索 引
商標登録の「区分」は、第1類から第45類まであります。第1類から第34類が商品、第35類から第45類がサービス(役務)の分類です。
ただし、区分番号を選ぶだけでは、必要な商標権は設計できません。商標権は、登録する名前やロゴなどの「商標」と、願書に記載する「指定商品・指定役務」との組み合わせで決まるからです。
結論を先にお伝えします。商標登録の区分は、自社が広告に使う名刺や包装ではなく、その商標を付けて顧客に提供する商品・サービスを基準に選びます。あわせて、同じ区分なら必ず権利がぶつかる、違う区分なら安全、という関係でもありません。区分と一緒に、指定商品・指定役務と「類似群コード」まで確認します。
2026年1月1日以降の出願には、国際分類第13-2026版に対応した区分と審査基準が適用されています。眼鏡が第9類から第10類へ移ったほか、消防車、レース生地、高周波ミシンなどにも変更があります。古い区分表をそのまま使わないよう注意してください。
この記事では、全45類の早見表に加えて、区分の選び方、類似群コードとの違い、2026年の主な変更点、特許庁費用、出願後に区分を追加できるかどうか、間違えやすい実例まで、商標専門の弁理士が順にお伝えします。
1. この記事の要点
- 商標登録の区分は第1類から第45類まである
- 守るべき対象は、区分そのものではなく「指定商品・指定役務」である
- 区分は商品・役務を分けるための分類であり、特許庁に納める料金の計算単位でもある
- 同じ区分でも非類似の場合があり、違う区分でも類似する場合がある
- 出願後に、当初の範囲を超えて商品・役務や区分を追加することはできない
- 2026年1月1日以降の出願では、国際分類第13-2026版で商品・役務の表示を確認する
2. 商標登録の「区分」とは何か
商標・指定商品役務・区分・類似群コードの違い
商標登録では、次の四つを分けて考えると迷いにくくなります。
| 用語 | 意味 | 実務上の役割 |
|---|---|---|
| 商標 | 商品名、サービス名、会社や店舗のロゴ、図形、立体的形状、音など | どの目印を登録するかを特定する |
| 指定商品・指定役務 | その商標を使用する商品・サービス | 商標権の中心となる対象を具体的に定める |
| 区分 | 商品・サービスを第1類から第45類に分けた分類 | 願書の記載を区切り、特許庁料金の計算単位になる |
| 類似群コード | 特許庁が商品・役務の類似関係を審査するために付けるコード | 先行商標調査や商品・役務の類否判断の手掛かりになる |
この中で勘違いが起きやすいのは、「区分だけで商標権の範囲が決まる」という思い込みです。
商標法第6条第3項は、商品・役務の区分は商品・役務の類似の範囲を定めるものではない、と明記しています。同じ区分の中に、相互に類似しない商品が含まれることがあります。反対に、区分が違っていても、同じ類似群コードが付けられ、審査では類似すると推定される商品・役務もあります。
したがって、「第25類を取れば衣料分野を全部押さえられる」「相手は別の区分だから問題ない」と区分番号だけで判断するのは危険です。
商品は第1類から第34類、サービスは第35類から第45類
大きく分けると、次のようになります。
- 第1類〜第34類:商品
- 第35類〜第45類:サービス(役務)
ただし、「形があるものは商品、形がなければサービス」とだけ覚えると、デジタル分野で迷います。たとえば、ダウンロード可能なコンピュータプログラムは第9類の商品として扱われる一方、ダウンロードさせずオンラインで利用させるSaaSは第42類のサービスとして扱われます。
商品名だけで決めず、顧客にどのような形で提供するのかまで確認してください。
区分数が増えると特許庁料金も増える
商標登録出願の印紙代、設定登録料、更新登録料は、いずれも区分数をもとに計算されます。
一方、同じ区分の中で指定商品・指定役務を一つ増やしても、それだけで印紙代が一件分増えるわけではありません。ただし、事業と関係のない商品・役務を大量に指定すると、審査で使用または使用意思の確認を求められる場合があり、権利の管理も複雑になります。
費用を抑えるコツは、単純に区分数を減らすことではなく、現在の主力事業と具体的な事業計画に対応する範囲を、漏れなく過不足なく指定することです。
3. 商標登録の区分一覧【全45類・2026年版】
以下は、各区分の主な分野と代表例をまとめた早見表です。区分名から、それぞれの詳しい解説ページに移動できます。
