大手チケット転売サイト「チケットキャンプ」はなぜ閉鎖?商標法違反との関係を解説

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(1)チケットキャンプは商標法違反だったのか?

かつて「チケットキャンプ(Ticket Camp)」というチケット売買サイトがありました。このサイトは、株式会社フンザが運営し、同社はミクシィの関連子会社でした。サイト上では「ミクシィグループ運営」と明記され、日本最大級のチケット売買プラットフォームとして、多くのユーザーが利用していました。

しかし、2017年12月に警察の捜査が入り、マスコミによる一斉報道が行われました。

「ジャニーズ事務所の商標不正使用疑いでミクシィの子会社を捜索」

「ジャニーズ事務所の商標不正使用疑いでミクシィの子会社を捜索」
コンサートのチケットの売買を仲介する、いわゆる転売サイトを運営するIT大手のミクシィの子会社が、大手芸能プロダクション「ジャニーズ事務所」の商標を不正に使用した疑いで捜索を受けていたことが捜査関係者への取材でわかりました。
2017年12月8日付けNHK Webニュースより引用

この報道があった翌日、2017年12月7日にはチケットキャンプの一部ページが閲覧できなくなり、その後サイト自体が閉鎖されました。

チケット転売と商標法違反の関係

ここで疑問になるのは、「チケットの転売が商標法に違反するのか?」という点です。チケット転売そのものが直ちに違法というわけではありませんが、商標権を侵害する行為が問題視された可能性があります。

具体的に何が商標権侵害に当たるのか、マスコミ報道やネット上の情報だけでは分かりにくい点も多いため、本記事ではそのポイントを詳しく解説します。

(2)チケット転売は商標法違反になるのか?

個人間売買でも問題になるケースとは?

チケット転売が商標法に違反するかどうかを判断するポイントの一つに、「事業として商標を使用しているか」(商標法第2条第1項)という要件があります。

基本的に個人間の売買であれば商標法違反にはなりません。純粋な個人売買の範囲内であれば、商標権は及ばないためです。

しかし、「個人間売買」と言いながらも、

  • 複数のチケットを継続的に販売している
  • 高額な利益を目的に転売している

このようなケースでは、もはや単なる個人売買ではなく、「事業」とみなされる可能性があります。そうなると、商標法違反に問われることもあります。

商標法に違反しなくても、他の法律に抵触することも

「商標法に違反しなければ問題ない」と考えるのは危険です。

チケット転売は、歴史的にダフ屋などの違法取引と関わりが深く、各自治体の条例などで規制されています。特に、大量にチケットを転売する行為は、商標法以外の法律でも違法と判断される場合があります。

チケット転売は商標法だけでなく、その他の法律の観点からも慎重に考えなければならないということです。

(3)チケット転売で逮捕されるケースとは?

チケットを転売して逮捕された事例は少なくありません。ここでは、報道された主な逮捕事例を紹介します。

3-1. 人気アイドルグループ『NiziU』のチケット転売事件

事件概要:

『NiziU』のライブチケットを転売し、詐欺容疑で逮捕されたケースがあります。逮捕されたのは、横浜市の27歳の女性教諭で、処分として減給が科されました。
(2024年10月25日付 神奈川新聞)

3-2. 旧ジャニーズ系コンサートのチケット転売事件

事件概要:

アイドルグループ『WEST.』のコンサートチケットを入手するために、運転免許証を偽造したとして、女性2人が逮捕・起訴されました。
(2024年2月4日付 FRIDAY DIGITAL)

3-3. プロ野球公式戦チケットの不正転売事件

事件概要:

プロ野球『楽天イーグルス』の公式戦チケットを不正に転売したとして、山形市の54歳の自営業の男性が逮捕されました。
(2024年10月15日付 日テレNEWS)

商標法違反との関係は?

これらの逮捕事例を見ると、詐欺や身分証偽造、不正転売といった罪が問われていますが、いずれも「商標法違反」での逮捕ではありません。

では、『チケットキャンプ』が商標法に違反したとされる理由は何だったのでしょうか?

