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海外における商標登録は日本における商標登録と、どこが違うのか?


1. はじめに

日本で商標登録を済ませても、その権利は日本の国境を一歩でも越えた瞬間に通用しなくなります。海外で自社ブランドを展開するなら、その国でも別途商標登録を取り直さなければなりません。しかも、海外の商標制度は日本と同じ感覚では通用しません。審査の基準、出願の手続き、費用の相場、どれもが国ごとに違います。

海外商標登録を検討する段階で押さえておきたい論点を、日本の制度との対比、属地主義、マドプロ、各国ごとの違い、海外展開の実務注意点、よくある質問の順に整理します。海外進出を視野に入れている方は、出願の計画を立てる前に一度目を通してみてください。「商標登録」という言葉ひとつ取っても、国を跨いだ瞬間に意味と効力範囲が変わってくることを、本記事で実感していただけるはずです。

2. 日本の商標制度をおさらいする

日本では特許庁に願書を提出して商標登録出願を行います。審査官が既存の登録商標と衝突していないか、一般的な用語を独占しようとしていないかなどを商標法第3条・第4条に照らして確認し、問題がなければ登録の運びとなります。

費用の目安は、出願料が3,400円+区分数×8,600円、登録料が区分数×32,900円です。区分の数が増えれば、その分だけ費用も膨らみます。出願から登録までの期間は、通常11か月前後を見ておいてください。

審査の途中で拒絶理由通知が届いた場合、意見書や手続補正書で応答する局面が出てきます。応答期間は通常40日、海外居住者の場合は3か月です。応答を逃すと出願が見捨てられたものとみなされる扱いになるため、期限管理は厳しく行ってください。

3. 海外の商標制度は国ごとに独立している

属地主義という大原則

商標権は国ごとに独立しています。日本の商標権は日本国内でしか通用せず、海外で自社ブランドを守りたいのであれば、その国の制度に従って個別に登録を済ませる以外に道はありません。これを「属地主義」と呼びます。

属地主義は、知的財産権の世界では特許も意匠も同様です。発明や創作の効力は国境で完結し、隣国まで自動で広がるわけではない、という考え方が国際的なルールになっています。

日本で登録できたからといって海外で登録できるとは限らない

ある国ですでに同一・類似の商標が登録されていれば、後から出願しても拒絶されます。登録状況は国ごとにまったく違うため、日本で問題なく通った商標が他国で拒絶される事態は珍しくありません。

逆のパターンもあります。日本語の商標が海外では識別力の高い造語と判断され、日本では難しかった登録が海外ではすんなり通るケースもあります。

審査基準の違いだけでなく、商品分類の解釈や、識別力の判断、悪意の認定範囲なども国ごとに揺れます。出願前に対象国の登録状況を調べておくと、無駄な出願を避けられます。

マドプロ制度を使う選択肢

複数国で商標登録をしたい場合、「マドリッド協定」を発展させた「マドリッド議定書」、すなわち「マドリッド協定議定書(マドプロ)」という仕組みを活用すれば、手続きを一本化できます。日本の特許庁を経由してWIPO(世界知的所有権機関)に国際登録出願を行い、指定した各国でそれぞれ審査を受ける流れです。

一回の出願で複数国を指定できる点はマドプロの大きな魅力で、各国に別々に出願するより手続きの負担は軽くなります。出願言語は英語・フランス語・スペイン語のいずれかで統一できるので、各国の現地語に翻訳する手間も省けます。

ただし落とし穴があります。出願から5年以内に日本の商標登録が取り消されたり無効になったりすると、国際登録もまとめて影響を受けるのです。「親ガメこけたら子ガメもこける」という関係で、基礎出願の安定性はマドプロ利用時の大前提になります。これを実務では「セントラルアタック」と呼びます。

4. 日本と海外の違いをもう少し具体的に

手続きの違い

日本は特許庁への直接出願です。海外の場合は、各国の特許庁に直接出願するか、マドプロ経由でWIPOに出すかの二択になります。各国直接出願のルートでは、現地の弁理士や弁護士を代理人として立てる扱いが一般的で、日本の代理人だけで完結する案件はほぼありません。

国によっては、出願人が現地に住所を持っていないと出願自体を受け付けない仕組みもあります。たとえば米国出願では、現地の弁護士を代理人に立てなければ受理されません。

審査基準の違い

国によって審査の厳しさは大きく異なります。たとえば中国は類似判断が日本より厳格な場面があり、日本で登録できた商標が中国で拒絶される例が少なくありません。

米国は「使用主義」の要素が色濃く、実際に商標を使っている証拠の提出を求められます。日本の「登録主義」とは出発点からして違うので、米国出願は日本と同じ感覚で臨むと痛い目を見ます。米国の出願基盤には1(a)使用ベース、1(b)使用意思ベース、44(d)外国出願基盤、44(e)外国登録基盤、66(a)マドプロ基盤と複数の選択肢があり、選び方を間違えると拒絶事由が増えます。

欧州ではEUIPO(欧州連合知的財産庁)への一括出願で27か国をまとめてカバーできますが、絶対的拒絶理由の判断が一か国でも引っかかると全体が拒絶される構造になっています。

費用の違い

海外出願は、指定する国の数だけ費用が積み上がります。マドプロ経由でも各国ごとの個別手数料は発生し、そこに現地代理人の費用も上乗せされるのが通常です。5カ国に出願すれば、日本一国分の数倍の費用を覚悟しておいてください。