この一覧だけを願書に転記しないでください。実際の出願では、各区分の中から、事業に対応する指定商品・指定役務を具体的に記載します。同じ商品名に見えても、用途、材質、提供形態によって区分が変わることがあります。
商品の区分:第1類〜第34類
| 区分 | 主な分野・代表例 |
|---|---|
| 第1類 | 工業用・科学用化学品、工業用接着剤、肥料、未加工プラスチック、製造用精油など |
| 第2類 | 染料、顔料、塗料、印刷インキ、防錆剤など |
| 第3類 | 化粧品、せっけん類、歯磨き、洗浄剤、香料(芳香用のものに限る。)など |
| 第4類 | 工業用油、工業用油脂、燃料、ろう、ろうそく、電気エネルギーなど |
| 第5類 | 薬剤、医療用衛生剤、ばんそうこう、サプリメント、おむつ、乳児用食品、アロマテラピー用オイルなど |
| 第6類 | 卑金属、金属製建築材料、金属製金具、ワイヤロープ、金属製包装容器など |
| 第7類 | 加工機械、工作機械、原動機、電気洗濯機、食器洗浄機、3Dプリンター、高周波ミシンなど |
| 第8類 | 手動工具、刃物、はさみ、刀剣、スプーン、フォーク、かみそりなど |
| 第9類 | 測定・通信・情報処理の機器、スマートフォン、コンピュータプログラム、ダウンロード可能な音楽・電子出版物など |
| 第10類 | 医療用・歯科用の機械器具、衛生マスク、補装具、眼鏡、コンタクトレンズ、サングラスなど |
| 第11類 | 照明・暖房・冷房・調理・給水・衛生用の装置、家庭用電熱用品、浄水器など |
| 第12類 | 船舶、航空機、鉄道車両、自動車、二輪自動車、自転車、車椅子、消防車など |
| 第13類 | 銃砲、銃砲弾、火薬、爆薬、火工品、戦車など |
| 第14類 | 貴金属、宝飾品、身飾品、キーホルダー、時計など |
| 第15類 | 楽器、調律機、指揮棒、音さなど |
| 第16類 | 紙、文房具、印刷物、写真、事務用接着剤など |
| 第17類 | 電気絶縁材料、半加工プラスチック、ゴム、非金属製フレキシブル管など |
| 第18類 | 革、かばん、袋物、傘、つえ、動物用の首輪・被服など |
| 第19類 | 非金属製の建築材料、セメント、木材、石材、建築用ガラスなど |
| 第20類 | 家具、鏡、クッション、まくら、非金属製の容器、食品見本模型など |
| 第21類 | 家庭用・台所用の器具、食器、清掃用具、化粧用具、ガラス製容器、お守り、おみくじなど |
| 第22類 | ロープ、網、テント、帆布、原料繊維、布製包装容器、ガーデンパラソルなど |
| 第23類 | 織物用の糸など |
| 第24類 | 織物、家庭用リネン、布団、まくらカバー、織物製壁掛け、レース生地など |
| 第25類 | 被服、履物、帽子、ベルト、仮装用衣服、運動用特殊衣服・靴など |
| 第26類 | 縁飾り用レース、刺しゅう布、リボン、ボタン、針、造花、頭飾品など。完成したレース生地は第24類を確認 |
| 第27類 | じゅうたん、敷物、畳、リノリウム、非織物製壁掛け、人工芝、体操用マットなど |
| 第28類 | ゲーム、おもちゃ、人形、遊戯用器具、運動用具、釣具、クリスマスツリー用装飾品など |
| 第29類 | 食肉、魚介類、乳製品、食用油、冷凍・加工野菜、加工果実、加工水産物など |
| 第30類 | コーヒー、茶、米、パン、菓子、調味料、弁当、すし、ぎょうざなど |
| 第31類 | 未加工の農林水産物、生鮮野菜・果実、生きている動物・魚介類、植物、種子、飼料など |
| 第32類 | ビール、清涼飲料、果実飲料、飲料用野菜ジュース、シロップなど |
| 第33類 | ビールを除くアルコール飲料、清酒、焼酎、洋酒、果実酒、中国酒など |
| 第34類 | たばこ、電子たばこ、喫煙用具、マッチなど |
サービス(役務)の区分:第35類〜第45類
| 区分 | 主な分野・代表例 |
|---|---|
| 第35類 | 広告、事業の管理・運営、経営相談、市場調査、事務処理、小売・卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供など |
| 第36類 | 金融、保険、不動産、資金の貸付け、有価証券の売買、税務相談など |
| 第37類 | 建設工事、設置工事、修理、保守、清掃、燃料供給用装置の貸与など |
| 第38類 | 電気通信、インターネット接続、放送、通信機器の貸与など |
| 第39類 | 輸送、配送、こん包、保管、旅行の手配、乗物の貸与、廃棄物の収集など |
| 第40類 | 材料処理、受託製造、金属・木材・食品の加工、印刷、廃棄物の再生・処理、記録媒体の複製など |
