索 引
1. 分割納付とは何か
商標権の存続期間は、設定登録の日から10年です(商標法19条)。期間が満了する前に更新登録の申請をすれば、さらに10年ずつ延ばせます。この10年分の登録料を、特許庁には一度に納める方法と、前半5年分と後半5年分に分けて納める方法があります。後者が分割納付です(商標法41条の2)。
分割納付が使える場面は2つあります。1つは、登録査定を受けた後に納める設定登録料です。もう1つは、10年ごとの更新登録料です。どちらの場面でも、最初に納めるのが前期分(1年目から5年目まで)、あとから納めるのが後期分(6年目から10年目まで)になります。
後期分の料金をいくら納めるかは、前期分をいつ納めたかで決まる場合があります。2022年4月1日の料金改正をまたいで分割納付をしている商標では、この点が誤解されやすいところです。ここでは、分割納付の金額、後期分の期限、料金改正の経過措置、選ぶときの考え方の順にご紹介します。
2. 分割納付の金額と、一括納付との差額
改正後の特許庁料金は、1区分あたり次のとおりです。設定登録料は、10年分を一括で納めると32,900円、分割なら前期分17,200円と後期分17,200円の合計34,400円です。更新登録料は、一括で43,600円、分割なら前期分22,800円と後期分22,800円の合計45,600円です。
つまり、分割を選ぶと設定登録では1区分あたり1,500円、更新登録では1区分あたり2,000円、一括納付より総額が増えます。区分が3つあれば、それぞれ4,500円、6,000円の差です。差額は大きくありませんが、分割納付が総額では不利になる点は押さえておいてください。
2022年3月31日以前の旧料金では、設定登録料が一括28,200円、分割は前期分・後期分とも16,400円でした。更新登録料は一括38,800円、分割は前期分・後期分とも22,600円でした。現在も旧料金が話題に出るのは、次にご説明する経過措置で、後期分を旧料金のまま納める商標が残っているためです。
なお、ここでの金額は特許庁に納める料金だけです。代理人に依頼している場合は、納付手続の手数料が別にかかります。出願から登録までの内訳は、商標登録の費用のページでご案内しています。
3. 後期分の納付期限と、納め忘れたときの扱い
前期分は、設定登録なら登録査定の謄本が届いた日から30日以内、更新登録なら更新登録の申請と同時に納めます。後期分の期限は、商標権の存続期間の満了前5年の日までです。設定登録の日が2024年6月1日なら、10年の存続期間は2034年5月31日までで、後期分は2029年5月31日までに納めることになります。
この期限を過ぎても、6か月以内であれば納付できます。ただし、後期分と同額の割増登録料を併せて納めるため、金額は倍になります(商標法41条の2、43条)。
6か月の追納期間も過ぎると、商標権は存続期間の満了前5年の日にさかのぼって消滅したものとみなされます。前期分を納めて5年間使ってきた商標でも、後期分を納めなければ6年目以降の権利は残りません。特許庁から期限の案内が届くわけではないので、後期分の期限を管理するのは権利者の側の仕事になります。
更新登録の申請そのものにも期限があります。存続期間の満了前6か月から満了日までに申請し、過ぎた場合は6か月以内に割増登録料を添えて申請します。更新を忘れたときの救済は、商標権の更新を忘れたらどうなるかの記事で詳しく取り上げています。
4. 2022年4月1日の料金改正と経過措置
令和4年(2022年)4月1日から、商標の登録料が改正されました。通常であれば、改正日以降に納付する費用には新料金が適用されます。しかし、分割納付については経過措置として特別なルールが設けられています。
この特別ルールでは、前期分の納付日または納付期限が2022年3月31日以前であれば、後期分についても旧料金が適用されます。後期分を2022年4月1日以降に支払う場合でも、前期分の期限が改正前であれば、旧料金のままで納付できるということです。
一方、前期分の納付日または納付期限が2022年4月1日以降の場合は、前期分・後期分ともに新料金が適用されます。後期分の料金は、後期分を納める日ではなく、前期分の時期で決まると覚えておくと迷いません。
この扱いは設定登録料と更新登録料のどちらにも当てはまります。特許庁の後期分用の商標登録料納付書も、設定時と更新時の分割納付で共通の様式です。納付書を作る際は、旧料金と新料金のどちらを書くかを、前期分の納付日または納付期限から確認してください。金額を間違えると補正を求められ、手続が遅れます。
5. 具体例で見る、後期分が旧料金になる場合とならない場合
設定登録料の例
設定登録料を分割納付する場合、前期分の納付日または納付期限が2022年3月31日以前であれば、後期分も旧料金(1区分あたり16,400円)で納付できます。
たとえば、3区分の商標で前期分の納付期限が2022年3月20日だったとします。この場合、後期分を2024年5月1日に支払う場合でも、3区分×16,400円の合計49,200円という旧料金体系が適用されます。前期分の期限が改正前であったため、後期分の支払い時期にかかわらず旧料金が維持される仕組みです。
