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商標法の審判とは?


商標の出願が拒絶された、あるいは他人の登録商標が自社の事業の邪魔になっている。こうした場面で使うのが、特許庁の「審判」という手続です。裁判所ではなく特許庁で、審判官の合議体が判断します。

今回は、商標法に用意されている審判にどのような種類があり、どの場面で使うものなのかを弁理士がご紹介します。

1. 商標法の審判とは

商標の出願は、まず審査官が一人で審査します。その判断に納得できないときや、いったん登録された商標に問題があるときに、あらためて特許庁で審理を求める手続が審判です。審査官より経験を積んだ審判官が複数人の合議体をつくり、当事者の主張と証拠をもとに結論を出します。

商標の登録の可否は、指定商品や指定役務の内容、商標どうしの紛らわしさ、市場での知名度など、専門的な判断を必要とします。そのため、いきなり裁判所に持ち込むのではなく、まず特許庁の中で判断をやり直す仕組みが置かれています。

審判の結論は「審決」と呼ばれます。審決にも不服がある場合には、知的財産高等裁判所へ審決の取消しを求めて訴えることになります。

商標法の審判は、大きく次の3つに分けて考えると見通しがよくなります。

  • 登録できなかったときに、その判断を争う審判
  • 登録された商標について、登録そのものが誤りだったと争う審判
  • 登録は正しかったものの、その後の使われ方を理由に取り消す審判

2. 登録できなかったときに使う審判

拒絶査定不服審判

審査官が最終的に登録を認めない判断を下したものが拒絶査定です。この判断に不服があるときに請求するのが拒絶査定不服審判で、拒絶査定の謄本が届いた日から3か月以内に請求します(商標法44条)。

審判では、拒絶の理由として示された条文の当てはめが妥当かどうかをあらためて審理します。先に登録された他人の商標と紛らわしいと判断された事案では、商標の外観・称呼・観念の違いや、実際の取引の実情を示す資料が判断を左右します。

審判の請求と同時に指定商品・指定役務を減らす補正を行い、他人の商標と衝突する部分を外して登録に近づける方法もあります。どこまで削るかは、事業でこれから使う範囲を見ながら決めます。

補正却下決定不服審判

出願の内容を後から直す手続が補正です。ただし、商標そのものを別のものに変えたり、指定商品を出願時の範囲から広げたりする補正は、出願の要旨を変えるものとして審査官が却下します(商標法16条の2)。

この却下の決定に不服があるときに請求するのが補正却下決定不服審判で、決定の謄本が届いた日から3か月以内に請求します(同法45条)。要旨を変えるものではない、という点を主張して争う手続です。

3. 登録された商標を争う審判

無効審判

本来なら拒絶されるべき出願が、判断の誤りによって登録に至ることがあります。この登録を後からなかったことにする手続が無効審判です(商標法46条)。

請求できるのは利害関係人に限られます。自社の商標に対して権利行使を受けている、あるいは自社の出願が相手の登録商標を理由に拒絶された、といった立場の方が典型例です。

無効審決が確定すると、その商標権は初めから存在しなかったものとして扱われます。相手の商標権を前提に組み立てられていた警告や請求は、根拠を失います。

ただし、無効理由の多くは設定登録の日から5年を過ぎると主張できなくなります(除斥期間)。公序良俗に反する商標や、不正の目的で登録された商標のように、期間の制限なく争えるものもありますが、争うつもりがあるなら早い段階で検討したほうが選択肢は広く残ります。

4. 使われ方を理由に取り消す審判

登録それ自体に誤りがなくても、その後の使われ方によっては商標権が取り消されます。取消審判と呼ばれる一群の手続です。

不使用取消審判

登録商標が、継続して3年以上、日本国内で指定商品・指定役務に使われていない場合、何人もその取消しを請求できます(商標法50条)。商標権者だけでなく、使用権者による使用も対象に含めて判断します。

この審判で特徴的なのは、使っていたことの立証を商標権者の側が求められる点です。請求された側は、商品の写真、カタログ、納品書、広告など、使用の時期と対象が分かる資料を示すことになります。