| 第41類 | 教育、研修、セミナー、娯楽、スポーツ・文化活動、電子出版物の提供、書籍の制作、写真の撮影など |
| 第42類 | 科学・技術に関するサービス、研究、設計、デザイン、コンピュータプログラムの設計・開発、SaaS、PaaSなど |
| 第43類 | 飲食物の提供、宿泊施設の提供、会議室の貸与、動物の宿泊施設の提供など |
| 第44類 | 医療、歯科医療、獣医、美容、理容、あん摩・マッサージ、農業・園芸のサービスなど |
| 第45類 | 法律業務、警備、婚礼、葬儀、占い、ファッション情報、愛玩動物の世話、個人的・社会的サービスなど |
4. 商標登録の区分を選ぶ5つの手順
手順1:顧客に提供する商品・サービスを書き出す
最初に、商標を表示する媒体ではなく、顧客が実際に購入する商品、または提供を受けるサービスを書き出します。
たとえば、自社の名称を名刺、パンフレット、ウェブサイトに表示していても、名刺やパンフレットそのものを商品として販売していないのであれば、それらを指定商品にする理由はありません。
確認する質問は次の三つです。
- 顧客は何に対して代金を支払うのか
- その商標は、どの商品・サービスの出所を示す目印として使われるのか
- 現在の主力事業と、具体的に開始予定の事業は何か
対価が発生するものだけに限られるわけではありませんが、「顧客に何を提供しているか」から考えると、区分選択の出発点を外しません。
手順2:同じ名称が担う役割を分ける
一つの名称が、複数の役割を持つ場合があります。たとえばアパレル事業では、次のように分けて検討します。
- 洋服の商品ブランド:第25類
- かばんの商品ブランド:第18類
- アクセサリーの商品ブランド:第14類
- 店舗名・ECショップ名としての小売サービス:第35類を検討
商品ブランドとしての使用と、店舗や小売サービスの名称としての使用は同じではありません。実際の表示方法や事業形態に応じて、商品区分と役務区分の両方を検討する場合があります。
手順3:J-PlatPatの商品・役務名検索で候補を確認する
商品・役務名の候補は、特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」の商品・役務名検索で確認できます。
検索するときは、社内用語や業界の略称だけでなく、言い換えも試してください。たとえば「アプリ」だけでなく、「コンピュータプログラム」「ダウンロード可能なアプリケーションソフトウェア」など、提供形態に応じた表現を検討します。
検索結果では、区分、商品・役務名、類似群コードに加えて、現在の基準で採用可能な表示かどうかを確認します。
J-PlatPatに表示された語を機械的に並べるだけでは、事業に合った権利になるとは限りません。検索結果は候補を見つけるために使い、最終的には事業内容との対応で決めます。具体的な記載の考え方は、指定商品・指定役務の選び方でも取り上げています。
手順4:類似群コードと先行商標を確認する
区分と商品・役務の候補が決まったら、同一または類似の商標が、同一・類似の商品役務について先に出願・登録されていないかを調査します。
特許庁の審査では、同じ類似群コードが付けられた商品・役務は、区分が違っていても原則として類似すると推定されます。反対に、同じ区分の中でも、類似群コードが異なれば非類似と扱われる場合があります。
ただし、類似群コードは審査を効率化するための道具です。コードだけで個別案件の結論が自動的に決まるわけではなく、備考類似や取引の実情も含めて検討します。
手順5:主力事業を優先し、将来事業は具体性で線を引く
「あらゆる分野で他人に使わせたくない」という発想から始めると、区分数が膨らみ、費用も管理の負担も増えます。
優先順位は次の順で考えます。
- その区分が欠けると、主力事業を守れないもの
- すでに提供している関連商品・サービス
- 具体的な開始時期や計画がある商品・サービス
- 可能性があるだけで、計画が固まっていないもの
将来使用する予定の商品・役務も指定できますが、無限定に広げてよいわけではありません。出願時点で自己の業務に使用する意思があることが前提で、事業計画と整合する範囲にとどめます。
5. 業種別に見る区分選択の考え方
次の表は、ご相談の多い事業について、検討の起点になる区分をまとめたものです。実際の指定商品・指定役務は、提供内容に応じて個別に調整します。
| 事業 | 主に検討する区分 | 注意点 |
|---|---|---|
| アパレルブランド | 第25類。かばんは第18類、アクセサリーは第14類 | 店舗・ECショップの小売サービス名として使う場合は第35類も検討する |
