【続報】釣り具の商標権でもマリンスポーツの権利が丸抜け案件急増中

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索引

初めに

ここのところ連続して、ここ1〜2年内に登録された商標権に、権利取得漏れが疑われる案件が急増している問題についてスクープを続けています。最近取得された商標権の権利漏れのパターンは決まっていて、商標登録のことを何一つ理解していない人がまとめて願書を作成したら、おそらくこの範囲を落とすだろう、と予測できる範囲があります。そこを集中的に調べると、出るわ出るわで、続々と権利取得漏れが疑われる案件がざくざく出てきます。今回は商標権で釣り具を権利範囲として含みつつ、マリンスポーツの権利がごっそり抜け落ちている案件について詳細にレポートします。

(1)釣り具の商標権でもマリンスポーツの権利抜けか?

(A)関連性の高い商品群で権利申請漏れが発生

独立して東京に特許事務所を構えてから20年近く、これほど腹が立ったことはないです。

それぞれの職業には勘どころというか、押さえておかなければならないポイントがあって、それを外したらおしまいでしょ、というのがあります。

それが守られていない。例えば、建築士の設計したマンションの杭が岩盤層に全然届いていないとか、構造設計書の強度計算がいいかげん、または実施されていないかで、マンション自体が耐震基準を満たしていないとか。

現在の商標登録の状況を説明するなら、守るべき最低限のルールが無視されているような状況の様に見えるのです。

例えば、ゴミを持ち帰るお約束のキャンプ場があった、とします。もし悪いヤツがいて、ゴミを持ち帰らないでこっそり埋めるとしたら、この場所だよね、という場所があったと仮定します。

そしてその場所を掘り返してみると、事前予測通り、不法投棄されたゴミが出てくるわ出てくるわ。現在の状況を例えて表現するならこの通りになります。

今日は本当に頭にきているので、結論だけ示します。

Fig.1 商標権の権利範囲で釣り具を範囲に含むのに、マリンスポーツの権利を落としている商標権数の年度別推移

商標権の権利範囲で釣り具を範囲に含むのに、マリンスポーツの権利を落としている商標権数の年度別推

本当にこんなことが許されるのか、といった状況です。

ここまで露骨な状況になったのは初めてです。図1のグラフは横軸に各年度を採り、縦軸には、それぞれの年度に発生した商標権の数を示します。これらの商標権は、その権利範囲に釣り具を含むけれども、マリンスポーツを含まないものを基準にカウントしています。

ここでいうマリンスポーツとは、例えばサーフィンとか、スキューバダイビング等です。

釣り具についての権利が含まれるのに、マリンスポーツが丸々抜けている。そんな商標権がここ1、2年の間に急増しています。

(B)釣り具の権利範囲にマリンスポーツの権利範囲を追加しても追加料金は発生しない

もし、商標権を取得する際に釣り具についての権利が必要であった、とします。ただし、もしこれから取得する商標権の権利範囲に釣り具に加えて、マリンスポーツの権利範囲を追加した場合に、追加料金が発生するのであれば、今回は釣り具の権利だけを取得し、後から追加のコストがかかるマリンスポーツの権利を補充する、という考え方もあると思います。

とろこが現在の商標法の場合、商標権の権利範囲の中の指定商品として釣り具だけを選択した場合も、釣り具とマリンスポーツの両方を選択した場合も、料金に変化はないです。

ところが仮に釣り具の権利だけを取得し、後からマリンスポーツの権利を取得する場合、釣り具に要した費用と同額の費用が必要になります。つまり倍額を払う必要がでてきます。

本来なら1回の手続きで、1回分の費用だけで取得できる権利を、2回に分けて特許庁に権利申請すると、これから先、ずっと2倍の料金を払う必要がでてきます。

代行側 裏の意味
簡単に願書作成 短時間で大量生産
釣り具だけを指定 他のアイテムの調査不要
他のアイテムには触れない 追加説明が不要
ピンポイント出願 審査官との折衝を避ける
一発合格 とにかく出願数を多く回す
高い合格率 不合格の費用取りはぐれを防ぐ
早く権利化達成 グレーゾーンは勝負せず数を重視する

分かってもらえるでしょうか。商標権の権利を取得する際に、我々商標登録の専門家の立場からすると、特許庁に権利申請する権利範囲を狭くすればするほど、業者側が助かるし儲かる計算になります。

最初に権利範囲を狭く設定してしまえば、他のアイテムについての説明、調査、実際に出願するかどうかのすりあわせ検討を全てパスできるため、驚くほど短時間で願書を作成できます。

出願手続代行側の視点から見れば、追加費用がもらえないなら、一回の出願で一回の手数料しか貰えないなら、その範囲を狭く絞り込んだ方が儲かります。願書作成のための調査や調整が少なくて済むため、同じ時間でも大量の願書を捌くことができるからです。

また一回の出願で一回の手数料しか貰えない権利範囲を分割した場合、今回権利化しなかった範囲を後で権利化する必要が生じた場合、本来なら1回分しか貰えない手数料を2回貰える計算になります。

もし合格できるかどうか微妙なグレーゾーンの出願を特許庁にして、審査官との折衝に失敗した場合、手続代行業者側は審査合格時の手数料が貰えない結果になります。

利益重視の場合はそれを避けたいので、当然、グレーゾーンを含む商標登録出願は行わず、審査に合格できることが明らかな、誰も権利を取っていない範囲だけをピンポイントで出願しまくればよいのです。

