商標出願の際に洋服を指定しながらネクタイ・手袋・靴下の権利が落ちている商標権が急増

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索引

初めに

商標登録は、ネーミングやロゴについて特許庁に権利申請して商標権が得られると、他人が勝手に登録商標を使うことができなくなる制度です。例えば商標ABCの商標権を取得する際には、商品として「洋服・ネクタイ・手袋・靴下」を指定して権利申請すればこれらのアイテムについて商標権が得られます。これに対し「洋服」だけを指定すると洋服についてだけしか権利が得られません。追加費用がかからないのに、あえて洋服だけを権利申請する権利範囲限定の商標権が激増しています。この問題の背景を連日スクープしています。

(1)商標権の申請権利範囲に洋服以外で無料追加できるネクタイ等の権利も抜け落ちている

(A)願書の指定商品欄に記載漏れがあると、その権利が完全に権利範囲から消えてしまう

今週は集中的にアパレルブランドの商標権について、権利申請漏れ疑惑のある商標権が激増している事件をスクープしています。 商標権はネーミングとかロゴ等の自社表示を商品や役務等の業務に独占的に使用できる権利です。 特許権は、例えば特殊な商品の製造方法等のアイデアを保護するものですが、商標権は商売に使用するのれん等のネーミングを守る権利です。 例えば、アパレルの分野に商標「ABC」とのネーミングを使用したいと考えた場合、願書に商標として「ABC」を記載し、その商標を使用する商品に、例えば「洋服・ネクタイ・手袋・靴下」等を指定します。 注意点は願書に記載した指定商品指定役務と関連のある商品役務が権利の範囲になることです。 上記の場合では、例えば、指定商品として日本酒とか自動車とかを権利申請していないので、仮に上記の商標「ABC」の商標登録出願が特許庁の審査に合格して商標権が発生した場合でも、日本酒とか自動車は商標権の権利範囲に含まれないです。最初に願書に記載しなかったからです。 上記の例の様に、願書に商標「ABC」を記載して指定商品として「洋服・ネクタイ・手袋・靴下」を記載した場合には「洋服・ネクタイ・手袋・靴下」に関連する商品役務の範囲内で商標権が発生します。 ここでもし仮に、願書に商標「ABC」を記載したが指定商品として「洋服」だけを記載した場合には「洋服」についての商標権は得られますが、権利範囲からは「ネクタイ・手袋・靴下」はすっぽり抜けてしまう、ということです。 指定商品として「洋服」だけを記載して願書を特許庁に提出した場合、「ネクタイ・手袋・靴下」は権利は不要です。商標「ABC」についてどうぞご自由にお使いください、と宣言したのと同じになります。 そして指定商品として「洋服」だけを記載して願書を特許庁に提出した後では、「洋服」の指定商品に「ネクタイ・手袋・靴下」を追加することを特許庁では全く認めていません。 もし願書提出後に指定商品に「ネクタイ・手袋・靴下」が漏れていたことに気づいた場合、特に商標権が成立した後では願書にこれらの指定商品を追加する機会はないので、また新たに指定商品として「洋服」を取得した場合の料金と同じ料金を払って、「ネクタイ・手袋・靴下」の権利を取得しなおす必要があります。 最初に願書に記載するのは無料なのに、あえて記入しないと、後で権利を取り直すには最初の費用の倍額がかかる、ということです。

(A)素人さんが手続きしたら権利申請漏れを起こすと予測できる範囲で権利取得漏れ疑惑案件が多数検出される

ここ連日、洋服の商標権の権利範囲について、権利漏れが疑われる事例が多発している事件をスクープしています。洋服の商標権を取得する際に、下着とかベルトとか、素人さんが手続きをしたら、きっと権利申請漏れをするだろうな、と予測できます。そしてその予測通り、下着、ベルト等の権利が丸々抜け落ちた商標権が多数見つかる点を昨日までにレポートしました。 今日は、洋服の商標権を取得する際に、ここまで権利漏れを起こすのなら、間違いなく、「ネクタイ・手袋・靴下」についての権利申請漏れを起こすと予測できます。そしてその予測通り、期待を裏切らず、きっちり権利漏れが疑われる案件がここ1,2年で急増しています。 下記の図1は、商標権の権利範囲に洋服を包含するが、ネクタイ・手袋・靴下の権利が申請されていない商標権数を各年度ごとにカウントした結果を示したグラフです。

