他社の商標権の範囲に無断で侵入すると、その権利者からの差止や賠償請求のリスクがあります。
自社ブランドの知名度が上がってきた途中で、自分の使用している商標が他社に登録済みであることに気付くこと、それは意外とあるかもしれない話です。
仮に、自分の使用している商標が他社の商標権を侵害しているかもしれない事実に気がついた場合、商標権者がこれまで問題を挙げてこなかったからといって、安心してはいけません。
もしそのまま続けると、単に法的に訴えられる問題だけでなく、損害賠償額の支払いとかロイヤリティーの支払いなどの実費の支出も考慮しなくてはならないことも。
しかし、こうした発見は新しいステージへのステップとして捉えることもできます。
自分の成長とともに、子供の頃のお気に入りの服が小さくなって着ることができなくなる時がいつかくるように、新しいブランド名を考えるチャンスが来たのかもしれません。
商標権侵害に関して注意しなければならないのは、ただの賠償だけでなく、刑事責任の問題も潜んでいることです。
刑事罰が課せられる場合、法人への罰金は最高で3億円となることも。商標の問題でそのようなリスクを冒すのは、リスクが大きすぎると言えます。
多くの場合、商標権を侵害する側の立場の方は、自分の使っている商標が他人に取られたと認識します。つまり商標権を無断登録された被害者の立場との認識があり、なぜこちらが損害賠償金を支払うのか理解できない、これまで使っていた商標が使えないのは納得できない、という気持ちになりがちです。
けれども、商標権を侵害しているなら、こちらの立場は被害者の立場ではなく、侵害者の立場です。被害者の立場は、法律上は、商標権を持っている側になります。
気持ちの問題を優先すると、実弾としてのお金を無駄に消費するばかりです。
ここは気持ちを切り替え、どの方向に舵を切れば、最も損をしなくてすむかのビジネスの観点から全体を考える必要があります。
一時の気持ちを優先させてつっばると、泥沼の戦争に巻き込まれ、戦費だけが膨らんで消耗する結果になります。
商標権の侵害を発見したら、速やかに対応策を練ることが大切です。この心構えを持ち続けてください。
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247