マリンスポーツ分野の商標権でも権利取得漏れ案件が多数発生

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初めに

連日、商標権について本来なら同一料金で一度で取得できる範囲が取得されていない案件が多数発生している件についてスクープしています。この分野の商標権を取得するなら権利範囲としてこれは含んで当然でしょう、と予測される範囲について権利が取得されていないのです。これらの商標権には特徴があって、もし商標登録に不慣れな人が手続きをしたなら、この範囲はきっと落とすだろうと予測できる分野について、その通り、権利範囲に欠落がある商標権が多数見つかります。今回は商標権の中でもマリンスポーツの分野の権利欠落問題を解説します。

(1)マリンスポーツの商標権でも権利取得見落としが発生か?

(A)マリンスポーツの商標権の権利範囲には他のスポーツの権利が含まれない

私たち商標登録のプロが手続きをする際にはマリンスポーツ分野を扱うときは特に注意します。比較的権利範囲が細かく分散しているため、表面上の表記のみに着目して権利化した際に、必要な権利がカバーされていない商標権が発生する可能性があるからです。

例えば、サーフィン、水上スキー、スキューバダイビングなどのマリンスポーツ分野の商標権を取得するには、商標登録出願の願書の指定商品として、例えば「サーフィン用・水上スキー用・スキューバダイビング用運動用具」と記載します。これでマリンスポーツ分野の商標権を取得することができます。

しかしこの指定商品に加えて、「運動用具」(ここではサーフィン用・水上スキー用・スキューバダイビング用運動用具を含まない範囲です)の記載を忘れると、野球、剣道、重量挙げ、ゴルフ、水泳、スキー、フェンシング等の運動用具の権利がまるまる抜け落ちます。

これらのマリンスポーツ以外の運動用具を、マリンスポーツに追加するのは無料です。

大切な事項なので、もう一度いいます。マリンスポーツの権利を申請する際に、マリンスポーツ以外のスポーツ分野の権利を追加するのに追加料金は必要ありません。

これだけではありません。

マリンスポーツを含まない野球などの運動用具には、登山用具が含まれません。つまり、スポーツ関連の権利を取得するときには、商標登録出願の願書に三つの運動用具の分野を指定商品として記載する必要があります。

このことは商標登録の専門家であれば誰でも知っています。

商標法上、運動用具というときは次の様に指定商品の記載内容が分かれます。

  • マリンスポーツ用の運動用具
  • 登山用の運動用具
  • マリンスポーツ・登山用以外の運動用具

これらの三つは互いに類似しない商品として扱われます。このため、マリンスポーツ用の運動用具を願書の指定商品として記載しても、登山用の運動具とか、野球・剣道等のスポーツ用品は全て権利に入らないことになります。

さらに商標法では、上記のスポーツ用品には釣り具は含まれないことになっています。マリンスポーツ用の運動用具の商標権の権利を取得する際に、もし釣り具を指定していなければ、釣り具の権利がこれまた欠落します。

もちろん、釣り具を追加しても追加料金は発生しません。

ただし、特許庁に商標登録出願の願書を提出した後では、記載が抜けていた事項の追記を特許庁は一切認めていません。

(2)マリンスポーツ用品だけを指定して、それ以外の権利が抜けている商標権が急増している

(A)なぜわざわざマリンスポーツのせまい範囲で商標権を取得するのか?

今回マリンスポーツの商標権の分野で権利の欠落がある商標権がここ1、2年で発生しているとにらんだのは、他の分野でも近年、意図的に狭く権利範囲を絞りこんだ商標権が急増しているからです。

脱線しますが、冬の現在、私はよく夜食に一人鍋を作ります。ヘルシーに白菜と豆腐だけですが、白菜は16分の1カット品を100円程度で買います。

ところが以前、兵庫県の淡路島にいったときに、現地で販売されていた新鮮な白菜一たまが100円で売っているのを見て頭がくらくらしました。

この新鮮な白菜を16分割した一つを100円で東京で購入しているのですが、分割して販売することにより淡路島で100円の白菜が東京では1600円に化けることになります。

ただしこの東京価格は不当とはいえません。私が白菜を一たま購入して自宅に持ち帰っても全てを食べきれず廃棄することになってしまいます。また生産地から東京への輸送コスト、保管コスト、売れ残りのコストなどを考慮すると、東京で16分の1カットが100円であっても、そんなものかな、と思ってしまいます。

商標権の分野でも同じです。

「マリンスポーツ用の運動用具」、「登山用の運動用具」、「マリンスポーツ・登山用以外の運動用具」、「釣り具」の指定商品は全て商標法の区分の第28類に入るので、これらの指定商品を願書に記載して商標権を取得した場合、1単位の費用で全部を取得できます。

これに対して「マリンスポーツ用の運動用具」、「登山用の運動用具」、「マリンスポーツ・登山用以外の運動用具」、「釣り具」のそれぞれを、別々に取得した場合には、商標権の費用が4倍に膨らみます。

つまり、同一料金で同一手続きで取得できる商標権の権利範囲を狭く区切って権利化することにより、たくさんの商標登録出願をすることができるので、その件数のかけ算で手数料を回収することができます。