Fig.1 各年度別の商標権について洋服を含むがネクタイ・手袋・靴下の権利漏れが疑われる商標権数の推移を表したグラフ

各年度別の商標権について洋服を含むがネクタイ・手袋・靴下の権利漏れが疑われる商標権数の推移を表したグラフ 私自身、あきれて言葉がでません。 ちなみに、洋服を商標権の権利範囲に含む場合、特許庁に対して願書提出前であればネクタイ・手袋・靴下を追加しても追加費用は発生しません。追記しても追加費用が発生しないのに、あえてわざわざ狭い範囲で商標権を取得している件数が急激に増加していることが上記の図1のグラフからわかります。

(2)専門家は全く願書をチェックしていないことが強く疑われる

(A)権利取得漏れが後で発覚した場合には大騒動になる

商標権は、ネーミングやロゴを他人に使わせないようにするためだけの権利ではありません。 ブランドを育成して、その商標権を譲ってほしい、ライセンスしてほしい、という人が現れるように、商標権の価値を自ら高めていくことが本来のブランド育成業務といってよいです。 商標権の権利範囲に権利取得漏れが多いと、その商標権を高額で買う、という人のモチベーションが下がります。狭い範囲の権利なら購入したとしても、権利取得漏れがある部分の権利が保証されないのでは、何のために何千万円もの対価を払って商標権者から商標権を購入しなければならないのか商標権を購入する側は理解できないのではないでしょうか。 この様に商標権は高額取引の対象になるため、権利取得の際にどこまで権利範囲を押さえるのか、初期費用との見合いで商標登録出願人と弁理士が連絡を取り合い、最適点を探る作業が通常実施されます。 もし取得した商標権に権利漏れがあると分かると後で大騒動になります。だから専門家は商標登録出願の願書を何度も見直します。 そして実際に商標登録の専門家が特許庁に提出する前の願書をチェックしたなら、一撃で、この内容では洋服の商標権を確保できるが、ネクタイ等の権利漏れが起きるとわかります。 それにもかかわらず、図1の様に、ここ1、2年で権利申請漏れが疑われる案件が急増する、というのは誰も専門家が内容をチェックしていないからだと想像せざるをえません。 チェックしていないから、権利申請漏れが生じていることに気が付かない。もし権利取得漏れが後で発覚した場合には大騒動になるのを専門家なら事前に知っています。 なのにチェックをしない。 これも私の想像ですが、お客さまの取得する商標権の内容に全く興味がない、ということになります。 商標権を取得されるお客さまの中にも、商標権を取得する際は権利は狭くて十分、と考えていても、自分の想像を超える速さで事業が拡張することもあるかもしれません。 そのときに狭い範囲で商標権を取得したなら、また後から倍額費用を払って、権利取得漏れがある範囲について商標権を取得し直す必要があります。 特許庁に提出する願書に最初に書いておけば、無料で権利が取得できたのに、あえて権利を取得せず、第三者が取得できる形で権利化せず放置する理由はどこにあるのでしょうか。

