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ご当地キャラの商標登録、「着ぐるみ」で本当に大丈夫?


1. はじめに

商標登録の権利範囲を決めるとき、見落とされがちなポイントが「着ぐるみ」です。

ご当地キャラクターの商標登録を検討する際、「着ぐるみも権利範囲に含めるべき」と考える方がいます。しかし、ちょっと立ち止まって考えてみてください。

商標登録の権利範囲は、「自分が使うもの」ではなく「お客さまに提供する商品やサービス」を基準に設定するものです。「お客様に提供する商品やサービス」は願書に書く中身そのものであり、自分の業務全般を意味しません。着ぐるみを実際に販売する予定がなければ、着ぐるみの権利を取る意味はありません。

たとえば着ぐるみの製造・販売を全く予定していないのに「着ぐるみ」を登録に含めると、無駄なコストや手間がかかります。逆に、イベントやグッズ販売で実際に着ぐるみを扱う予定があるなら、しっかり権利範囲に含めるべきです。要は「本当に着ぐるみを売るのか?」を冷静に見極めるところから始まります。

2. 「着ぐるみ」を選ぶ前に考えるべきこと

商標登録でよくある失敗が、「自分が使うもの」と「お客さまに売るもの」を混同してしまう判断です。

ご当地キャラクターを使って地域おこしをする場合、実際にお客さまに販売するのは何でしょうか。お菓子、食品、文房具、ストラップ。こうした商品が中心のはずです。

「くまモン」を例にとると、くまモンを使った商品で見かけるのは食品や文房具であり、着ぐるみそのものを販売しているケースはほとんどありません。着ぐるみはイベントで「使うもの」であって、お客さまに「売るもの」ではないのです。

お客さまに提供するものを基準に選ぶ

商標登録の基本は、「お客さまに提供するもの」に基づいて権利範囲を設定することです。着ぐるみを実際に販売する予定がないのに登録してしまうと、本来の事業と関係のない権利を取得することになります。それは時間と費用の無駄になりかねません。

ご当地キャラを活用するなら、売る予定の商品や提供するサービスを正確に見極め、その内容に基づいて権利範囲を選びます。お菓子なら第30類、文房具なら第16類、被服なら第25類、イベント開催なら第41類など、提供物に合わせて区分を組み立てます。

着ぐるみは「使うもの」、売るためのものではない

着ぐるみの製造・販売を予定していないのに商標登録の権利範囲に含めると、余計な費用がかかるうえ、本当に必要な範囲を見落とすリスクが生じます。「着ぐるみも権利範囲に含めるべき」という発想は、商標法上の権利範囲の意味を取り違えています。

商標は、「地域のキャラクターを体現するツール」と、市場で取引される「商品・サービス」を分けて考えるのが肝心です。着ぐるみは前者、お菓子や文房具は後者。両者を混ぜずに権利を組み立てることが、ご当地キャラの商標戦略の出発点です。

3. 着ぐるみの商標権が急増している

入手情報に基づいて調査したところ、2020年頃から着ぐるみの商標権取得が突出して増加していることが分かりました。

着ぐるみ関連の商標権が2020年に急増
Fig.1 着ぐるみは売るものではなくて使うものなのに、何故か着ぐるみを売るための権利を含む商標権が急増中

この増加は、着ぐるみの販売事業が急増したことを意味しません。商標登録に不慣れな担当者が「着ぐるみも権利範囲に含めるべき」と判断し、本来不要な権利を取得している事例が増えていると見られます。

急増の背景にあるもの

実際に着ぐるみを個人で購入する人はごく少数のマニア層に限られます。仮に着ぐるみが市場に大量に流通すれば、偽キャラの出現を招き、地域ブランドの信頼性が損なわれかねません。通常、着ぐるみの商標権取得は不要というのが特許庁での実務上の判断です。

それでも着ぐるみの商標登録件数が伸びている背景には、機械的な権利範囲の組み立てがあります。事業内容を担当者が深く確認しないまま、定型的な区分セットで出願すると、本来不要な権利が混じってしまいます。