(4)旧・ジャニーズ関連のサイト運営が問題視された?

チケット転売サイト「チケットキャンプ」(通称:チケキャン)は、かつて「ジャーニーズ通信」という名称のサイトを運営し、旧・ジャニーズ関連のチケット情報を発信していました。このサイトは現在閉鎖されています。

「ジャニーズ通信」で使用されていた商標とは?

チケットキャンプの「ジャーニーズ通信」で使用されていた商標について、サイトが閉鎖される前の情報をもとに見ていきます。

チケットキャンプで使用されていたジャニーズ通信の商標

2017年11月19日付けのチケットキャンプ「ジャーニーズ通信」のウエブサイトより引用(現時点では閉鎖中により確認できません)

2017年11月19日時点の「ジャーニーズ通信」のウェブサイトから引用すると、使用されていた商標には「ジャニーズ通信」という文字が含まれていました。ただし、それ以外の部分は日本語表記がなく、「ジャニーズ通信」の文字が際立つデザインとなっていました。

旧・ジャニーズ事務所の商標権との関係

事件発覚当時、旧・ジャニーズ事務所(現在のSMILE-UP.)は以下の商標を保有していました。

  • 登録番号:商標登録第3016145号
  • 権利者:株式会社ジャニーズ事務所(現:株式会社SMILE-UP.)
  • 登録商標:「ジャニーズ」
  • 指定役務:音楽の演奏、興行場の座席の手配 など

この商標の権利範囲には、音楽の演奏に関する情報提供や、コンサートの座席手配に関する情報提供業務も含まれています。

「ジャニーズ通信」の使用は商標法違反だったのか?

「ジャニーズ通信」という名称は、旧・ジャニーズ事務所の登録商標「ジャニーズ」と完全に一致するわけではありません。

しかし、商標権の適用範囲には、類似した商標 も含まれるため、チケットキャンプによる「ジャニーズ通信」の使用が許されるかについては疑問があります。

この点について、2017年12月8日付のNHK報道では、旧・ジャニーズ事務所が警察に捜査を依頼したことが報じられています。

結果として、警察がチケットキャンプの捜査を開始し、最終的にサイトは閉鎖に追い込まれました。

ここがポイント

チケットキャンプは「ジャニーズ」の商標を含む名称を使用した情報サイトを運営していたことが問題視され、旧・ジャニーズ事務所の商標権との関係が疑われました。

これが商標法違反に該当するかは法的な判断が必要ですが、リスクの高い行為であったことは間違いありません。その結果、チケットキャンプは捜査対象となり、最終的に閉鎖に至っています。

(5)まとめ

チケキャンの場合は「チケット転売そのものが商標法に違反していた」というわけではありません。問題となったのは、チケットキャンプ(チケキャン)が旧・ジャニーズ関連の商標を無断で使用していた点です。

商標権者は誰を訴えるか自由に決められる

商標権を侵害する行為があったとしても、商標権者は必ずしも全員を訴える必要はありません。特定の企業や個人だけを狙い撃ちで訴えることも、逆に一部を見逃すことも可能です。

また、商標権者が正式に許可を与えた事業者がチケットを転売する場合、それは商標権侵害にはなりません。

なぜチケットキャンプが摘発されたのか?

他のチケット転売サイトが摘発されなかった理由は、以下の2つが大きく関係しています。

1. 商標権侵害の有無

→ チケットキャンプはジャニーズの商標を無断使用していたが、他の転売サイトはしていなかった可能性がある。

2. 商標権者の判断

→ 商標権者は、誰を訴えるか自由に決めることができるため、特定のサイトのみがターゲットになった可能性がある。

チケット転売は他の法律違反にも注意!

商標権侵害だけでなく、チケット転売には詐欺罪や条例違反などのリスクもあります。

摘発されるケースもあるため、チケット売買には十分な注意が必要です。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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