写真の一部に他人の著作物が映り込んだ場合の扱いは
昨年の著作権法の改正により、著作物の取り扱いに変更がありました。この著作権の法律改正により写真の一部に他人の著作物が映り込んだ場合でも、直ちに著作権侵害の問題は発生しないことが明文化されました。
これに対し登録商標が写真に写り込んだ場合に、その写真をネット上で公開する行為は商標権の侵害になるのでしょうか。
商標権の侵害は、商標権者の許可なく登録商標を指定商品等の範囲で使用した場合等に発生します。
写真の扱い方次第で商標権侵害になる場合とならない場合がある
ところが登録商標を使用しても直ちに商標権侵害にならない場合があります。
このような場合の一例として、事業とは関係なく商標を使用する場合が挙げられます。
例えば私は阪神ファンです。私の車に阪神タイガースのステッカーを貼ったとしても、その行為は直ちに阪神の商標権の侵害になるとはいえません。
商標法上に規定する商標は事業として扱うものに限る、という限定があります。
私の車に阪神タイガースのステッカーを貼っても、それは事業として使用しているわけではなく、飽くまで家庭用に使用する車に使用しているだけですので、商標法に規定する商標の使用には該当しないのです。
また私が撮影した甲子園の写真に、たまたま阪神タイガースの登録商標であるロゴが映り込んでいたとします。
この写真を私がブログに掲載したとしても商標権の侵害になるとは直ちには言えません。
というのは、たまたま登録商標が映り込んでいる写真を使用したとしても、登録商標を指定商品や指定役務等に使用しているとは言えないからです。
つまり登録商標を使用した場合に商標権の侵害になるかどうかは、商売として使用しているのか、商標法上に規定する商標の使用に該当するのかといった、実際に使用されている商標の現状に大きく依存するのです。
映り込みにみせかけているだけで、実際には登録商標を商標権の範囲内で使用していると認定される場合もありますし、逆に、この場合は権利侵害といえる登録商標の使用とはいえないだろう、と判断される場合もあります。
このことから写真に登録商標が写り込んでいる場合、どのように映り込んでいるのか、映り込んでいる割合はどの程度か、はっきりと登録商標を認識することができるのか、また実際の商品や役務との関係でどのように使用されるのか等の観点から登録商標が映り込んだ写真の使用が商標権侵害に該当するかどうかを綿密に検討する必要があります。
実務上は商標権の侵害になるかどうかは微妙な判断を要する場合もありますので、最終的な判断は専門家とよく相談されることをお薦めします。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247