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「モンシュシュ」商標権侵害事件とは?大阪高裁の5140万円判決を解説

洋菓子ブランド「モンシュシュ」をめぐる商標権侵害訴訟で、大阪高等裁判所は2013年3月7日、株式会社Mon cher(旧商号・株式会社モンシュシュ)に5140万8555円の支払いを命じました。商標権者はゴンチャロフ製菓株式会社です。

この判決は、店舗の看板や屋号による表示、商標の類似、著名な略称の抗弁、権利濫用、消滅時効、使用料相当額の算定をまとめて判断しています。単に「同じ店名を使ったから約5100万円」とするのではなく、判決文に沿って範囲を確かめます。

1. モンシュシュ事件の結論

対象は、大阪高裁平成23年(ネ)第2238号、平成24年(ネ)第293号商標権侵害差止等請求控訴・同附帯控訴事件です。一審の大阪地裁は3562万2146円の損害賠償を認めました。大阪高裁では、商標権者が損害賠償を求める期間を2010年7月までから2012年3月までに拡張し、認容額が5140万8555円になりました。附帯控訴で求めた4億6266万5604円の全額が認められたわけではありません。

一方、差止めについては、会社側が2012年7月から屋号を「モンシェール」などに変更し、看板、レシート、ウェブサイトの表示も改めていたことから、従前の標章を今後使うおそれはないと判断されました。賠償責任が認められたことと、判決時点で差止めの必要があることは別の問題です。

高裁が扱った主な争点

  • 店舗看板等への標章の表示が、指定商品または類似する商品・役務についての使用か
  • 各標章と登録商標の外観、称呼、観念が類似するか
  • ドメイン名等と一緒に表示された標章が商標として機能するか
  • 商標法26条1項1号の著名な略称の表示に当たるか
  • 会社側が保有していた別の登録商標の使用として適法か
  • 損害の発生、権利濫用、消滅時効、損害額、差止めの必要性

同じ事件の中でも、標章ごとの表示態様や、使用した時期によって判断が分かれます。一つの結論だけを他の表示や期間に広げないよう読みます。

2. 店舗名でも商標の使用になる

会社側は、「モンシュシュ」などの表示は店舗名や営業表示であり、洋菓子には使っていないと主張しました。裁判所は、営業時間や電話番号と一緒に看板へ掲げられた表示であっても、洋菓子を販売する店舗と商品の出所を示す機能を果たすと判断しました。

屋号や会社名であれば必ず商標権の効力外になるわけではありません。どの表示が、どこに、どの大きさで掲げられ、取引者や需要者が商品・役務の出所として読み取るかを個別に見ます。侵害判断の基本は商標権侵害の基準も参照してください。

3. 類似・略称・先使用の判断

外観、称呼、観念を取引の実情と一緒に見る

裁判所は、問題となった複数の標章と登録商標を比べ、「モンシュシュ」という称呼が同一かほぼ同一で、外観の違いも文字装飾の範囲にとどまり、異なる観念も生じないとして類似を認めました。需要者が広く一般消費者であることも判断の背景です。

既に有名だったという主張だけでは足りない

会社側は、商標法26条1項1号の「著名な略称を普通に用いられる方法で表示する」場合に当たると争いました。裁判所は、問題となる時期の著名性が立証されていないことなどから、この抗弁を認めませんでした。

先使用権も「先に使った」だけで成立しません。商標法32条は、不正競争の目的がないこと、商標登録出願前から日本国内で使っていること、その結果、出願の際に自己の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者に広く認識されていることなどを要件にしています。

4. 5140万円の損害額はどう算定されたか

高裁が認めたのは、商標法38条3項に基づく使用料相当額の損害です。全売上げをそのまま基礎にしたのではなく、喫茶部門の売上げとロイヤリティ収入を控除した対象売上げを認定し、2009年10月までは0.3%、同年11月以降は0.2%の使用料率を乗じました。

商標権者は遅くとも2007年1月20日に損害と加害者を知っていたと認定され、2006年8月から12月分の使用料相当額は消滅時効により消滅したと判断されました。認容額は、売上げ、使用料率、対象期間、控除する収入、時効を認定した結果であり、商標権侵害全般に一律の率や金額が適用されるものではありません。

5. 商標紛争を避ける実務

  • 店名・商品名を決める前に、表記の一致だけでなく読み方や意味が近い先行商標を調べる。
  • 店舗名としての使用でも、看板、包装、広告、ドメインで出所を示すかを確認する。
  • 先使用を予定するのではなく、使用開始日、販売地域、売上げ、広告、報道などの資料を保存する。
  • 警告を受けたら、登録番号、商標、指定商品・指定役務、現在の権利状態と実際の使用態様を分けて照合する。
  • 表示変更の合意をした場合は、在庫、看板、ウェブページ、検索広告、ドメインの切替日と残存表示の扱いを決める。

6. よくある質問

Q1. 店舗名に登録商標と同じ言葉があると必ず侵害ですか?

必ずではありません。商標の類似、商品・役務の類似、表示の使われ方、商標法26条などを確かめます。

Q2. 会社名として登記できたなら商標も使えますか?

商業登記と商標権は別の制度です。商号を登記できても、商品や役務との関係で先行商標権を侵害する場合があります。

Q3. 自分が先に使っていれば継続できますか?

使用開始が早いだけでは足りません。商標法32条の周知性や不正競争目的の不存在など、要件と証拠の確認が要ります。

Q4. 5140万円は売上げ全額ですか?

違います。対象売上げから一部の収入を控除し、期間ごとに0.3%または0.2%の使用料率を乗じた使用料相当額です。

Q5. 商標を使うのをやめれば賠償もなくなりますか?

将来の差止めの必要性と、過去の使用による損害賠償責任は別です。表示を変更した後でも、変更前の侵害行為について賠償が命じられる場合があります。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

参考資料

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ファーイースト国際特許事務所|弁理士 平野泰弘

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