東京五輪商標の類似疑惑の件でテレ朝「モーニングバード」に生出演
本日2015年7月31日(金)の8:15からテレ朝の「モーニングバード」に生出演して、東京五輪商標がベルギーの劇場ロゴに似ている問題について解説しました。
先週発表された東京オリンピックのエンブレムマークですが、このデザインがベルギーの劇場ロゴに似ているとの点が指摘されて問題になっています。
また東京五輪商標の色の使い方がスペインのデザイン事務所の作った日本の震災復興関係マークの色の使い方に似ている点も話題を呼んでいます。
これらの点について国際的な商標の専門家として問題の核心について生放送の番組で解説しました。
1)ベルギー側は商標権で東京五輪商標の使用差止ができるのか
ベルギーの劇場に使用されているロゴを作成したドビ氏はインタビューで裁判も辞さない意向を示しています。
しかし、仮に商標権により東京五輪商標の使用中止を求めるとすれば、実際にドビ氏側が商標権を保有している必要があります。
国際商標登録制度はありますが、現在存在している制度はすべて手続きの統一化を図ったものであり、全世界に効力のおよぶ商標権の国際登録の制度は未だ存在しません。ですので商標権の場合は使用中止を求める国ごとに登録の手続きを受けてそれぞれの国において商標権を保有している必要があります。
現在までのところ調べた範囲では、ドビ氏側がご自身のマークについて「オリンピックの競技」を含む権利範囲について商標権を保有しているとの情報は確認できていません。
仮にベルギー側が日本で商標権を保有していないのであれば、根拠となる権利がないのですから、商標権に基づく差止請求が日本で認められないことはいうまでもありません。
2)ベルギー側は著作権で東京五輪商標の使用差止ができるのか
次に仮にベルギーのドビ氏の劇場ロゴが著作物に該当するとして、著作権侵害で東京オリンピックのマークの使用中止を求めることができるか、といえば、これも簡単ではないです。
東京五輪エンブレムの創作者である佐野さんがこのロゴを考案する際にベルギー側の劇場ロゴを仮にも盗用した事実があれば別ですが、その様な事実が確認できない場合、東京五輪エンブレムの創作者がベルギー側のものを盗用したことはベルギー側が証明する必要があります。
ところが他人が盗用したことを立証することは容易ではありません。裁判官がなるほどと納得する証拠を東京五輪エンブレムの創作者側に突きつけることができない限り、著作権侵害訴訟でベルギー側が勝つ見込みはかなり低いと私は考えます。
番組内でも指摘しましたが、そもそもオリンピックの東京組織委員会側の国際商標登録の手続き中に東京五輪エンブレムの発表を行ったのは勇み足ではなかったのか、というのが私の意見です。
東京五輪エンブレムが既に存在するデザインと類似するかどうかは、当事者の間で問題になった場合には互いの言い分が水掛論に終止しがちです。
だからこそ、東京組織委員会は今回の東京五輪エンブレムについて特許庁の審査の結論を待って東京五輪エンブレムの発表を行えばよかったのです。
特許庁の審査に合格した場合、一定の手続きを経て商標権が発生しますが、日本の商標法の場合は、商標権発生後の一定期間、特許庁の商標登録の是非を争うことのできる異議申立制度等が設けられています。
もし東京五輪エンブレムが他人の権利に抵触するものであったなら特許庁はそもそもそのロゴを審査に合格させません。
ベルギー側も特許庁の判断を見てその判断が誤っていると考えたなら特許庁に異議申立をすることができ、そこで特許庁の判断の是非を争うことができます。
商標ロゴマークの当事者以外の第三者である特許庁の判断を求めることにより当事者同士の不毛な争いを防ぐこともできます。
既存の制度を利用することにより、きちんと段階を踏んで必要な手続きを完了させて権利を確認する手続きを済ませておけば、今回のような騒ぎには発展しなかったのではないでしょうか。
対応が後手に回っているのは残念に思います。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247