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傘の商標登録でバッグの権利が漏れる?2020年以降の増加と取り直し費用

1. 傘の商標登録で、バッグの権利を外していませんか

傘のブランド名を第18類で商標登録した。それだけでは、同じ名前のバッグまで権利を取ったことにはなりません。願書の指定商品が「傘」だけなら、「かばん類,袋物」は別に確かめる必要があります。区分番号が同じでも、権利の範囲は同じではないからです。

最初の願書に第18類の「かばん類,袋物」も併記していれば、特許庁に払う出願料・登録料の追加は0円です。後から別出願で取り直すと、1区分・10年分一括納付の場合、出願料12,000円と登録料32,900円で合計44,900円。それに依頼先の手数料がかかります。最初に同じ費用で取れた範囲を外していないか、登録証の「第18類」だけで安心せず、指定商品の欄を見てください。

当事務所の集計では、傘を指定しながらかばん類を含めない登録が2020年以降に増えています。私はその背景に、権利を狭く絞って審査を通す出願実務の広がりがあると見ています。登録が早く済むことと、依頼者の商標権に漏れがないことは、別の問題です。

2. 第18類の「傘」と「かばん類,袋物」は別の指定商品

商標登録では、ブランド名などの商標と、それを使う商品・サービスを組み合わせて申請します。商標法6条の区分は分類の枠であり、同条3項も、区分が商品の類似範囲を定めるものではないとしています。第18類を選んだだけで、その区分に属する商品すべてを指定したことにはなりません。

特許庁の分類では、「傘」の類似群コードは22B01、「かばん類,袋物」は21C01です。スーツケース、トランク、ランドセル、リュックサック、ハンドバッグなどのかばん類に加え、財布や名刺入れなどの袋物も、願書の表示と照合します。元の指定が「傘」だけなら、これらが自動的に含まれると考えないでください。

たとえば傘のブランドでバッグやポーチを販売する、他社にブランドの使用を許諾する、といった展開です。将来、自分で作る場合だけでなく、ライセンスを受けた事業者が商品化する場合もあります。商標権は事業で使う資産なので、目の前の傘1商品だけで範囲を決めると、こうした選択肢を狭めます。

同じ第18類であれば、商品の表示を増やすだけで特許庁料金は増えません。出願前に、傘に加えてかばん類・袋物を確保できるかを代理人に確認するのが当事務所の基本方針です。審査上の個別事情があるなら、その事情と外す範囲を説明してもらうべきです。

3. 2020年以降に増えた、かばん類を含まない登録

各年度における商標権のうち、権利範囲に傘を含むがかばん類の権利が漏れている商標権数の変化を示すグラフ

上のグラフは、各年度の商標権のうち、権利範囲に傘を含む一方でかばん類を含まない商標権数の変化を示したものです。2010年〜2024年の登録情報を見た当事務所の集計では、2019年以降の件数は次のとおりでした。

  • 2019年:302件
  • 2020年:536件
  • 2021年:755件
  • 2022年:853件(ピーク)
  • 2023年:679件
  • 2024年:679件

2020年に536件へ増え、2022年には853件となっています。その後も679件と、2019年の302件を大きく上回ります。傘を扱うブランドがかばん類の権利を外したまま登録する出願の増加を、当事務所は権利漏れの問題として取り上げています。

この件数は、指定商品の組み合わせを調べた当事務所の集計です。同じ費用で併記できる商品を外す実務が増えている以上、その理由は依頼者に説明されるべきです。

4. なぜ2020年を境に、権利を狭く絞る出願が増えたのか

私は、権利範囲を狭く絞って審査を通す実務が業界に広がったことが、この変化の背景にあると見ています。依頼者には「早く登録できた」「拒絶理由への対応をせずに済んだ」という分かりやすい結果が残ります。受託側にも、拒絶対応の手間を抑え、願書を大量に処理できる都合があります。

登録に至らなければ費用を回収しにくい受託の仕組みでは、権利を広く検討するより、審査を通すことが優先されがちです。経験の浅い担当者でも処理を進められるよう、入力された商品だけを機械的に指定する運用も、同じ方向に働きます。

専門家が願書の内容を見れば、「傘だけで足りますか。かばん類や袋物を外す理由はありますか」と確認する場面です。依頼者が将来の事業を説明しきれなかったとしても、どの商品を併記できるかを示し、外すならその不利益まで伝えるのが、依頼を受けた専門家の仕事です。

ひな型の入力だけで出願が終わっていないか。代理人として記名された本人が指定商品の範囲を確認したか。知っていて案内しないのか、担当者が気づいていないのかによって問題は違いますが、依頼者が確認すべき点は共通しています。自分の商標権をどこまで取る設計になっているのか、説明を受けてください。

5. 権利を取り直す費用と、競合に先を越される問題

「登録後にバッグを追加すればよい」と考えていると、予定が狂います。指定商品の範囲を広げる補正は認められず、傘だけの願書に後からかばん類の権利を継ぎ足すことはできません。漏れた範囲は別出願で取り直すことになります。