はっきりいうと、権利範囲を狭く設定すればするほど、手続代行業者側の手間は減り、さらに売上も増加することになります。

では実務ではどうなっているのか。その結果が図1です。

FIg.1 マリンスポーツ用の商標権でマリンスポーツ以外のスポーツの権利が欠落している商標権の取得状況の年度毎推移

マリンスポーツ用の商標権でマリンスポーツ以外のスポーツの権利が欠落している商標権の取得状況の年度毎推移

インド人もびっくり、です。

ここ1、2年で、マリンスポーツ関連の商標権を取得する際に、マリンスポーツ以外のスポーツ関連の権利範囲が欠落している商標権が急増しています。

サーフィンなどのマリンスポーツの商標権の権利範囲だけが必要だとお客さまがいった説

お客さまがサーフィンだけのマリンスポーツだけの商標権の権利取得を希望した、との言い訳が聞こえてきそうですが、私は納得できません。

夏前後に需要が最大化するマリンスポーツ用品だけではなく、シーズンオフの売上を確保する必要がスポーツショップにはあるからです。

冬には冬用のスポーツ用品を販売し、夏には夏用のスポーツ用品を販売するのが普通ではないでしょうか。

本当にお客さまはサーフィンなどのマリンスポーツの商標権の権利範囲だけが必要で、他のスポーツ用品は追加費用がかからないのに取得する必要がない、と主張されたのですか?

そうではなくて、サーフィンなどのマリンスポーツの商標権が必要といわれたときに、他のスポーツ用品で追加費用の支払いなしで権利取得ができる範囲があることを案内しなかったのではないですか?

サーフィンなどのマリンスポーツの商標権しか取得できる商標権の範囲が残っていなかった説

商標権を取得したかったが、マリンスポーツ以外の分野は商標権が他人に取られていて、やむを得ずマリンスポーツの分野だけの商標権を取得した、との言い訳が聞こえてきそうですね。

ただ、その言い訳もにわかには信じがたいです。プロなら商標権を取得する際に、わざわざマリンスポーツの分野だけ、スポーツの分野の商標権から落とすことは考えられないです。

商標権は将来売却できる権利なので、もし歯抜けのある商標権を取得した場合、売却益が下がりお客さまに損害が発生する可能性があるからです。

もしサーフィンなどのマリンスポーツの商標権しか取得できる商標権の範囲が残っていなかったというのなら、ごくごく狭い権利範囲の商標権を取得する動きが、最近ではなく以前から統計上現れたはずです。しかし上記の図1に示される統計上のデータにはそのような事実は記録されていないです。

(3)マリンスポーツだけの商標権を取得するのは不自然

(A)類似商品役務審査基準では、わざわざ注意的に表記されている

商標登録出願の願書作成時に専門家が参照する類似商品役務審査基準では、野球、剣道、サッカーなどの分野のスポーツ用品を指定する際には「運動用具(ただしマリンスポーツとか登山は除く)」といった具合に、野球、剣道、サッカーなどの分野のスポーツ用品がマリンスポーツ用品には含まれないことが、はっきり間違えないように記載されています。

このため運動用具の指定商品を類似商品役務審査基準で確認したなら、指定商品としてマリンスポーツ用の運動用具を指定しても、それ以外の運動用具の権利が抜け落ちることは一目見れば分かります。

それにも関わらず、マリンスポーツだけの権利範囲だけにわざわざ狭く権利範囲を絞って、しかも他の権利範囲を追加しても追加費用は発生しないのに、願書を作成している理由は、願書作成の担当者が、類似商品役務審査基準をみていない点にあるのでは、と私は疑っています。

もし商標登録出願の願書作成時に、指定商品としてサーフィンとかスキューバダイビング等のマリンスポーツ用品に限定して願書に記載して、それをそのまま特許庁に提出した後は、願書にはマリンスポーツ以外のスポーツ用品を追記することが一切できなくなります。

驚くほど簡単に願書が作成できて、驚くほど早く願書を特許庁に提出できますが、驚くほどすかすかの商標権が発生してしまいます。権利漏れがあったことが分かると、最初の費用と同じ費用を支払って、抜けた権利のところを再度権利申請しなければなりません。

それだけではありません。出願料、登録料だけでなく、これから未来永劫、更新費用も倍額を払い続ける結果になります。

(4)まとめ

サーフィンとかスキューバダイビングの商標権が欲しい、と現在考えたとします。現在はそれだけでよい、と考えたとします。

ところがマリンスポーツのブランドが大ヒットしたとき、本当に他のスポーツ分野に横展開、拡張展開はしないのでしょうか。

マリンスポーツだけの狭い範囲の商標権だけを取得した場合、マリンスポーツ以外の権利漏れのある部分を他人に先取りされてしまうかも知れません。

こちらの大切なブランドを守るのは、最初の願書を特許庁に提出するときに、マリンスポーツ以外のスポーツ分野の指定商品を追加料金なしできちんと表記するだけです。

願書を特許庁に提出した後は、記載漏れのあった指定商品を書き加えることを特許庁が認めていない以上、安易に願書を特許庁に提出する前に、本当にこの権利申請範囲でよいのか十分検討する必要があります。

検討が不十分な商標登録出願の願書を特許庁に提出してしまった後では、権利代行業者に文句をいったところで、権利が自動的に拡がるわけでもありません。手続き実行前に確認することを忘れないでください。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘

03-6667-0247


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