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登録商標の消滅危機!?「梅ケ枝餅」商標法違反事件の重要ポイント(その2)

前回の記事では、「梅ケ枝餅」の表示をめぐって商標法違反で逮捕された事件を取り上げました。詳しい経緯は「梅ケ枝餅」商標法違反事件のポイントその1をご覧ください。

今回は、報道に登場した「桜ケ枝餅」の登録と、商標法50条、51条、53条の取消審判を確認します。登録商標を持っていることと、実際に使った表示が適法であることは別の問題です。

1.事件と「桜ケ枝餅」の登録

当時の新聞は、逮捕された男性が「桜ケ枝餅」に関係する商標登録を持ちながら、商品を「梅ケ枝餅」として販売していたと報じています。

(商標権を侵害した)男は類似品を「桜ケ枝餅」と商標登録しながら、実際には「梅ケ枝餅」として販売していた…。崩し文字を使っていて「崩し文字が商標登録されているとは知らなかった」と容疑を否認しているという。
西日本新聞 2018年4月12日付

2018年4月20日に特許情報プラットフォームで確認した「桜ケ枝餅」の登録情報は、次の内容でした。現在の権利状況を調べる場合は、J-PlatPatで登録番号から最新の経過情報を確認してください。

桜ケ枝餅の登録商標
特許庁の商標公報より引用

  • 商標登録第4660726号
  • 権利者:福岡県西部移動商業協同組合
  • 出願日:2002年4月25日
  • 登録日:2003年4月11日
  • 指定商品:第30類「餅」

報道された男性と商標権者との関係は、記事の情報だけでは確認できません。そのため、男性がこの商標を使える立場だったかどうかは分けて考えます。

2.登録商標を持っていても別の商標を自由には使えない

「梅」と「桜」の似ている字体

草書体では「梅」と「桜」の形が近く見えることがあります。ただし、商標の類否は一文字の形だけで決まりません。外観、称呼、観念に加え、指定商品・指定役務の関係も含めて判断します。

自分が「桜ケ枝餅」の商標権を持っていたとしても、その権利から「梅ケ枝餅」を使う権限が生まれるわけではありません。商標権の効力は、登録された商標と指定商品・指定役務を基礎に決まります。他人の先行商標と抵触する使用であれば、自分の別の登録を根拠に正当化することはできません。

3.登録が併存する理由は個別に確認する

二つの登録が存在するという事実だけから、「梅」と「桜」は非類似だと断定することはできません。商標法4条1項11号の審査では、商標同士の類否と、指定商品・指定役務同士の類否の両方が問題になります。

同じ区分に属する商品でも非類似と扱われる場合があり、区分が違っても類似と扱われる場合があります。特許庁も、区分は類似関係を定めるものではなく、商品・役務の類否は類似商品・役務審査基準などに基づいて判断すると説明しています。

「餅」と「もち菓子」の関係や、当時の審査経過を正確に評価するには、双方の指定商品、類似群コード、出願経過を確認しなければなりません。古い公報の一部だけでは結論を出せません。

4.3年間使わないと問題になる不使用取消審判

商標法50条は、商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれも、継続して3年以上、日本国内で登録商標を指定商品・指定役務に使用していない場合に、何人も取消審判を請求できると定めています。

請求を受けた側は、原則として審判請求の登録前3年以内に日本国内で使用した事実を証明します。正当な理由がある場合を除き、立証できなければ請求対象となった指定商品・指定役務の登録が取り消されます。

これは「商標を使わなかったことへの罰」ではありません。使われていない登録を審判によって整理し、第三者の商標選択の余地を確保する制度です。また、実際に使った表示が登録商標と社会通念上同一といえるか、使用した商品が指定商品の範囲に入るかは、証拠に基づいて個別に判断されます。

5.登録商標を不正に使った場合の取消審判

商標権者自身の使用を対象とする51条

商標法51条は、商標権者が故意に登録商標と似た商標を使うなどして、商品の品質を誤認させたり、他人の業務と混同させたりした場合を対象とします。要件を満たせば、何人も取消審判を請求できます。

取消審決が確定すると、元の商標権者は、対象となる商品・役務について同一・類似の商標を5年間登録できません。単に登録商標と少し違う表示を使っただけで直ちに取消しになるわけではなく、故意と品質誤認または混同が要件です。

使用権者の使用を対象とする53条

専用使用権者や通常使用権者による使用で品質誤認または混同が生じた場合は、商標法53条が問題になります。商標権者が事実を知らず、相当の注意をしていたときは取消しを免れるため、ライセンス後の表示確認や監督も欠かせません。

報道された「桜ケ枝餅」の件に51条または53条が実際に適用されたかどうかは、報道内容だけでは断定できません。商標権者との関係、使用した表示、故意、混同などの具体的事実の確認が前提です。

6.商標を維持するための実務とよくある質問

登録後は、商標、使用商品、使用者、使用時期が分かる資料を保存してください。商品写真、包装、カタログ、ウェブページ、請求書などを日付とともに残すと、不使用取消審判を請求された際の立証に役立ちます。登録商標から表示を変更する場合や、他社に使用を許諾する場合は、権利範囲と混同のおそれを事前に確認します。

登録商標を持っていれば、似た名前も自由に使えますか?

自由に使えるとは限りません。自分の登録商標の権利範囲と、実際に使う表示が他人の商標権に抵触しないかを別々に確認します。

3年間使わなければ自動的に商標権が消えますか?

自動的には消えません。第三者から不使用取消審判を請求され、取消審決が確定した場合に、請求対象の登録が取り消されます。

少しデザインを変えて使っても使用証拠になりますか?

登録商標と社会通念上同一と認められる範囲なら使用と扱われる場合があります。ただし、変更の程度や商標の特徴によって結論が変わるため、登録した形で使うのが安全です。

ライセンシーが表示を変えた場合、商標権者にも影響しますか?

品質誤認や他人の業務との混同を生じさせれば、53条の取消審判が問題になる場合があります。使用ルールを契約で定め、実際の表示を継続して確認してください。

古い登録情報はどこで確認できますか?

J-PlatPatで登録番号を検索し、権利状況、指定商品・指定役務、経過情報を確認できます。重要な判断では商標原簿も確認します。

参考資料

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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