| 化粧品販売と美容サロン | 化粧品は第3類、美容サービスは第44類 | 商品ブランドと施術サービス名を分けて考える |
| 飲食店 | 店内・店舗での飲食物の提供は第43類 | 持ち帰り用に商品化した食品・飲料は、第29類、第30類、第32類などを別途検討する |
| セミナーとコンサルティング | セミナー・教育は第41類。経営相談は第35類など | 「情報を伝える」という理由だけで全て第41類になるわけではない |
| ダウンロード型アプリ | 第9類 | アプリを通じて提供する本体サービスの区分も別に確認する |
| SaaS・クラウドサービス | 第42類 | ダウンロード可能なソフトウェアを併用する場合は第9類も検討する |
| 不動産業 | 第36類 | 不動産情報の提供も、通常は第41類の「知識の教授」ではなく第36類で検討する |
| 建設・修理 | 第37類 | 設計は第42類、建築材料は商品に応じて第6類・第19類など、役割を分ける |
| 旅行関連 | 旅行の手配は第39類、宿泊の提供は第43類 | 旅行情報、輸送、予約、宿泊のどのサービスを行うかを具体化する |
6. 間違えやすい商標区分の8つの落とし穴
落とし穴1:名刺・パンフレット・ウェブサイトを選んでしまう
自社の商標を名刺やウェブサイトに表示しているという理由だけで、印刷物やウェブサイト制作の区分を選ぶのは、通常は適切ではありません。
名刺やウェブサイトは、商標を表示する媒体です。守るべき対象は、その媒体を通じて顧客に案内している本来の商品・サービスです。
- 弁理士事務所がウェブサイトを使う:主に検討するのは法律・弁理士業務の役務
- ウェブ制作会社が顧客のサイトを制作する:第42類のウェブサイト制作などを検討
- 印刷会社が顧客の名刺を受注して印刷する:第40類の「印刷」などを検討
- 既製のカードや印刷物を商品として販売する:第16類などを検討
同じ「ウェブサイトを使う」という事実でも、事業内容によって指定役務は異なります。
落とし穴2:包装紙・ステッカー・容器を選んでしまう
商品に商標を表示するための包装紙、ラベル、ステッカー、容器を指定しても、中身の商品まで守られるわけではありません。
オレンジジュースを販売するのであれば、中心となるのは「果実飲料」が属する第32類です。ペットボトルや缶の区分だけを取得しても、オレンジジュースの商品ブランドを守ったことにはなりません。
同様に、レトルトパック入りカレーでは、包装材ではなく、中身の「調理済みカレー」に対応する商品から検討します。包装容器そのものを商品として販売する事業であれば、そのときはじめて容器の区分が中心になります。
落とし穴3:自社商品の宣伝のために第35類「広告業」を選んでしまう
自社の商品をインターネット広告で宣伝するだけで、第35類の「広告業」を指定する理由にはなりません。
広告業は、原則として他人のために広告を行うサービスです。自社開発の扇風機を広告して販売するのであれば、まず扇風機の商品区分を選びます。広告代理店として顧客の広告を企画・運用するのであれば、第35類を検討します。
落とし穴4:「ECサイトだから第35類」と決めてしまう
ECサイトを運営しているという事実だけでは、結論は決まりません。
- 商品ブランドを守る:商品ごとの区分が中心
- 店舗名・ECショップ名を小売サービスの目印として守る:第35類を検討
- 他社の出店者と購入者を結ぶオンラインモールを提供する:具体的なサービスに応じて第35類、第42類などを検討
商品名、店舗名、プラットフォーム名のどれを登録したいのかを分けて考えます。
落とし穴5:「知識の教授」であらゆる情報提供を守れると考えてしまう
第41類の「知識の教授」は、全ての情報提供サービスを包括する万能な表示ではありません。
たとえば、次のような情報提供は、対象分野に応じた区分を検討します。
- 不動産情報:第36類
- 旅行・運行情報:第39類
- 建築・技術情報:第37類または第42類など
- 飲食店・宿泊に関する情報:第43類
- ファッション情報:第45類
「情報を伝える」という行為だけでなく、何について、どのようなサービスとして情報を提供するかで区分が決まります。
落とし穴6:一つの区分を丸ごと押さえれば漏れがないと考えてしまう
一つの区分の中には、相互に類似しない多数の商品・役務があります。区分表の見出しや代表例は、区分内の全商品・役務を一つの権利として包括するものではありません。
第35類を指定しただけで、あらゆる小売サービスが自動的に守られるわけでもありません。どの商品を取り扱う小売・卸売サービスかを、必要に応じて具体的に記載します。
