靴の権利が無料で得られるのに、あえて靴の権利を外して洋服の商標権を取得したのですか?

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索引

初めに

今週は、アパレル分野の商標権について権利取得漏れ問題を集中的にスクープしています。ここ1,2年で生じる商標権の権利範囲が異様に狭くなっていることから、もし素人さんが商標登録の手続きをしたなら、きっと権利漏れを起こすだろうと予測できる範囲を集中的に調べています。予想通り、ざくざく権利申請漏れ疑惑の商標権が見つかります。今回は洋服の商標権に靴の権利が含まれていない事件をスクープします。

(1)アパレルの商標権でなぜあえて無料で追加できる靴の権利を落として洋服の権利を取得する?

(A)本当に、洋服の商標権だけを取得して、無料で追加できる靴の権利をわざわざ外すのですか?

疑問に思うのですが、繁盛しているアパレルブランド店で靴を売っていないところはありますか? 特にアパレル店ではコーディネートを重視するため、服だけを専門に扱う店でも靴を置いているところは多いと思います。なぜならアパレルブランド店は服だけを販売するのではなくて、お客さまが最高に輝くスタイルファッションを提供するところだからです。 仮に服を専門に扱う店舗でも、今後、商売の展開次第では靴も将来販売したい、と考える方もいると思います。 商標登録の場合は、現時点で実際に販売している商品だけではなくて、将来販売することを具体的に考える商品についても商標権を取得することができます。 ただ、将来に渡って全く使用する予定のない商品についての商標権を取得する必要はありません。けれども具体的に今後靴を売る予定があるなら、洋服についての商標権を取得する際に、無料で、商標権を取得するのがよいです。 なぜなら、最初に洋服を権利範囲に含む商標権を取得する際に靴を合わせて権利範囲に入れても洋服の商標権を取得する額に追加料金は発生しません。これに対して、最初に洋服だけを権利範囲に含む商標権を取得した後に、また改めて靴を権利範囲に含む商標権を取得するためには、洋服を権利範囲に含む商標権と同額の費用を支払う必要があるからです。 本当に、洋服の商標権だけを取得して、無料で追加できる靴の権利をわざわざ外す必要はあるのでしょうか。わざわざ靴の権利を洋服の権利範囲に含めないのは、最初の洋服についての権利取得段階で靴の権利は未来永劫必要ない、と分かっている場合です。

(B)予想通り洋服を権利範囲に含む商標権に靴の権利が含まれていない

今週、集中的にアパレル分野の商標権が異様に狭くなっている点をスクープしてきました。洋服を権利範囲に含む商標権を取得する際に、下着、ベルト、靴下等が権利範囲から漏れています。これらのアイテムが漏れるなら、当然靴も権利から漏れ落ちていると予測できます。そしてその予測通り、やはり2020年になって靴の権利が含まれていない商標権が2020年になって急増しています。 下記の図1は、横軸に各年度を採り、縦軸にその年度に生じた商標権の数を累計したものです。商標権は、権利範囲に洋服を含むけれど、靴が含まれない案件について実際にカウントされています。

Fig.1 各年度別の商標権に洋服を含むが靴の権利が抜けている商標権数の推移を表したグラフ

各年度別の商標権に洋服を含むが靴の権利が抜けている商標権数の推移を表したグラフ ここまでの流れから予測できますが、やはり洋服を権利範囲に含む商標権について、靴が権利範囲から漏れています。 一つの仮説として、誰かが率先して権利範囲を狭くしている、というよりは、お客さまから言われたことしかしない素人さんが商標登録出願の願書を作成しているのではないか、と私は疑っています。 お客さまから「洋服についての商標権がほしい」といわれたなら、願書ひな型の商品を指定する欄に洋服を記入して終わる。それだけしかしない。 そして表向きは専門家がチェックしたことにして、誰も願書をチェックしないまま、願書を特許庁に提出してしまう。 もしこれが実際に行われているなら、図1のグラフの様に2020年になって洋服を権利範囲に含むけれど靴について権利漏れがある商標権が増えることは理解できます。 専門家が願書をチェックしたなら、洋服を権利範囲に含むけれども靴を権利範囲に含まないことが一撃で理解できますので、本当にこの内容でよいか、お客さまに確認します。そうすると権利申請漏れ案件が減少して、図1のグラフの形が各年度のばらつきの範囲内に落ち着いてくると思います。 それがないので、専門家が願書をみていないのでは、という疑問がでてきます。 私の勝手な推測では、宣伝広告でお客さまを大量に集めた後、下請けに業務を丸投げしているのではないか、ということです。その下請けも孫請けに仕事を丸投げして、を繰り返す結果、商標登録出願の代行業務の元請けも、何がなんだかよく分からない状態になっているのではないか。誰も願書をチェックしないままに下請けのバイト派遣部隊が作成した願書を特許庁に提出しているのではないか。私はこの様に疑っています。