1区分の出願料は3,400円+8,600円=12,000円、10年分一括の登録料は32,900円なので、登録までの特許庁料金は44,900円です。これは別出願が登録される場合の額で、代理人の調査・出願・拒絶対応などの手数料は含みません。分割納付を選ぶ場合も計算が変わります。

登録が2件に分かれれば、更新期限や権利者の住所・名称の変更、移転などをそれぞれ管理します。最初から1件にまとめていればなかった手間と費用が、権利が続く限りかかります。

その間に他人が同じような名前をかばん類で出願していれば、費用を払っても新しい出願は登録されません。傘の登録だけでは、バッグの問題は解決できません。

ライセンスや商標権の売却を考えるときも、契約で渡せる権利がどこまであるかが問われます。同じ料金で併記できた商品を外した結果、後で買い足しの費用を払い、それでも権利を取れない事態が起きます。本当に最初の願書からかばん類を外してよいのか、提出前に判断する話です。

6. 不使用取消審判を心配して、最初から外すべきか

「バッグはまだ販売していないので、不使用取消審判が心配だ」という説明を受けることがあります。しかし、不使用取消審判は指定商品・指定役務ごとに請求される手続きです。バッグを加えても、使っている傘の登録はそのまま残ります。

商標法50条では、継続して3年以上日本国内で登録商標が使用されていない場合、取消しの対象になります。請求された範囲に傘とかばん類の両方が含まれているなら、そのうち傘について、請求の登録前3年以内の所定の使用を証明して請求に対抗できます。使用した主体や商標の同一性などの要件もあるため、商品写真、取引書類、カタログを日付とともに保存しておきます。

相手から攻撃されたなら、使用証拠を出して守るのは通常の対応です。請求の対象が使っていないかばん類だけなら、放置すればよいだけです。失うのは請求された部分だけで、使っている傘の登録はそのまま残ります。使っていない商品を失っても、事業に実害はありません。反論しなければ代理人費用もかからず、追加の費用もありません。

まず請求書で対象を確認し、使っている商品が含まれていれば証拠で守り、未使用のかばん類だけなら放置する。この区別を伝えずに「不使用取消が心配だからかばん類を外しましょう」と結論づける説明は、権利を狭くして審査を通す側の都合です。

7. 提出前に、代理人本人へ確認すること

願書の最終版を受け取り、できれば口頭でも、次の3点を代理人本人に尋ねてください。やりとりの結論は書面にも残しておくと、提出した内容と照合できます。

  • 第18類で「傘」だけになっていないか。「かばん類,袋物」を外すなら、どのような個別事情があるのか。
  • 後から範囲を追加できないこと、別出願の特許庁料金44,900円と手数料、更新などの管理が増えることを説明したか。
  • 代理人として記名された弁理士等が最終版を確認し、将来の商品展開やライセンスまで考えて指定商品を検討したか。

登録の早さや見積書の総額だけでは、権利範囲の違いは分かりません。「この金額でどの権利を取るのか」を願書と対照して確認してください。説明がないまま提出を急ぐなら、まずその説明を求める場面です。

当事務所では、実務10年以上の弁理士・弁護士がお客さまを直接担当します。出願前の商標と指定商品の確認は無料調査のお申込みから、費用の内訳は商標登録の費用からご覧いただけます。

8. 傘とかばん類の商標登録についてよくある質問

Q1. 第18類で登録すれば、その区分の商品はすべて守れますか?

いいえ。区分は分類の枠です。指定商品の表示と登録商標によって権利範囲を確認します。「傘」だけの指定では、「かばん類,袋物」は権利範囲に入りません。

Q2. 傘とかばん類を一緒に指定すると、特許庁料金は増えますか?

同じ第18類だけで出願するなら、商品を併記することによる出願料・登録料の追加はありません。依頼先の手数料は契約を確認してください。

Q3. かばん類を後から取り直すと、いくらかかりますか?

1区分・10年分一括納付で登録に至る場合、特許庁料金は出願料12,000円と登録料32,900円、合計44,900円です。代理人の手数料などは別にかかります。

Q4. かばん類だけに不使用取消審判を請求されると、傘も消えますか?

消えません。請求の対象がかばん類だけなら、傘はその請求で取り消されません。使っていないかばん類だけへの請求は放置すればその部分が消えるだけで、実害も追加費用もありません。

Q5. すでに傘だけで登録している場合はどうしますか?

登録の指定商品、かばん類についての他人の出願・登録、予定する商品展開を確認します。追加出願で取れるかを調査し、権利のない範囲をそのままにするかどうかを検討します。

参考資料

特許庁「産業財産権関係料金一覧」「商品区分解説 第18類」「不使用による商標登録取消審判Q&A」、商標法6条・16条の2・25条・37条・50条。件数とグラフは当事務所の既掲載集計(2010年〜2024年)によります。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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