。
平安時代~鎌倉時代
- 平安時代:貴族たちの間で「さくら鑑賞」が広まり、花を愛でる風習が貴族文化の一部として定着
- 鎌倉時代:武家や庶民層にも広まり、より多くの人がさくらを楽しむように
江戸時代
現在のようにさくらの下でみんなでワイワイと宴をするスタイルになったのは江戸時代からとされています。実はまだそれほど長い歴史ではないんですね。
梅を眺める風習も
かつては梅でのお花見説もあります。梅もさくら同様、春の到来を象徴する花として親しまれていたそうです。
近年は海外からの注目も
日本政府観光局(JNTO)の推計によると、2024年3月には外国人観光客が月間で初の300万人超(3,081,600人)を記録しました。
前年同月比69.5%増と爆発的な伸びを見せており、イースター休暇の影響も相まって桜シーズンは世界的にも注目度が高まっています。
2. さくらの種類は意外とたくさん
日本のさくらの約80%は「ソメイヨシノ」と言われていますが、実はさくらには380種類以上の品種が存在します。代表的なものとしては、以下のような例が挙げられます。
- ヤマザクラ(山桜)
- オオシマザクラ(大島桜)
- エドヒガン(江戸彼岸)
- シダレザクラ(枝垂桜
「日本花の会」公式サイトの「桜図鑑」などを活用して、花の色や形状ごとにお気に入りの品種を見つけるのも楽しいですよ。
「ソメイヨシノ」の商標登録
そんな中でも、最も有名といわれるソメイヨシノ(染井吉野)が登録されている事例があります。
商標登録第4604158号
特許庁の商標公報より引用
- 権利者:鳥越製粉株式会社
- 出願日:2001年12月26日
- 登録日:2002年9月13日
- 指定商品:第30類(コーヒー、ココア、食用粉類 等)
このほかにも、異なる区分で「ソメイヨシノ」を登録している会社や個人もあります。詳しく調べたい方は、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)をチェックしてみてください。
3. 「さくら」の登録商標例をご紹介
実は、「さくら」「サクラ」「櫻」「SAKURA」など、さまざまな表記やロゴで商標登録されている事例が多数あります。ここでは、いくつかピックアップしてみましょう。
(1)商標「さくら」
特許庁の商標公報より引用
- 商標登録第4277046号
- 権利者:株式会社ニップン
- 出願日:1998年2月6日
- 登録日:1999年5月28日
- 指定商品:第30類(米、脱穀済みの大麦、食用粉類 等)
(2)商標「サクラ」
特許庁の商標公報より引用
- 商標登録第138366号
- 権利者:サクラグローバルホールディング株式会社
- 出願日:1921年8月13日
- 登録日:1921年11月30日
- 指定商品:第5類(医療用腕輪)、第8類(ピンセット)、第9類(試験管、顕微鏡 等)、第10類(医療用機械器具 等)、第12類(車いす)
(3)商標「櫻」
特許庁の商標公報より引用
- 商標登録第129467号
- 権利者:サクラグローバルホールディング株式会社
- 出願日:1921年2月22日
- 登録日:1921年5月24日
- 指定商品:第5類(医療用腕輪)、第8類(ピンセット)、第9類(試験管、測定機械器具 等)、第10類(医療用機械器具 等)、第12類(車いす)
(2)と(3)は同じ権利者による登録。同一権利者であれば、商品やサービス(役務)が同じ・類似でも、同一・類似する名称の商標を複数登録できる場合があります。
(4)商標「SAKURA」
特許庁の商標公報より引用
- 商標登録第464603号
- 権利者:株式会社サクラクレパス
- 出願日:1951年3月5日
- 登録日:1955年4月19日
- 指定商品:第2類(絵の具、顔料 等)、第3類(化粧用顔料)、第14類(金粉、銀粉)
(5)商標「さくら」
- 商標登録第2412361号
- 権利者:サッポロビール株式会社
- 出願日:1986年3月11日
- 登録日:1986年3月11日
- 指定商品:第32類(ビール、ビール風味の麦芽発泡酒)、第33類(洋酒、果実酒 等)
このほかにも、アルファベットやマークなど多彩な形態で「さくら」関連の商標が存在します。興味がある方は、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で検索してみてください。
4. まとめ
「さくら」の登録例がこんなにあるなんて、少し意外に感じられたかもしれません。
日本人に愛される花だからこそ、商標として使いたいという思いが集まった結果といえるでしょう。
ただし、すでに登録されている「さくら」と同一または類似する商品・サービスの区分では、同じ名称やロゴを取得するのは難しくなります。一方で、特徴的なネーミングやデザインを組み合わせることで、登録の可能性が大きく広がるケースもあります。
もし「さくら」にまつわる商標を考えているなら、一度特許情報プラットフォームを確認しながら、オリジナル性のある名称やロゴを検討してみるのも良いかもしれませんね。
商標登録のヒント
- 既に登録されていないか、まずは検索
- 似ている名称があれば、区分や表記を変えてみる
- 覚えやすくかつ独自性を出すことで登録の可能性アップ
「商標登録ってどんな流れ?」「似ている名前が不安…」など、気になることがあれば、専門家へ相談するのがおすすめです。大切なネーミングやブランドを守る一歩として、ぜひ検討してみてください。
皆さんも春のさくらを楽しみつつ、ちょっとした商標の世界に思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。SNSでシェアして、周りの方にもぜひ教えてあげてくださいね。
ファーイースト国際特許事務所所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247