(2)商標登録出願の目的が、お客さまの知的財産の価値最大化ではなく、業者利益最大化に変わってきているのでは

(A)特許庁に権利申請する商標登録出願の商品役務を絞り込むと業者が儲かる

実際にサービス業に従事する人ならすぐに理解してもらえると思うのですが、商標登録出願の代行出願業者ががっつり儲けるためには、実際の特許庁への商標登録出願業務の1件あたりの仕事の単価を上げるか、もしくは、商標登録出願の件数を増やすしかないです。 ここで現状を変更しないで手っ取り早く儲けるためには、仕事の手を抜く、という方向に流れます。 一番手っ取り早く儲ける手段は、マージンだけを抜いて、仕事全体を下請けに丸投げすることです。ただし、専門家に仕事を丸投げした場合は実際に抜くことのできるマージンが減少します。ですので、利益第一主義の場合は専門家ではなく、バイト派遣を大量に並べて、大量に出願案件を処理すれば儲けることができます。 バイト派遣などの素人さんに多く仕事をさせるためには、仕事を定型化する必要があります。 つまり、仕事を流れ作業化する必要がある、ということです。 あらかじめ願書ひな型を作っておき、お客さまから「洋服についての商標権がほしい」と言われたならその通り、願書ひな型の指定商品の欄に「洋服」と記載する。 この程度の子供のお使いの仕事であれば、商標登録の仕事を全く理解していない下請けでも対応することができます。 お客さまの希望する内容が権利化されるのですから、どこにも問題点はないように思えます。 ところがこのスキームを実際に運用すると、とんでもない事態になります。 言われたことだけを忠実に実施しているだけなので、実際にお客さまが取得を希望される願書内容が吟味される機会が失われるからです。 もし専門家が介入して願書を一つひとつきっちり検討したとすれば、図1の様な、権利漏れが疑われる、権利範囲が異様に狭い案件が大量生産されることはありません。 洋服を権利内容に含むけれども靴を権利内容に含まない商標権が増えている理由は、専門家が誰も願書をチェックしていないから、ということが強く示唆されます。 一人ひとりのお客さまの要望を細かく聞いていたのでは、数多くの商標登録出願業務を一定時間で回すことができません。お客さまの要望を深く聞かずにぱっぱっと仕事をさばいて行けばいくほど、業者が儲かります。 儲ける秘訣は、お客さまの要望を探るようなことはせず、言われたことだけを実行する点にあります。 これを一言で表現するなら、「面倒くさいことはしない」ということです。これを実行すれば、一定時間あたりに回すことができる業務数が向上して売上が上がり、儲かることになります。 実際に商標登録出願業務を行う手続代行業者は、目標とする理念により行動パターンが変化します。この変化を表にまとめてみます。

経営方針 利益第一主義 お客さま第一主義
商標調査 言われた分だけ 同一料金範囲で広く
願書作成 ひな型あてはめで驚くほど簡単 要望事項を細かく反映
出願方針 権利の空き部分をピンポイント申請 権利漏れで追加料金が発生しないないよう丁寧に確認後に申請
審査 ピンポイント申請で審査官との折衝なし 同一料金内で漏れなく権利化を図るため審査官と折衝
審査結果 ピンポイント申請で早く合格 グレーゾーンも挑戦するため合格に時間を要する
商標権発生 ピンポイント申請で合格手数料を確実ゲット ライバルに未申請部分を取られる事故が生じない
目標 ピンポイント申請で多くの数を回す 商標権毎の売却価値を最大化する
誰のために? 自分のため お客さまのため