極めつけは、一回の出願で一回の手数料しか貰えない権利範囲を分割しておくと、本来なら最初の一人のお客さまが取得するべき権利を、他のお客さま(つまり、ライバルということです)に取得させて手続費用を得ることが可能になります。

あらゆるフェーズで、商標権の権利範囲を狭く絞り込めば絞り込むほど、手続業者側が儲かる、ということです。

(2)釣り具の商標権を取得する際に、他のマリンスポーツ用品も無料で権利取得できる

(A)釣り具だけを権利範囲にしてよいのか

そもそも論として、商標登録に不慣れなお客さまであれば、釣り具以外に取得すべき権利があるのかどうかすら、よく把握していないと思います。

そして手続代行業者側で「今回の商標登録では釣り具だけを指定していますが、他にも追加費用なしで取得できる権利範囲があります。」とお客さまに注意を促していないのではないか、と私はにらんでいます。

そうでなければ、上記の図1の様に釣り具だけの権利範囲を指定して、それ以外のマリンスポーツ用品の無料で追加できる権利範囲が全く含まれていない商標権数が、ここ1、2年で急増しているのは不自然です。

しかもこういった権利漏れが起きているのは釣り具の分野の商標権だけではありません。

手続業者側が、まさに歯をむき出しにして利益回収に走っている結果になっている、ということです。

私の推測では、商標権の権利範囲に釣り具が指定されたら、黙って何も言わずに釣り具だけを指定した願書を作成するだけではないのか、ということです。

もしこの作業だけでよいのなら、実際に願書を作成しているのは、願書の指定商品に釣り具だけを記載した場合に、何が生じるかを全く理解していない人が担当していると予測できます。

後から願書作成を依頼したお客さまから、「なぜ釣り具の商標権を取得することをお願いしたときに、無料で追加できる他のマリンスポーツ用品などがあることを説明してくれなかったのか」と詰め寄られて、大きなトラブルが発生することが分かるからです。

そういったトラブルになることを全く知らない専門家でない素人が願書を作成していると仮定するとつじつまがあいます。

また素人は低賃金で雇うことができす。素人では釣り具だけを指定する意味が分からないし、後で権利漏れに気付いたお客さまとの間でトラブルになること等、全く分からないからです。

(3)お客さまの利益の最大化に関心はないのか?

(A)専門家なら権利漏れが発生すれば瞬時に分かる

もし専門家がお客さま対応の最前線に立って、きちんとお客さまをお迎えして対応したなら、図1に見られるような権利漏れの商標権は大量発生しないです。

専門家なら本当にこの権利取得内容でよかったのかどうか自省できます。仮に権利取得漏れがあったとしても、その状態に自ら気付き、次回以降、そんなミスをしないようにフィードバックします。

ところが上記の図1を見る限り、その様な商標権の権利内容の品質向上を目指す活動がされている様子は全くありません。

もしその様な活動がされているのであれば、釣り具を権利範囲に含み、マリンスポーツの権利が抜けている商標権が一時的に多く発生したとしても、短期間のうちに収束して検出できなくなるはずです。

そうしないと、後になって、不誠実な権利取得の姿勢を、お客さまから厳しく追及される結果になるからです。

それすらなされていない、ということは願書を作成して特許庁に提出する部隊が、言われたことしかやらない、今回提出した内容が適正であったかどうかを反省もしない、ということになります。

もしそうでなければ、商標登録の手続代行業者が、お客さまの知的財産権の価値の最大化を目指すのではなく、自分たちの利益を最大化する方向に向かって走っていることになります。

本当にそれでよいのでしょうか。

(4)まとめ

本来なら追加料金を請求されることなく拡張取得することができる範囲を権利化せずに、あえて狭い範囲で商標権が取得される事例がここ1、2年の間に急増しています。

そして、商標登録の素人さんが手続したなら、きっと権利取得漏れを起こすと予測できる分野で、予想通りに本来なら入っているはずの権利範囲が入っていない商標権が続出しています。

今回の釣り具の権利範囲を持つ商標権に、マリンスポーツ用品の権利を追加し忘れるのは、まさに商標登録のことがよく分かっていない人が手続をした場合に発生する事例です。

おそらく商標登録を依頼したお客さまは、商標権がえられた事実にだけ着目して、本来なら追加料金なしで取得できた範囲があったことは認識していない可能性があります。

もしその範囲を他のライバルに取得されてしまうことが予測できたなら、追加料金なしで、最初の1回で、ライバルに横取りされては困る範囲を取り切るはずだからです。

本来なら自ら取得できる範囲を、他のライバルが取得できる状態で放置するのか。

もし、商標登録の手続代行側がお客さまの利益よりも自分の利益を見ているとしたら。

これから専門家に商標登録を依頼するお客さまは、私はこういう権利範囲の商標権が欲しいが、追加料金なしでこれ以外に取得できる権利範囲はないのか、個々人がしっかり確認するべきです。

後から気がついて軌道修正できる機会があればまだ救われますが、わざわざ取得する商標権の権利範囲を釣り具だけに絞った場合、他の部分をライバルに取られてしまったら、その権利部分を取り戻すには数十万円レベルの費用が必要になります。

そんな馬鹿げた費用を払う必要がないように、おかしいところはおかしい、説明していないところがないようにはっきり分かりやすく説明して欲しい、と権利取得の際にはっきり手続代行業者側に意思表示するべきです。

そうでないと情報弱者が養分を吸い取られてしまうだけの状況がますます拡大してしまいます。それだけは何としても私は防ぎたいです。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘

03-6667-0247

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