本来取得する必要のない権利範囲を登録すれば、費用と手間がかかるだけです。それだけならまだしも、「必要な範囲」を見落としている可能性が高い点が問題です。

4. 権利範囲の設定を誤るとどうなるか

お客さまが「ご当地キャラの商標権を取得したい。着ぐるみの権利も取るべきだ」と相談に来たとします。

経験のある弁理士であれば、「本当に着ぐるみを販売する予定がありますか?」と確認します。大半の場合、お客さま自身も「なぜ着ぐるみの販売について確認されるのか?」と不思議に思い、そこで初めて自分が取ろうとしている権利範囲を見直すきっかけが生まれます。

着ぐるみを売る予定がないと分かれば、本当に取得すべき範囲に修正できます。着ぐるみを活用して販売する食品やグッズ、開催するイベントなどの権利です。

軌道修正されないまま進むリスク

一方、担当者が「分かりました。着ぐるみですね」とそのまま手続きを進めてしまうと、本来守るべき範囲が漏れたまま登録されてしまいます。商標登録は、願書を提出した時点で権利範囲が固定されます。後から変更はできません。

たとえば着ぐるみ自体を販売する予定がないのに着ぐるみの商標権を取得しても、地域おこしで実際に販売する商品やイベントの権利が抜け落ちる事態になり得ます。これは、お客さまにとって取り返しのつかない損失です。

専門家の役割の重要性

商標登録は、専門知識と戦略的な判断が求められる手続きです。お客さまの目的や計画を深く理解し、適切な権利範囲を提案できる専門家の存在が、登録の成否を左右します。

担当者が定型処理に流されて確認を怠れば、商標登録が形だけのものになり、本来の目的を達成できなくなります。出願前に弁理士に「自分の事業計画と権利範囲のずれ」を必ず確認してもらってください。設定する範囲は「必要かつ適切」であるべきで、過不足のいずれもリスクになります。

5. まとめ

2020年頃を境に、権利範囲の設定に疑問がある商標登録が増えています。着ぐるみに限らず、他の分野でも権利範囲の誤りや漏れが見受けられます。

不要な権利を取得しているということは、その裏で本当に必要な権利を見落としている可能性があるということです。商標登録の権利範囲は、特許庁に願書を提出した時点で固定されます。後悔しないよう、出願前に「本当に着ぐるみを売るのか?」と「何を守りたいのか」を自問してください。

商標登録の際は、以下の点を確認してください。

  • その権利範囲は、実際にお客さまに提供する商品・サービスに対応しているか
  • 競合他社がどの範囲で商標を取得しているか調査したか
  • 使う予定のない範囲を含めていないか

2020年以降に取得された商標権の中には、初歩的な権利設定ミスが散見されます。人間が目を通していれば起きないはずの誤りです。機械的な処理に頼らず、弁理士に直接相談して出願内容を確認してもらうのが要所です。プロに任せる価値は、こうした初歩的な抜けを未然に防ぐ点にあります。

6. よくある質問

Q1. 着ぐるみの商標登録は全く不要ですか?

A1. 着ぐるみの製造・販売を実際に行う事業者であれば、登録する意味はあります。問題は、販売予定がないのに「とりあえず入れておこう」と登録するケースです。事業の実態に合わせて、必要・不要を切り分けてください。

Q2. 権利範囲を後から追加することはできますか?

A2. 商標登録の権利範囲は出願時に固定されます。後から範囲を広げたい場合は、新たに出願し直すしかありません。出願料・登録料が改めて発生するため、最初の出願で適切な範囲を押さえておくほうが結果的に経済的です。

Q3. ご当地キャラの商標登録で、一般的にどの区分となりますか?

A3. キャラクターを使って販売する商品の区分です。食品(第29類・第30類)、文房具(第16類)、被服(第25類)、イベント開催(第41類)など、実際の事業内容に応じて選びます。複数の区分にまたがる場合は、主力分野から優先順位を付けて出願するのが現実的です。

Q4. 着ぐるみだけの商標権を取得した後で、必要な区分が漏れていたと気付いたらどうすればいいですか?

A4. 漏れた区分について追加で出願します。ただし出願日は新しい日付になるため、その間に他社が同じ商標で先に出願していると、その出願で押さえることはできません。漏れに気付いた時点で速やかに弁理士に相談し、優先度の高い区分から出願し直してください。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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ファーイースト国際特許事務所|弁理士 平野泰弘

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