同一料金で取得できる権利範囲を、一回の出願手続きでは取得しないのが利益第一主義の特徴です。追加費用を要することなく、一回の出願申請手続きで取得できる範囲を全て採りきった場合には一回分の手続き費用しかもらえません。 これに対して、一回の出願申請手続きで取得できる範囲を二回に分割して権利申請した場合は二回分の手続費用が得られます。しかも申請権利範囲が狭くなり、簡単に調査でき、簡単に願書を作成することができます。 一回の出願手続きで権利申請をする範囲を狭くすればするほど、調査、願書作成、お客さまとの調整作業を短く省略できますので、一定期間中に処理できる件数が多くなるので売上が上がります。 さらに申請しなかった分については、最初の申請料金と同じ額を請求して、再度権利化のスキームを実施することができるので儲かります。 ここでのポイントは、手を抜けばぬくほど、商標登録出願業務の手続代行業者が儲かる、という点です。 もしこの様なスキームが実際に実行されたら、権利範囲が異様に狭い、図1の様なグラフが実現されると予測できます。

(B)申請後は権利範囲に洋服の指定商品に対して靴の権利範囲を追加できない

特許庁に商標登録出願の願書を提出した後は、特許庁は願書に権利申請の過程で漏れたアイテムの追加を認めていません。 このため、権利申請の際に権利漏れをやらかしたなら、復活する手段はないことになります。 最初の出願を取りやめて、また新たに一から出願をやり直すか、または抜けた靴についての権利範囲の分を、また洋服を権利範囲に含む商標権の取得に要した費用と同額を支払って再度権利化をやり直す必要があります。

(3)権利範囲を狭く申請するとあらゆる場面で権利申請業者が儲かる

(A)良い悪いの問題ではなく、経営方針の問題

図1の様に、素人さんが出願したなら、やらかすと予想できる範囲で、有意に権利申請漏れが疑われる案件が増加する背景には、最初から権利範囲を狭くする、という強い意図を感じます。 一人ひとりの権利範囲を狭く設定して大量に出願します。時間が経てば、権利が狭いことに気がついたお客さまが洋服について権利化された部分以外に、前回権利を取得しなかった靴の権利化を希望するのであれば、また洋服と同額分を儲けることができます。 さらに、仮に、最初に権利化をしなかった靴の部分について、ライバルに権利を先に取られてしまっている場合には、その権利部分を取り戻す費用として、手続代行業者は数十万円を請求することができます。 つまり、一つひとつの出願の権利範囲を狭く設定することは業者の売上を手っ取り早く上げるための禁じ手の様なものです。それをあえて採用している、ということは、利益第一主義でいく、ということです。 権利範囲が狭いことはお客さまには簡単には分かりません。もし簡単に分かるのなら、手続代行業者の狭い権利範囲の申請ではなくて、よく考え抜かれた範囲で権利を取得しようと内容を見直すはずだからです。もしそうであれば図1の様な、権利漏れが疑われる案件が急増することもなかったと思います。 お客さまは費用のことはよくみていますが、費用が半分でも取得できる権利範囲が半分以下になっているかどうかを意識している人はほぼいないと思います。 いないからこそ、権利範囲が狭い商標権が大量生産されるということもできると思います。

(4)まとめ

結局、2020年の商標登録の際に何が起こっているのかを、例えて説明すると、これまで4つ分を四単位の費用で処理していた業務を、1つ分を一単位の費用で処理している、ということです。 手続き代行業者も考えていますから、わざわざ安い費用で奴隷作業をするはずはないと思います。 宣伝広告で大量にお客さまを集めて、仕事を下請けに丸投げするか、バイト派遣の単価の安い労働力を確保して処理する中で、数を多く回しすぎて、権利取得漏れが生じていることを誰も認識していない状態になっている、と仮定すれば、図1の権利取得漏れが疑われるグラフの様な商標権が多数生じることを説明できます。 なぜこの様なスキームで商標登録出願するのか、と問われたなら、人工知能の最適解だ、と答えれば済む話です。それが本当かどうかは誰にも分からないわけですから。 なにか歪んだ形で商標登録出願の手続き代行業者が進化しつつあるように私には思えます。 ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘 03-6667-0247


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