索 引
1. 写真にロゴが写っただけで、商標権侵害になるのか
撮影した写真に、他人の登録商標が写っていた。その写真をブログやSNSに載せてもよいのでしょうか。ロゴが写っているという理由だけで、直ちに商標権侵害になるわけではありません。写真をどこに置き、何のために使うかが問題になります。
商標は、誰の商品やサービスなのかを見分ける目印です。自分の商品を売るためのマークとして他人のロゴを使う場合と、街の様子や観戦の思い出を伝える写真にロゴが入る場合とでは、読者に伝わる意味が違います。
著作権法にも「写り込み」に関する規定がありますが、その規定だけで商標権の問題まで解決するわけではありません。ロゴには著作権が関係することもあるので、写真の使い方に応じて両方を分けて確認します。
2. 阪神タイガースのステッカーと甲子園の写真で考える
例えば、私が阪神タイガースのファンとして、自分の車に同球団のステッカーを貼る場面を考えます。私用車で応援の気持ちを表しているだけなら、自分の商品やサービスの出所を示す使用とは異なります。その行為だけで商標権侵害になるとは通常考えません。
これは、ステッカーを自作して販売したり、車を使う事業の看板としてロゴを掲げたりする場面とは別の話です。「車に貼ってよい」という説明を、そのまま商品の製造・販売や営業広告に広げることはできません。
私が甲子園で撮った写真に阪神タイガースのロゴが写っていて、観戦記としてブログに載せる場合も、写っただけで直ちに商標権侵害とはなりません。球場の様子を紹介する写真なのか、それとも自分のサービスが球団公認であるように見せる広告なのかを見ます。
同じ写真でも、ロゴだけを大きく切り出して販売ページの目立つ位置に置くと、掲載の意味が変わることがあります。写真の一部分だけでなく、見出し、説明文、商品名、購入ボタンまで含めた画面全体で判断してください。
3. 広告収入があるブログや、継続販売をしている場合
「個人のアカウントだから事業ではない」とは限りません。アフィリエイトで広告収入を得ているブログや、オークションなどで商品を継続して販売しているアカウントでは、事業との関係を確かめます。会社を設立しているかどうかだけでは決まりません。
ただし、広告収入があるという一点だけで、写真に写ったすべての商標が侵害になるわけでもありません。収益の有無と、そのロゴを何の目印として使っているかは別の確認事項です。
例えば、観戦記に広告が付いている場合と、球団ロゴを自分の販売する商品のブランド名のように使う場合は区別します。継続販売をしているなら、出品写真の中のロゴ、説明文、自分の店の表示を並べて、どの商品の出所を示しているのか確認します。
単に「事業ではない」と書き添えても、実際の販売や表示のしかたが変わるわけではありません。逆に、事業者が掲載した写真でも、背景の看板を自社の商標として使っていない場面はあります。
4. 商標権では、登録の範囲と表示の使い方を確認する
商標権の効力は、登録商標と指定商品・指定役務を基準に考えます。登録商標そのものだけでなく、商標と商品・役務の類似範囲も問題になります。「同じロゴがあるか」だけでは判断が足りません。
商標法26条1項6号は、需要者が誰の商品・サービスかを認識する態様で使用されていない商標を、商標権の効力が及ばない範囲に含めています。写真に写った表示が、掲載者の商品やサービスの目印として働いているのかが一つの判断点です。
確認するときは、相手の登録番号と指定商品・役務、写真を使う目的、ロゴの大きさと位置、周囲の文章をそろえます。ロゴの知名度や、公式・公認・提携先と受け取られる見せ方になっていないかも検討材料になります。
制度の説明は特許庁「商標権の効力」や商標制度に関するよくある質問で確認できます。登録商標の範囲と実際の表示を照らし合わせるので、写真だけ切り離して結論を出さないでください。
5. 著作権の写り込みと、写真を使う際の別の確認点
著作権法30条の2には、撮影などに伴って付随的に入る著作物の利用に関する規定があります。2012年の改正で設けられ、2020年の改正で対象範囲が広がりました。文化庁の令和2年改正の説明には、スクリーンショットや生配信なども含めた変更が示されています。
この規定は、他人の絵やロゴが写真に入れば何でも自由に使える、というものではありません。付随する著作物が軽微な部分であるか、利用が正当な範囲か、権利者の利益を不当に害しないかなどの条件を確認します。ロゴを主役として複製する場合に、背景への写り込みと同じ説明は使えません。
商標権の問題がない場合でも、ロゴ自体の著作権、写真に写る人の肖像やプライバシー、撮影施設やイベントの利用条件が残ることがあります。他人が撮った写真を使うなら、その写真の著作権も別に確認してください。
不安があるときは、元の写真と、実際に掲載するページの案を一緒に示してください。トリミングや説明文によって読者の受け取り方が変わるため、公開前の画面があると相談の内容も具体的になります。
6. よくある質問
Q1. 登録商標が写った写真は、必ず許可を取るのですか?
写ったという理由だけで、一律に商標権者の許可が必要になるわけではありません。観戦記や街の紹介としての掲載なのか、自分の商品・サービスの目印に使うのかを確認します。著作権や施設の利用条件は別に検討します。
Q2. ロゴをぼかせば、ほかの問題もなくなりますか?
ロゴを見えなくすれば、その表示による問題を減らせる場合はあります。ただし、人物の肖像や他人が撮った写真の著作権まで解決するわけではありません。
Q3. 個人ブログで広告収入があると、必ず侵害ですか?
広告収入だけで侵害とは決まりません。事業との関係を確認したうえで、写真中のロゴが何の商品・サービスの目印として使われているかを見ます。
Q4. 同じ写真をSNSから商品の広告に転用してもよいですか?
用途が変わるなら、表示の意味も確認し直してください。観戦の思い出を伝える投稿と、商品を販売する広告では、ロゴから公式な関係を連想させる程度が変わることがあります。
Q5. 相談には何を用意すればよいですか?
元の写真、掲載予定の画面、商品やサービスの説明、分かれば相手の登録番号をご用意ください。相談フォームから、どこにどのように掲載する予定かをお知らせください。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
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