会社を立ち上げる際、名前の選択はその先のビジネスに大きく影響します。その名前が他の事業者によって商標登録されていると、将来的に予期せぬ問題が生じることがあります。
商標法には商標権の射程内に入らない事例の一つとして会社名が規定されています(商標法第26条)。このため、会社名は商標登録しなくてもよい、と考えている方も多いと思います。
けれども、この規定にはひっかけがあって、「普通の方法で表示される商標」との制限がついています。
通常のフォントで他の文字と同じ大きさでベタ打ちする表示の場合には権利に入らない、といっているだけで、そうではない場合にはこの例外規定が働かないです。
つまり会社名の商標については、普通の方法で表示しない場合、例えばデザインを加えた場合などは商標権の射程範囲内に入ることになります。
加えて、会社設立時の手続きでは、選んだ名前が他者の商標に触れるかどうかは問われません。
従って、他者の商標権を確認せずに会社設立が進んでしまうことが珍しくありません。
問題は、他者の商標権を侵害してしまうと、その使用を中止するよう求められる可能性があることです。
確かに、実際のケースでは同じ名前でも、業務内容によっては問題がないケースも存在します。
例として、外部に名前が露出しない内部専用の関連会社の場合、実質的に商標権の問題は発生しません。しかし、会社名を積極的に使って商品を展開したり、宣伝活動を行うと、他の商標権保有者との間で紛争が起こり得ます。
近所で同じ名前の会社が出現し、同じビジネスを展開していたら、あなたならどうしますか? もし自分が商標権を持っていれば、侵害を止めるよう求めるでしょう。
反対に、他社から「我々の商標を使用しないでください」と言われたらどうでしょう? 予期せぬトラブルを避けるためにも、会社設立前に商標権のチェックを行うことが賢明です。
商標登録は、ビジネスを守り、企業のアイデンティティを確立する重要なステップです。トラブルを未然に防ぐために、事前の準備と確認作業が不可欠です。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
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