取消しが確定すると、商標権は審判請求の登録がされた日に消滅したものとして扱われます。使いたい商標が他人の登録商標にふさがれているとき、相手が実際には使っていないのであれば、この審判が事業を前に進める手段になります。

不正使用取消審判

商標権者が故意に、登録商標を少し変えた形で使ったり、登録した範囲に似た商品・サービスに使ったりして、他人の商品・サービスと混同を生じさせた場合、何人もその取消しを請求できます(同法51条)。

商標権のうち、独占して使える範囲は登録した商標と指定商品・指定役務そのものです。それに似た範囲については、他人の使用を止められる効力があるにとどまります。この似た範囲を自分の側が使い込み、他社の商品と紛らわしい状態をつくり出す行為が問題になります。

取消しが確定すると、その商標権は将来に向かって消滅します。取り消された者は、その後5年間、同一または類似の商標について登録を受けられません。

使用権者の不正使用取消審判

ライセンスを受けた使用権者が、混同を生じさせるような使い方をした場合にも、商標権は取り消されます(同法53条)。使ったのはライセンシーでも、責任は商標権者に向かうという構造です。

ただし、商標権者がその事実を知らず、かつ相当の注意をしていたときは取り消されません。ライセンス契約で使用の態様を定め、実際の使われ方を定期的に確認しておくことが、この「相当の注意」を示す備えになります。

移転による混同の取消審判

商標権は、指定商品・指定役務ごとに分割して他人へ移転できます。その結果、似た関係にある商標権が別々の会社に分かれて持たれる状態が生まれます。

分かれた一方が、不正競争の目的で自分の商標を使い、他方の商品・サービスと混同を生じさせた場合、他方の権利者はその商標権の取消しを請求できます(同法52条の2)。分割移転を認めつつ、市場が混乱しないよう歯止めをかける規定です。

代理人等による不当登録の取消審判

外国で商標権を持つ方の代理店や代表者が、本人の承諾を得ないまま日本で同じ商標を出願し、登録してしまう事例があります。この場合、本来の権利者は取消しを請求できます(同法53条の2)。パリ条約の規定を国内法に取り込んだ手続で、請求できる期間は設定登録の日から5年以内です。

海外ブランドを日本で扱う際に、代理店の側が自社名義で商標を登録しているケースは実務でも見かけます。取引を始める前に、日本での商標の名義をどちらが持つのかを契約で決めておくと、この種の争いを避けられます。

5. よくある質問

拒絶査定を受けたら、審判を請求するしかないのですか?

審判を請求せず、内容を見直して出願し直す方法もあります。拒絶の理由が覆せる見込みがあるかどうか、その商標をどうしても使いたいのかによって判断が変わります。査定の謄本が届いてからの期限は3か月ですので、早めにご相談ください。

登録異議申立てと無効審判は、どこが違うのですか?

登録異議申立ては、登録公報が発行された日から2か月以内であれば誰でも申し立てられる手続で、特許庁が登録の当否を見直します。無効審判は利害関係人が請求する当事者どうしの争いで、時期の制限は除斥期間の範囲で異なります。まず異議、期間を過ぎていれば無効審判、という使い分けになります。

3年使っていない商標は、放っておいても消えますか?

自動では消えません。誰かが不使用取消審判を請求し、審決が確定して初めて商標権が消滅します。逆にいえば、自社の登録商標を使っていない期間があっても、請求されなければ権利は残ります。

使いたい商標が他人の登録商標にふさがれています。打つ手はありますか?

相手が実際に使っていないのであれば不使用取消審判、登録自体に問題があるなら無効審判が候補になります。権利を譲ってもらう、使用の許諾を受けるといった交渉も選択肢です。どの方法が現実的かは、相手の使用状況と登録の内容を調べたうえで判断します。

審判は自分で請求できますか?

手続そのものは本人でも行えます。ただし審判は、主張を条文に結びつけ、証拠でそれを支える作業です。相手方がいる審判では、こちらの提出した証拠がそのまま争点になります。結果が事業に響く案件では、弁理士にご依頼いただくほうが確実です。

参考:特許庁「商標制度の概要」特許庁「商標制度に関するよくある質問」

ファーイースト国際特許事務所
弁理士 秋和 勝志
03-6667-0247

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