日本で商標登録を済ませても、その権利は日本の国境を一歩でも越えた瞬間に通用しなくなります。海外で自社ブランドを展開するなら、その国でも別途商標登録を取り直さなければなりません。しかも、海外の商標制度は日本と同じ感覚では通用しません。審査の基準、出願の手続き、費用の相場、どれもが国ごとに違います。海外商標登録を検討する段階で押さえておきたい論点を、実務の観点から整理します。
1. 日本の商標制度をおさらいする
日本では特許庁に願書を提出して商標登録出願を行います。審査官が既存の登録商標と衝突していないか、一般的な用語を独占しようとしていないかなどを確認し、問題がなければ登録の運びとなります。
費用の目安は、出願料が3,400円+区分数×8,600円、登録料が区分数×32,900円です。区分の数が増えれば、その分だけ費用も膨らみます。出願から登録までの期間は、通常11か月前後を見ておいてください。
2. 海外の商標制度は国ごとに独立している
属地主義という大原則
商標権は国ごとに独立しています。日本の商標権は日本国内でしか通用せず、海外で自社ブランドを守りたいのであれば、その国の制度に従って個別に登録を済ませる以外に道はありません。これを「属地主義」と呼びます。
日本で登録できたからといって海外で登録できるとは限らない
ある国ですでに同一・類似の商標が登録されていれば、後から出願しても拒絶されます。登録状況は国ごとにまったく違うため、日本で問題なく通った商標が他国で拒絶される事態は珍しくありません。
逆のパターンもあります。日本語の商標が海外では識別力の高い造語と判断され、日本では難しかった登録が海外ではすんなり通るケースもあります。
マドプロ制度を使う選択肢
複数国で商標登録をしたい場合、「マドリッド協定議定書(マドプロ)」という仕組みを活用すれば、手続きを一本化できます。日本の特許庁を経由してWIPO(世界知的所有権機関)に国際登録出願を行い、指定した各国でそれぞれ審査を受ける流れです。
一回の出願で複数国を指定できる点はマドプロの大きな魅力で、各国に別々に出願するより手続きの負担は軽くなります。
ただし落とし穴があります。出願から5年以内に日本の商標登録が取り消されたり無効になったりすると、国際登録もまとめて影響を受けるのです。「親ガメこけたら子ガメもこける」という関係で、基礎出願の安定性はマドプロ利用時の大前提になります。
3. 日本と海外の違いをもう少し具体的に
手続きの違い
日本は特許庁への直接出願です。海外の場合は、各国の特許庁に直接出願するか、マドプロ経由でWIPOに出すかの二択になります。各国直接出願のルートでは、現地の弁理士や弁護士を代理人として立てる扱いが一般的で、日本の代理人だけで完結する案件はほぼありません。
審査基準の違い
国によって審査の厳しさは大きく異なります。たとえば中国は類似判断が日本より厳格な場面があり、日本で登録できた商標が中国で拒絶される例が少なくありません。
米国は「使用主義」の要素が色濃く、実際に商標を使っている証拠の提出を求められます。日本の「登録主義」とは出発点からして違うので、米国出願は日本と同じ感覚で臨むと痛い目を見ます。
費用の違い
海外出願は、指定する国の数だけ費用が積み上がります。マドプロ経由でも各国ごとの個別手数料は発生し、そこに現地代理人の費用も上乗せされるのが通常です。5カ国に出願すれば、日本一国分の数倍の費用を覚悟しておいてください。
4. 海外展開で押さえておきたい実務のポイント
先に商標を取られてしまうリスク
中国をはじめとする一部の国では、日本企業のブランドが無関係の第三者に先回りして登録されるトラブルが頻発しています。海外進出を視野に入れているなら、できるだけ早い段階で現地での商標出願を済ませておいてください。
出願する国の選び方
すべての国に出願する必要はありません。実際に事業を展開する国、今後展開する可能性の高い国、商標を横取りされやすい国(典型例は中国)に絞って出願するのが現実的な判断です。使わない国で商標を登録しても、不使用取消の対象になったうえで費用だけが積み上がります。
各国向けにカスタマイズしたい場合
マドプロは、日本で登録した商標と同一のものしか国際登録できません。国ごとにデザインや表記を変えて展開したい場合は、マドプロではなく各国直接出願を選ぶことになります。どちらを選ぶかは、事業展開のスピード感や対象国の数で決まります。
5. まとめ
海外の商標登録は、手続きも、審査基準も、費用も、日本とは別物です。日本で登録できたからといって、海外で自動的に守られるわけではありません。海外展開を考えている段階で、対象国の商標状況を先に調査し、出願の計画を立ててください。マドプロで一括処理するのか、各国直接出願で緻密に攻めるのか、事業の規模と対象国の数で判断が分かれます。
当事務所では、海外商標出願の戦略設計から現地代理人とのやり取り、費用見積まで一括で対応しています。実務10年以上の現役ベテラン弁理士・弁護士がお客さまを直接担当しますので、海外展開で商標をどう守るか迷っている段階でも、お気軽にご相談ください。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
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