落とし穴7:「同じ区分なら衝突、違う区分なら安全」と考えてしまう
区分は類似範囲を定めるものではありません。
同じ第25類でも、指定商品や類似群コードが違えば、審査で非類似と扱われる場合があります。反対に、第32類の商品と第33類の商品のように、区分が違っても同じ類似群コードが付けられ、類似と推定される例があります。
先行商標を調べる際は、区分番号だけで検索範囲を区切らず、類似群コードと指定商品・指定役務を確認します。区分と権利範囲の関係は、商標区分とその権利範囲のバランスでも取り上げています。
落とし穴8:出願後に不足分を簡単に追加できると考えてしまう
出願後でも、指定商品・指定役務の削除や減縮、明確化といった補正が認められる場合はあります。
しかし、当初の願書に記載した範囲を超えて、別の商品・役務や区分を追加する補正は認められません。不足分を守るには、原則として新しい商標登録出願をやり直すことになります。その場合、出願日は新しい出願の日となり、その間に第三者の先願が現れる危険もあります。
出願前に主力事業と今後の具体的な展開を確認し、必要な指定商品・指定役務を最初の願書で漏れなく設計する理由が、ここにあります。
7. 2026年の区分変更で特に注意したい商品・役務
2026年1月1日から、国際分類第13-2026版に対応した審査基準が使われています。主な変更例は次のとおりです。
| 商品・役務 | 2026年版での取扱い | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 眼鏡 | 第9類から第10類へ | 眼鏡、コンタクトレンズ、サングラスを扱う事業は第10類を確認する |
| 消防車 | 第9類から第12類へ | 消防用の機器という名称だけで第9類に決めず、車両として第12類を確認する |
| 高周波ミシン | 第9類から第7類へ | 機械として第7類に移った |
| 刺しゅうレース生地・編みレース生地 | 第26類から第24類へ | 完成した「生地」と、レース・刺しゅうの用品を区別する |
| ビーチパラソル・ガーデンパラソル | 第18類から第22類へ | 一般的な傘が属する第18類と混同しない |
| 燃料供給用装置の貸与 | 第37類 | 従来の第39類とした古い情報を参照しない |
| 録音又は録画済み記録媒体の複製 | 第40類 | 第41類ではなく、材料処理・複製のサービスとして第40類を確認する |
| 精油・香料の関連 | 用途に応じて第1類・第3類・第5類など | 製造用精油、芳香用の香料、アロマテラピー用オイルを用途別に分ける |
年次改訂で変わるのは、新しい出願で使う商品・役務の分類と表示です。すでに登録されている商標の指定商品・区分が、改訂によって自動的に新しい区分へ書き換わるわけではありません。更新登録の手続きを利用して、新しい商品・区分を追加することもできません。
既存の登録が現在の事業を十分にカバーしているかどうかは、登録時の指定商品・指定役務と現在の取引内容を突き合わせて判断します。不足がある場合には、新しい出願を検討してください。
8. 商標登録の区分数と特許庁費用
2026年8月現在の主な特許庁料金は、次のとおりです。
| 手続 | 特許庁料金 |
|---|---|
| 商標登録出願 | 3,400円+8,600円×区分数 |
| 設定登録料(10年分) | 32,900円×区分数 |
| 設定登録料(5年分の分割納付) | 17,200円×区分数 |
| 更新登録料(10年分) | 43,600円×区分数 |
| 更新登録料(5年分の分割納付) | 22,800円×区分数 |
出願料と10年分の設定登録料を合計すると、特許庁に納める金額は次のようになります。弁理士費用、調査費用、拒絶理由対応の費用は含みません。
| 区分数 | 出願料 | 10年分の設定登録料 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 1区分 | 12,000円 | 32,900円 | 44,900円 |
| 2区分 | 20,600円 | 65,800円 | 86,400円 |
| 3区分 | 29,200円 | 98,700円 | 127,900円 |
区分を一つ増やすと、出願時だけでなく、登録時と将来の更新時にも費用が増えます。その一方で、必要な区分を削ると、主力事業が権利範囲から漏れるおそれがあります。
費用全体の考え方と当事務所の料金は、商標登録の費用のページでご確認いただけます。
9. 商標登録の区分に関するよくある質問
区分が違えば、同じ商標を登録できますか?