これに対し、前期分の納付期限が2022年4月10日だった1区分の商標では、前期分が新料金の17,200円、後期分も17,200円です。後期分をいつ納めても、旧料金の16,400円には戻りません。
更新登録料の例
更新登録料についても同様のルールが適用されます。前期分の納付日または納付期限が2022年3月31日以前であれば、後期分も旧料金(1区分あたり22,600円)で納付できます。
逆に、2区分の商標で前期分の納付期限が2022年4月10日だった場合は、前期分・後期分ともに新料金が適用されます。前期分の期限が改正後であるため、後期分にも新料金が適用され、後期分は2区分×22,800円の45,600円になります。
判断に迷いやすい場合
前期分の納付期限が2022年3月末で、実際の納付が4月に入ってからだった商標は、経過措置の文言のうち「納付期限」の方で判断します。納付期限が2022年3月31日以前なら、後期分は旧料金です。反対に、期限は4月以降だったが3月中に早めに納めたという場合は、「納付日」の方が3月31日以前に当たります。どちらか一方が改正前であれば旧料金になる、という読み方です。
権利を譲り受けた商標や、担当者が交代した商標では、前期分をいつ納めたかの記録が手元にないこともあります。その場合は、特許庁の登録原簿や、前期分の納付書の控えで確認してから後期分を納めてください。
6. 一括と分割、どちらを選ぶか
総額だけを見れば一括納付の方が少なくて済みます。それでも分割納付が使われるのは、登録時点で10年後の事業が見通せない場合があるからです。新商品の名前として登録したものの、5年後に販売を続けているか分からないなら、前期分だけ納めておき、事業が続いていれば後期分を納めるという選び方ができます。
複数の区分で登録した商標も同じです。5年目に、実際に使っている区分だけ後期分を納め、使わなくなった区分は納めずに手放すという判断が可能です。ただし、後期分の納付書で一部の区分だけを選んで残すという扱いはありません。一部の区分だけを残したいときは、後期分の納付前に区分の放棄など別の手続を検討します。
分割納付を選ぶと、後期分の期限管理という仕事が1つ増えます。5年後の期限を社内で引き継ぐ仕組みがなければ、差額の1,500円や2,000円を払ってでも一括で納めておく方が、権利を失う事故を避けやすくなります。当事務所でお手続きした商標については、後期分と更新の期限を管理し、期限前にご連絡しています。
当事務所では、実務10年以上の弁理士・弁護士がお客さまを直接担当します。分割納付中の商標の後期分や更新のご相談は、お問い合わせフォームからお申込みいただけます。更新手続の流れは、商標登録の更新とはの記事もご覧ください。
7. 分割納付についてよくある質問
Q1. 後期分の料金は、納める日の料金表で決まるのですか?
2022年4月1日の改正については、後期分を納める日ではなく、前期分の納付日または納付期限で決まります。前期分の納付日または納付期限が2022年3月31日以前なら後期分は旧料金、2022年4月1日以降なら新料金です。
Q2. 後期分の期限はいつですか?
商標権の存続期間の満了前5年の日までです。設定登録または更新登録の日から5年後の日が目安になります。期限後6か月以内は同額の割増登録料を加えて納付でき、それも過ぎると商標権は満了前5年の日にさかのぼって消滅したものとみなされます。
Q3. 分割納付にすると総額はいくら増えますか?
改正後の料金で、設定登録料は1区分あたり1,500円(一括32,900円、分割合計34,400円)、更新登録料は1区分あたり2,000円(一括43,600円、分割合計45,600円)増えます。
Q4. 前期分を一括で納めた商標を、後から分割に変えられますか?
一括で10年分を納めた後に分割へ切り替える手続はありません。一括か分割かは、設定登録料または更新登録料を納める時点で選びます。次の更新のときに改めて選び直すことはできます。
Q5. 前期分をいつ納めたか分からないときは、どう確認しますか?
前期分の納付書の控え、代理人からの報告書、特許庁の登録原簿で確認できます。設定登録の日や更新登録の日が分かれば、前期分の納付期限の見当もつきます。確認が取れないまま後期分の金額を決めないでください。
参考資料
商標法19条・20条・40条・41条・41条の2・43条、特許庁「令和3年特許法等改正に伴う料金改定のお知らせ(令和4年4月1日施行)」「産業財産権関係料金一覧」「商標登録料納付書(設定及び更新時に分割納付した場合であって、後期分を納付する場合の様式)」。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247
商標のことでお困りですか?
商標登録の出願・調査・侵害対応について、
弁理士が無料でご相談に応じます。お気軽にお問い合わせください。
ファーイースト国際特許事務所|弁理士 平野泰弘