更新費用も国によって幅があります。10年ごとの更新が共通的なルールですが、米国は更新時期に使用宣誓書の提出が課せられ、未提出だと登録が抹消される運用です。費用試算では更新コストも織り込んで判断してください。

5. 海外展開で押さえておきたい実務のポイント

先に商標を取られてしまうリスク

中国をはじめとする一部の国では、日本企業のブランドが無関係の第三者に先回りして登録されるトラブルが頻発しています。海外進出を視野に入れているなら、できるだけ早い段階で現地での商標出願を済ませておいてください。

先取りされた場合の対抗手段は、不使用取消審判、無効審判、譲渡交渉のいずれかになります。譲渡交渉は相手の言い値で買い戻しを迫られるリスクがあり、結局は予防が最も安く済みます。

出願する国の選び方

すべての国に出願する必要はありません。実際に事業を展開する国、今後展開する可能性の高い国、商標を横取りされやすい国(典型例は中国)に絞って出願するのが現実的な判断です。使わない国で商標を登録しても、不使用取消の対象になったうえで費用だけが積み上がります。

優先度の付け方の目安は、売上目標の上位市場、現地パートナー候補がいる市場、模倣品流入元の市場、の3つです。これに加えて、当該市場で先願主義が徹底されているかも判断材料にしてください。

各国向けにカスタマイズしたい場合

マドプロは、日本で登録した商標と同一のものしか国際登録できません。国ごとにデザインや表記を変えて展開したい場合は、マドプロではなく各国直接出願を選ぶことになります。どちらを選ぶかは、事業展開のスピード感や対象国の数で決まります。

ロゴと文字商標を別個に出願するか、組み合わせ商標として一本で出願するかの判断も国ごとに分かれます。文字部分の保護を確実にしたいなら、文字商標とロゴ商標を分けて出願する戦略が安全策になります。

6. まとめ

海外の商標登録は、手続きも、審査基準も、費用も、日本とは別物です。日本で登録できたからといって、海外で自動的に守られるわけではありません。海外展開を考えている段階で、対象国の商標状況を先に調査し、出願の計画を立ててください。マドプロで一括処理するのか、各国直接出願で緻密に攻めるのか、事業の規模と対象国の数で判断が分かれます。

中国の先取り対策、米国の使用主義への対応、欧州の一括出願の特性、これらは経験を積んだ専門家でなければ判断が難しい論点です。早い段階で相談先を確保しておくと、現地代理人との連携も滞りなく進みます。

7. 海外商標登録に関するよくある質問

Q. 日本での商標登録は海外でも有効になりますか?

A. なりません。商標権は属地主義の原則で、登録した国の中でしか効力を持ちません。海外で自社ブランドを守りたいのであれば、その国で別個に商標登録を取得してください。マドプロ制度を使えば、一回の出願で複数国に届け出ることはできますが、各国での審査と登録は別個に行われます。

Q. マドプロ制度はどんなときに使うべきですか?

A. 出願したい国の数が3〜5か国以上あり、かつ各国で同一の商標を使う計画があるなら、マドプロが手続きの負担を大きく下げます。一方、1〜2か国の出願なら、現地代理人を経由した直接出願のほうが融通が利くこともあります。日本の基礎登録が5年以内に取り消されると国際登録もまとめて影響を受けるため、基礎の安定性は事前に確認してください。

Q. 海外出願の費用相場はどのくらいになりますか?

A. 1か国あたり40万〜60万円程度を目安にしておくと安全圏です。これには現地特許庁の出願料、現地代理人の手数料、日本側の代理人手数料、翻訳費用が含まれます。マドプロ経由でも、指定国の数だけ個別手数料が発生する点は変わりません。10年後の更新費用も国ごとに5万〜20万円程度かかるので、長期コストとして織り込んでください。

Q. 中国で商標を先に取られた場合はどうすればよいですか?

A. 対抗手段としては、3年連続不使用を理由とする取消審判、悪意による登録の無効審判、当事者との譲渡交渉が考えられます。中国の不使用取消は実際に活用されており、相手が商標を使っていない実態を示せれば取消が認められる可能性があります。譲渡交渉は最後の手段で、相手から高額な買い戻し額を提示されるケースが多いため、予防的な早期出願が結局は最も安く済みます。

Q. 米国出願で気をつけるべきことはありますか?

A. 米国は使用主義の影響が強く、出願時に使用基盤を選ぶ仕組みになっています。実際に米国で使用している場合は1(a)、使用予定であれば1(b)、外国出願や登録があれば44条系列を選ぶといった具合です。登録後も5〜6年目と9〜10年目に使用宣誓書の提出が課せられ、提出を逃すと登録が抹消されます。出願時の選択ミスや更新の見落としで権利を失う事例があるので、米国出願は早い段階から経験のある代理人に相談したほうが安心です。

8. 海外商標登録のご相談はファーイースト国際特許事務所へ

海外商標登録は、対象国の選定、出願ルートの判断、各国代理人の手配、審査対応、更新管理まで、複数の局面で専門的な判断を迫られる場面が出てきます。社内だけで完結させるのは現実的ではなく、経験のある弁護士・弁理士と組むことで、無駄な費用と時間を抑えられます。

ファーイースト国際特許事務所では、実務10年以上の現役ベテラン弁理士・弁護士が、海外商標出願の戦略設計から現地代理人とのやり取り、費用見積まで一括で対応しています。マドプロ経由の国際出願も、各国直接出願も、ご要望に応じて使い分けます。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247

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