(B)権利範囲を狭く設定すれば手続代行業者が儲かる

出願手数料が一定なら、がんばって広い権利を確保しても、また権利範囲を狭く絞り込んでも、お客さまからもらえる手数料は同額です。 このため、手続き代行業者側では一人ひとりのお客さまに手間暇をかけずに、とにかく、数を多く回す方が儲かります。 この出願の数を多く回す、というのがポイントで、全て、この方針で商標権の権利取得がなされている点を説明できます。 連日スクープしている通り、商標権の権利漏れが疑われる案件がここ数年の間に急増しているのは洋服の分野だけではありません。あらゆる分野で急速に権利範囲が異常に狭い商標権が大量生産されつつあります。

1.権利範囲を狭くすることで調査時間を短縮できる

いうまでもありませんが、一回の手続きで同一料金で取得できる権利範囲は広く存在します。しかしそれを全部申請しようとすれば商標調査に時間がかかってしまいます。 一回の手続きで同一料金しかもらえないのであれば、権利範囲を狭くすればするほど、出願代行業者の手間を省くことができます。

2.願書を、驚くほど簡単に作成できる

お客さまから洋服についての商標権がほしい、と言われれれば、その通り、洋服の指定商品を商標登録出願の願書ひな型に記入するだけで願書を作成することができます。 おどろくほど簡単に願書を作成できます。 反面、追加費用を払わずに取得できる範囲の説明はないはずです。それを説明するとお客さまが関心を寄せてきて説明時間が伸びてしまいます。これを避けるために、お客さまから言われたことしか願書に記入しないと仮定すると、図1のグラフの様に、異様に権利範囲が狭い商標権の数が急増することになります。

3.専門家が願書を作成しない

専門家が直接、お客さまの要望を聞いて、直接願書を作成するとすれば、どうしても高い費用になってしまいます。下請け専業の専門家は安すぎる費用では働かないからです。 また出願代行業者の視点から見た場合、下請けに丸投げする業務は、単価がやすければやすいほど儲かります。専門家に依頼すれば利益を中抜きできるマージンが減りますので、いきおい、バイト派遣を大量に雇って案件を処理する方向に流れます。 表向きには専門家が願書をチェックしていることになっていますが、図1はその事実に反する形の商標権が急増していることを示しています。

4.権利範囲を狭くすれば素人さんでもひな型あてはめでおどろくほど簡単に願書を作成できる

洋服の商標権がほしい、と言われて洋服と願書に記載するだけの子供のおつかいの様な仕事であれば、素人さんでも対応できます。 誰も特許庁に提出する権利範囲が妥当かどうかを検討しない、という条件付きですが。

5.グレーゾーンは権利範囲に含めない

商標登録出願の際には、他人の先行登録商標との関係で、権利範囲を広げると、どうしてもグレーゾーンの範囲がでてきます。 ところが一回の手続きで同一料金しかもらえないのであれば、あえてグレーゾーンで勝負する理由は、手続代行業者側にはありません。 むしろグレーゾーンへの権利申請を避けて、権利範囲を狭く絞り込んで一発合格させた方が出願一回あたりの権利化までの時間を短縮することができます。 審査官との折衝が発生すると多くの出願件数を短期間でさばくことができなくなりますので、儲けが減ります。 このため、利益第一主義の出願代行業者の場合は、徹底的に審査官との折衝を避けます。その方が短時間で多くの出願に対応できるので儲かるからです。

6.権利範囲を狭くすることで、確実に審査合格に結びつける

同一料金しかもらえない場合、あえて権利範囲を広くすると、他人の先行権利に抵触する可能性が高まります。 がんばって広い権利範囲を確保しようとすればするほど、審査官から審査過程でストップする機会が増えます。 そうすると単位時間あたりの出願件数処理が落ちるので儲けが少なくなります。 権利範囲をできるだけ狭くし、権利が空いている部分だけをピンポイント申請することにより、審査不合格を回避できます。そうすれば、審査合格時の手数料を確実に回収することができます。

