索 引
パリ2024パラリンピックで日本男子代表が8位入賞を果たし、女子日本代表が世界ランキング1位に輝くなど、ブラインドサッカーへの注目が高まっています。この競技は単なるスポーツの枠を超え、企業研修や学校教育にも広がりを見せています。本記事では、ブラインドサッカーの歴史から最新の動向、そして商標としての側面まで、2025年の最新情報をお届けします。
1. ブラインドサッカーの歩みと現在地
ブラインドサッカーは1980年代に南米で発展し、1998年に初の世界選手権が開催されました。その後、2004年のアテネ大会でパラリンピック正式競技となり、世界的な広がりを見せています。
日本では2001年に国際ルールが導入され、翌2002年に日本視覚障害者サッカー協会が設立されました。
2010年には現在の日本ブラインドサッカー協会へと改称し、2015年にはNPO法人化を果たしています。この間、国内大会の整備が進み、競技の普及基盤が固まってきました。
パリ2024パラリンピックでは、日本男子代表が予選で善戦し、最終的に8位という結果を残しました。金メダルは地元フランスが獲得し、PKでアルゼンチンを破るという劇的な展開でした。ブラジルは銅メダルにとどまり、連覇の夢は途絶えました。
世界ランキングを見ると、2025年1月版のIBSAランキングで男子日本代表は3位、女子日本代表は1位という素晴らしい位置につけています。
特に男子代表は、2021年の東京大会5位、2023年世界選手権5位を経て、着実に上位へと駆け上がってきました。この躍進の背景には、企業との連携や最新技術の活用など、普及と強化の好循環が生まれていることが挙げられます。
2. 音と声で織りなす競技ルール
ブラインドサッカーは5人制で、フットサルをベースとしながらも、音と声の情報でプレーできるよう特別な規定が設けられています。
競技は38〜42メートル×20メートルのピッチで行われ、サイドには高さ約1メートルのフェンスが設置されています。このフェンスはボールアウトを防ぐとともに、選手が向きや距離感を把握する手がかりとなります。使用するボールは内部に金属プレートが仕込まれており、転がると音を発する特製球です。試合時間は20分ハーフのプレーイングタイムで行われます。
チーム構成は、フィールドプレーヤー4人とゴールキーパー1人の計5人です。フィールドプレーヤーは全盲(B1クラス)の選手で構成され、ゴールキーパーは晴眼者または弱視(B2/B3クラス)の選手が務めます。
選手を支える重要な存在として、三方向からのガイドシステムがあります。ゴールキーパーは自陣での守備指示を行い、監督は中盤での戦術指示を出します。そして敵陣ゴール裏にいるガイド(コーラー)は、シュートの距離や角度、タイミングを選手に伝える役割を担います。
安全面への配慮として「ボイ」というルールがあります。守備側の選手がボール保持者に近づく際は、スペイン語で「行く」を意味する「ボイ(Voy)」と声を出して自分の存在を知らせる必要があります。この声を発しないと「ノーボイ」という反則になり、相手チームにフリーキックが与えられます。
3. 観戦マナーが生み出す独特の魅力
ブラインドサッカーの観戦には独特のマナーがあります。プレー中は静かに見守ることが基本です。選手たちはボールの音、足音、そして仲間や指導者からの声を頼りにプレーしているため、観客の声援や物音は競技の妨げになってしまうのです。
しかし、ゴールが決まった瞬間やプレーが停止した時は、大きな拍手と歓声で選手たちを称えることができます。この緊張感のある静寂と、歓喜の瞬間のコントラストこそが、ブラインドサッカー観戦の醍醐味といえるでしょう。
4. 商標としての「ブラインドサッカー®」
特定非営利活動法人日本ブラインドサッカー協会(JBFA)は、競技名や普及プログラム名を商標として戦略的に保護・運用しています。
特許庁の商標公報・商標公開公報より引用
主な登録商標には「BLIND SOCCER/ブラインドサッカー」(第5086068号、第5893826号)、「ブラサカ」(第5900887号)、「スポ育」(第5564500号)、「JBFAロゴ」(第5955471号)などがあります。第5893826号は印刷物などの第16類、第5900887号はスポーツの興行・教授・セミナー等の第41類での登録となっています。
これらの商標について、報道目的や個人のSNSでの説明的使用は原則として問題ありません。しかし、広報用途や広告・販促物、体験会の受託など商業的利用を行う場合は、事前にJBFAへの申請が必要です。使用する際は「®」マークの表記や帰属の明記が求められます。
商標使用にあたっては、用語の省略、複数形への変更、造語との結合など、ブランドを希釈化する使い方は避けます。媒体やイベントで「ブラインドサッカー®」等を広告・販促目的で使用する際は、JBFAへ事前申請を行い、適切な帰属表示を行うことが重要です。
5. 企業研修から学校教育まで広がる普及活動
JBFAが展開する企業向け体験研修「OFF T!ME Biz」は、2024年度に89件、3,335名が参加しました。プログラム開始以来の累計は750件、29,792名に達しており、特に新入社員研修での採用が増加しています。
学校向けには「スポ育」プログラムを展開しており、パートナー企業とともに多様性やコミュニケーションを学ぶ機会を提供しています。こうした取り組みがメディア露出や競技人口の増加につながり、さらにスポンサー拡大、強化・普及投資へとつながる好循環を生み出しています。
6. 2028年ロサンゼルスへ向けて
LA28パラリンピックでは、男子ブラインドサッカーの実施が決定しています。女子については引き続き採用を働きかけている段階です(2025年6月時点のIPC発表とIBSA声明による)。
日本代表の国際舞台での躍進、国内での普及活動の広がり、そして商標を通じたブランド価値の向上。ブラインドサッカーは音と声で空間を可視化する独自のスポーツとして、今後さらなる発展が期待されています。観戦の際は静けさで選手たちへのリスペクトを示し、商標使用の際は適切な手続きを踏むこと。これらを理解することが、競技の価値と安全、そして普及を守ることにつながります。
ファーイースト国際特許事務所所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247
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参考情報
- 日本ブラインドサッカー協会 公式ルール解説ページ:[https://www.b-soccer.jp/blind_soccer/rule](https://www.b-soccer.jp/blind_soccer/rule)
- JBFA「登録商標の管理・運用について」:[https://www.b-soccer.jp/jbfa/rights](https://www.b-soccer.jp/jbfa/rights)
- IBSA世界ランキング(2025年1月版):[https://blindfootball.sport/wp-content/uploads/2025/01/2025-IBSA-Men%C2%B4s-Blind-Football.pdf](https://blindfootball.sport/wp-content/uploads/2025/01/2025-IBSA-Men%C2%B4s-Blind-Football.pdf)