必ず登録できるとは限りません。区分が違っても、指定商品・指定役務が類似する場合があります。他人の周知・著名な商標との関係など、商品・役務の類似だけでは決まらない拒絶理由もあります。
同じ区分に先行商標があると、登録できませんか?
区分が同じという理由だけで、直ちに登録できなくなるわけではありません。商標そのものの類否に加えて、指定商品・指定役務の類否を検討します。同じ区分でも非類似の商品・役務であれば、登録できる場合があります。
出願後に区分や商品・サービスを追加できますか?
当初の記載範囲を超える追加はできません。削除、減縮、明確化が可能な場合はありますが、不足する商品・役務を加えるには、原則として別の出願をやり直すことになります。
将来始める予定の事業も指定できますか?
自己の業務に使用する具体的な意思がある商品・役務は指定できます。ただし、事業計画と無関係に広い範囲を指定すると、審査で使用または使用意思の確認を求められる場合があります。
自社のECサイトを運営している場合、第35類は必要ですか?
一律には決まりません。商品ブランドを守るだけなら、商品そのものの区分が中心です。ECショップ名を小売サービスの目印として使用する場合には、第35類を検討します。
アプリの商標は第9類と第42類のどちらですか?
ダウンロード可能なソフトウェアは主に第9類、ダウンロードさせずオンラインで利用させるSaaSなどは主に第42類です。あわせて、アプリを通じて行う予約、金融、教育、輸送などの本体サービスについて、別の区分を検討する場合があります。
飲食店が持ち帰り商品を販売する場合、第43類だけで足りますか?
店内などで飲食物を提供するサービスは第43類です。一方、包装された弁当、菓子、飲料などを商品として販売する場合は、第29類、第30類、第32類など、商品に対応する区分も検討します。
区分と類似群コードはどちらを確認すべきですか?
役割が違うため、両方を確認します。区分は商品・役務の分類と料金計算の単位です。類似群コードは、審査上の商品・役務の類似関係を示す手掛かりです。実際の権利設計では、区分、指定商品・指定役務、類似群コードを一体として確認します。
最新の区分はどこで調べられますか?
特許庁の「類似商品・役務審査基準」と「商品及び役務の区分解説」、J-PlatPatの商品・役務名検索で確認できます。古い記事や過去の願書だけを参照せず、出願日に適用される最新版を使ってください。
10. まとめ:区分番号ではなく、事業から権利範囲を設計する
商標登録の区分選択で確認したい点は、次のとおりです。
- 商標を表示する名刺、包装、ウェブサイトではなく、顧客に提供する商品・サービスから考える
- 商品ブランド、店舗名、サービス名、アプリ名など、商標が担う役割を分ける
- 区分番号だけでなく、具体的な指定商品・指定役務を確認する
- 類似群コードを使って、区分をまたぐ類似関係も確認する
- 現在の主力事業と具体的な将来計画を優先する
- 出願後に範囲を追加できないことを前提に、出願前に漏れを確認する
- 2026年1月1日以降の出願では、国際分類第13-2026版を使う
区分を広く取るだけでは、強い商標権にはなりません。必要な事業を外さず、不要な範囲を増やさず、先行商標との関係まで見通して、指定商品・指定役務を設計することがポイントです。
ファーイースト国際特許事務所では、商標を実際に使用する商品・サービスと今後の事業計画をうかがったうえで、必要な区分と指定商品・指定役務をご提案しています。区分の選び方に迷う場合や、複数の事業にまたがる場合は、無料商標調査からお気軽にご相談ください。
なお、本記事は商標制度の一般的な解説を目的とするものであり、個別案件についての法律意見ではありません。
参考:J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)、e-Gov法令検索「商標法」(第6条ほか)、特許庁「類似商品・役務審査基準〔国際分類第13-2026版対応〕」、特許庁「産業財産権関係料金一覧」
ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘
03-6667-0247
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ファーイースト国際特許事務所|弁理士 平野泰弘
