【注意喚起】クラウド関連商標で権利申請漏れが生じていないかチェックを

無料商標調査 暴走人工知能

索引

初めに

私の個人的な思い過ごしであって欲しいと願っているのですが、最近取得された商標権に権利申請漏れがあるものが増加したのではないかとの疑念を私は個人的に持っています。商標権を取得するなら、これは外せないだろうと思われる権利範囲が含まれていない。そんな権利内容に穴がある商標権が増加しているように感じるのです。権利申請もれがある商標権は後になって売却する段階になってから価値が下がります。今回はクラウド回りの商標権で近年何が生じているかを解説します。

(1)コンピューターのクラウド環境は商標区分の第42類から

(A)商標の権利範囲は複数の区分にまたがる

商標法には指定商品指定役務が属する区分が規定されていますが、この区分は商標権の権利範囲の基準となる指定商品指定役務の類似範囲を定めるものではないです(商標法第6条第3項)。

このためコンピューターとかコンピューターサーバー等の電子機器関連に関係する商標登録の区分は複数あります。

この中でも商標法の区分第42類は、クラウド関連の商標権の権利関係を規定するもので、クラウド関連を扱うなら落とすことができない権利範囲になります。

(B)商標法の区分第42類に含まれる代表的な指定役務

商標法の第42類の区分に含まれる指定役務は次の通りです。

  1. 気象情報の提供
  2. 建築物の設計
  3. 測量
  4. 地質の調査
  5. 機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計
  6. デザインの考案
  7. 電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守
  8. 電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明
  9. 医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究
  10. 建築又は都市計画に関する研究
  11. 公害の防止に関する試験又は研究
  12. 電気に関する試験又は研究
  13. 土木に関する試験又は研究
  14. 農業・畜産又は水産に関する試験・検査又は研究
  15. 機械器具に関する試験又は研究
  16. 計測器の貸与
  17. 電子計算機の貸与
  18. 電子計算機用プログラムの提供
  19. 理化学機械器具の貸与
  20. 製図用具の貸与

この中の役務のうち、クラウドに関連するのは「電子計算機の貸与、電子計算機用プログラムの提供」です。これらの指定役務は、例えば、ウェブサーバーの貸与、オンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供、サーバーのホスティング等の役務を含みます。

特に、お客さまにこちらの準備したインターネットのクラウド環境にログインしてもらって、そのクラウド環境でサービス(役務)を提供する場合には権利取得が欠かせない役務です。

(2)クラウド関連役務を指定するだけではウェブサイト回りの権利が抜け落ちる

(A)クラウド関連の指定役務ではウェブサイトの設計、作成、保守の権利は保護できない

「電子計算機の貸与、電子計算機用プログラムの提供」の役務を指定しても、ウェブサイトの設計・作成・保守とか、コンピューターシステム設計とか、テレワークに必要なコンピューターシステムの遠隔操作等の権利は含まれません。

「電子計算機の貸与、電子計算機用プログラムの提供」の役務と、「ウェブサイトの設計・作成・保守、コンピューターシステム設計、テレワーク用のコンピューターシステムの遠隔操作」の役務は互いに類似しないものとして扱われるからです。

商標法の第42類の区分でクラウド業務の中核である「電子計算機の貸与、電子計算機用プログラムの提供」の役務を指定しても、上記のウェブサイト回りの役務の指定を忘れるとウェブサイトに関する商標権が抜け落ちてしまいます。

仮に特許庁に対してクラウド関連業務の商標登録の出願願書を提出する場合、クラウド関連の「電子計算機の貸与、電子計算機用プログラムの提供」等の役務を指定しても「ウェブサイトの設計・作成・保守、コンピューターシステム設計、テレワーク用のコンピューターシステムの遠隔操作」等のホームページ回りの商標権を得るためにはこれらの記載が有ることが前提です。もし役務の指定をうっかり忘れて願書に記載が一切ないのなら、これらの権利範囲は権利申請しなかったことになってしまいます。

一度特許庁に願書を提出した後では、仮に指定役務の記載漏れに気がついた場合でも、特許庁に既に提出した願書に記載のない指定役務として「ウェブサイトの設計・作成・保守」等を追記したくても、特許庁ではこれらの追記を認めていません。

本当にその様な状況になったら、同一料金を支払って最初から権利申請をしなおす事態になります。

(3)クラウドの商標権でホームページ回りの権利漏れ登録が増加している

(A)同一料金で取得する権利の取り忘れが大量発生か?