7.多くの出願件数、早い審査合格、高い登録率をお客さまにアピールできます

権利申請範囲を極限まで絞ることで、最初から権利の空いている部分だけを狙い撃ちする作戦ですから、審査官からストップがかからないので多くの出願を回すことがきます。このため多くの出願件数をアピールすることができます。 また一回の手続きで一人のお客さまが同一料金で取得できる範囲を取ってしまうと、手続き代行業者の売上が減ります。狭く申請して、申請していない権利範囲を残しておけば、その部分をいつか誰かが権利化を希望することが期待できます。つまり狭く権利申請すればするほど、分割して権利申請すればするほど、残る部分を権利化する手数料ももらえますので、手続き代行業者が儲かることになります。

(3)権利漏れがある商標権をつかまされていることに気づいていないのでは

(A)お客さまは費用だけに着目している点を見抜いている

商標登録の費用を相場の半分に設定し、商標権の権利範囲を半分以下に設定したとしても、たぶん多くのお客さまはその事実に気が付かないでしょう。 もしその事実に気がつくお客さまばかりなら、図1の様に、洋服の商標権を取得するのに、追加料金のかからない「ネクタイ・手袋・靴下」等の指定商品をわざわざ権利範囲から外すことは考えられないです。 最初に取得するなら追加費用がかからず、後から取得するなら倍額費用がかかるなら、なぜ最初に教えてくれなかったの、という話になります。 商標登録の費用を相場の半分であるとか、何分の1とかを仮にアピールしたとしても、得られる権利範囲が半分以下、何分の1以下に設定されているかは、お客さま自身は見抜けないだろう、と考えていることが予測できます。 後でお客さまに権利範囲が狭いのがばれると、大問題になると予測できるからです。 たとえていうなら、自動車が安いですよ、と破格の値段で自動車を販売します。けれどもその自動車にはエアコンも、オーディオも、自動運転装置も何もついていません。けれども最初に自動車を購入するときにお願いすればエアコンも、オーディオも、自動運転装置も無料で追加することができたと後から知った場合はどうでしょう。 後から無料で追加できるのであれば、まだ納得できますが、エアコンも、オーディオも、自動運転装置も購入時点でお願いすれば無料でついてくるのに、その案内がなかったとしたら。 そして後からエアコンも、オーディオも、自動運転装置も付けようとすると、何十万円もかかることが分かったとしたら。 私なら、仮にもしそんな仕打ちをされたら、自動車販売店に乗り込んで暴れます。 事前に、無料でこの範囲の装置も取得できるけど今回はつけなくてもよいか、と事前に説明を受けていれば別ですが。 もちろん、この様な営業をする自動車販売店は現実には存在しません。そんなことをすればお客さまから総攻撃を受けることが事前に予測できるからです。 にもかかわらず、図1の様な、洋服の商標権を取得する際に無料で追加できる「ネクタイ・手袋・靴下」等の指定商品が抜け落ちている商標権が増加しているのはなぜなのか。 私は、お客さまのことを見ずに、自分の財布だけを見ている者が、上記のスキームを率先して実行しているのではないか、と疑っています。

(4)まとめ

商標登録出願から権利になるまで1年前後を要する現在の商標登録の実情では、過去にあった商標登録の権利申請漏れは判明しますが、これからどのような権利が漏れ落ちている商標権が発生するのかはこちらからはわからないです。 商標登録の際に、願書の指定商品として洋服だけを記載して他のネクタイ等の指定商品を記載しないのは、商標登録を全く分かっていない素人さんが願書作成代行をしていることが強く疑われます。 多重下請けで次々に受注単価の安い無資格業者のところへ仕事が流れていき、誰も願書内容を把握していないのではないか。そうでないと、図1の様に権利の取得もれが一発で分かるような案件が短期間で急増することはないと思います。 自分の仕事に誇りはないのか。お客さまのことを見ずにどこを見ているのか。 このままの状況が続くと、権利漏れのある商標権を掴まされたお客さまが後で泣くことになります。そんな事態はなんとしても避けたいと私は強く思います。 ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘 03-6667-0247


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