下記の図1は、2010年から2020年までに実際に商標登録出願され、特許庁の審査に合格して登録された日本国内の商標権について、クラウド関連の権利範囲である役務を指定しているが、ホームページのウェブサイト回りの権利とか、リモートワーク回りの権利が抜け落ちている商標権の数をカウントしたものです。

Fig.1 クラウド関連商標権で権利漏れが疑われる事例が急増中

クラウド関連商標権で権利漏れが疑われる事例が急増中

2019年まではなだらかに出願件数が伸びているので自然増で説明できますが、2020年になると、クラウド関連の権利範囲を指定しておきながら、ウェブサイト関連とかリモートワーク関連の権利が抜け落ちている商標権がぐんと増加しています。

ちなみに、クラウド関連の権利範囲を指定しつつ、ウェブサイト、ホームページ関連とかリモートワーク関連の権利範囲を指定しても支払う料金は同一です。

これに対して、クラウド関連の権利範囲だけを指定して商標権を取得してから、後でウェブサイト、ホームページ関連とかリモートワーク関連の商標権を取得するためには2倍の料金を手続業者に支払わなくてはならなくなります。

(B)権利漏れの回復には倍額の費用が掛かるのを認識できているか

特許庁にクラウド関連の商標権を権利申請するのに、最初の1回で権利を取り切ってしまえば全く問題がないのに、権利範囲を絞りすぎると、後で権利取得をしなかった範囲を権利取得する場合には最初と同じ料金が必要になるため、倍額料金を支払う必要がでてきます。

商標登録の専門家が願書をチェックする場合には、願書内に当然入っているべき権利範囲が抜け落ちている場合には、本当にこの範囲でよいかお客さまに確認することができます。

これに対し、例えば、ひな型的なものにあてはめ出願をした場合、楽に出願できて楽に登録できますが、権利漏れが生じる危険があります。

クラウド関連の商標権が必要な場合にクラウド関連の範囲だけを指定するのは危険です。クラウド関連の範囲だけで商標権を取得した場合、ライバルに「ウェブサイトの設計・作成・保守」とか「テレワーク関連業務」の部分を商標登録されてしまう危険があります。

この様に部分的に権利を食いちぎられてしまうと、将来高く売却できるはずの商標権の価値が下がってしまいます。

(4)まとめ

クラウド関連業務に商標権を取得する場合、同業他社はどの範囲で権利を取得しているのかチェックする必要があります。

本来なら同じ費用で取得できる権利範囲について、2回、3回に分けて商標登録出願すると、2倍、3倍の費用がかかります。

また商標登録代行業者側でも権利範囲を絞り込めば絞り込むほど、先行登録商標との権利関係の調整をする必要がなく、ひな型で簡単に出願できるので単位時間の処理量が増えて売上が増加します。

それだけではなく、権利漏れが判明して後から権利を補充するための出し直し出願をする場合、手続業者側は1回の手続きで権利範囲をカバーすれば1回分の手数料しかもらえないのに対し、複数回に分けて権利申請すれば、その回数の分だけかけ算で手数料をもらうことができ、売上があがります。つまり、お客さまに注意を促すと売上が下がるジレンマが発生します。

権利範囲を狭く申請する傾向は2020年以降、顕著に観測できます。全て分かった上で権利申請しているのであればよいのですが、わざわざ高い費用を払って複数回に分けて権利申請すると損をします。

実際に特許庁にクラウド関連の商標権についての権利申請をする前に、本当にその権利範囲でよいのかの検討を忘れないようにしてくださいね。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘

03-6667-0247


無料商標調査

あなたの商標が最短1ヶ月で登録できるかどうか、分かります
識別性を判断することで、商標登録できるかどうか、分かります
業務分野の検討が、商標の価値を最大化します

コメントする